挑発
リナたちが出陣してから1時間。
岐阜県と面した支配領域の前に続々と人類が集結する。
「攻めて来ないですねぇ」
「人類は、確実にこちらを落としたい……もしくは、プレッシャーだろうな」
「プレッシャーですかぁ?」
「俺にプレッシャーを与えて、侵略に向かわせたリナたちを撤退させたい……って、意図も考えられる」
「なるほどぉ。人類からすれば、急遽アスター皇国攻めになったから、乗り気じゃない……とかですかねぇ?」
「好機に準備不足で挑むのか、万全を期して普通のタイミングで挑むべきなのか……意見が割れてるのかもな」
「それで、どうするのですかぁ?」
「んー、そうだな……」
このまま支配領域の前でにらめっこが続くのであれば、問題はないのだが……そうなる可能性は非常に低いだろう。
侵略されるなら、万全の準備が整う前に侵略されたい。
例えば、1時間後……人類の戦力は更に増強されるが、アスター皇国の防衛は変わらない。
「少し刺激を与えるか」
――サブロウ! 1万の配下を貸与する! 出撃の準備を!
「承知!」
人類が陣取っているのは、第三〇一〜三一〇支配領域。
待機している人類の数が一番多いのが、第三〇五支配領域。対して、数が一番少ないのは、第三一〇支配領域。
――サブロウ、第三一〇支配領域から出陣だ! 深追いは禁ずる! 呆けた人類に軽く挨拶をかましてこい。
「承知! アスター皇国最強の部隊――チームJの恐怖を叩き込んで参りますぞ!」
――人類はこちらから仕掛けるとは思っていないだろう。くだらない口上は禁止とする。可及的速やかにかましてこい!
「――な!? こ、口上を禁ずると……」
――ふざけているのか? わかった。チームJは解散。代わりにイザヨイに――
「チームJ出陣しますぞ! 今宵の作戦は――疾風迅雷! 可及的速やかに敵を殲滅しますぞ!」
サブロウ率いるチームJ《道化》が、出陣するのであった。
◆
(サブロウ視点)
シオン様の声には、余裕がなかった。此度の作戦は相当難易度が高いようですな。
「華々しく戦場を駆け巡る予定でしたが、致し方ないですな……第十災厄! 遠距離攻撃の準備を!」
「闇の波動……準備入ります」
元エルフ種の魔王である第十災厄が遠距離攻撃を得意とする選りすぐりの配下と共に魔力を練り上げる。
(イッツ、ショータイム!)
――な!?
私の背後に控えた第一災厄の念話の声とともに、第十災厄たちが無数の魔法を人類へと放出。
「掛け声は我輩の役目ではないか!」
(シオンサマ ノ ゴヨウボウ ヲ ユウセンシマシタ)
「な!? シオン様が我輩を飛ばして……第一災厄に命令を!?」
(イエ ドクダン デス テヘペロ)
「くぅぅぅう!」
「アスター皇国に害するモノに死の洗礼を――第零災厄、推して参る!」
「うぉぉぉおおお! 第三災厄も行くぞぉぉおおお!」
「シオン様に認められる好機……逃せませぬな!」
「アハハー、ボクの玩具は誰かなー?」
「今宵、我が目の封印を解き放つ!」
「人類諸君、シャル・ウィ・ダンス?」
第一災厄に気を取られている隙に、配下たちが次々と人類へ攻撃を仕掛けます。
「うぉぉぉおお! チームJ総帥――終焉災厄が――」
(俺の命令を忘れたのか?)
こ、この声のトーンは!?
「――《ダークナイトテンペスト》!」
我が手より放たれた闇の暴風が慌てふためく人類を包み込む。
敵は突然現れた
◇
(シオン視点)
んー、先制攻撃は好調だな。
俺はスマートフォンに映し出されたサブロウたちの動きに満足を覚える。
人の領域の鼻の先まで来ておいて、襲われないとでも思ったのだろうか?
完全に不意をつくことに成功した。
「さて、人類はどう動く? サブロウに襲われた人類の救援に向かう? それとも、支配領域への侵略を始める? それとも……変わらず準備を優先されるか?」
独り言のように呟くと、
「んー、私の読みではぁ……」
案の定、自称軍師のカノンが食らいついた。
「警戒を強め……そのままステイですねぇ」
「ほぉ、その理由は?」
「今回の人類は明確に組織として動いていますぅ」
「頭は政府だろうな」
「ですですぅ。政府関連の人類の弱点は、上の命令がないと下の者は動けないことですぅ」
「現場に指揮権を持っている大将がいる可能性もあるだろ」
「仮にそうなら、すでに動いてますぅ……今の動きは上からの指示待ちですぅ」
「悪くない読みだ」
面白くないが、今回は俺の読みもカノンと同じだ。
急遽迫られたアスター皇国への侵攻に、対応が追い付いていないのだろう。
とは言え、政府関連が頭の場合……フレキシブルな対応はできないが、型にハマれば厄介な相手となる。
――サブロウ! 手を止めず、敵を蹂躪し続けろ!
――イザヨイ! 1万の配下と共に第三一〇支配領域より出陣! 敵を蹂躪せよ!
俺はさらなる追い打ち部隊を派遣するのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます