Episode14

平和な日常

 あの日――全世界を巻き込んだ『大変革』から4年の月日が流れた。


 日本は、各地域の支配者の選定が終わり、小康状態を迎えていた。


 政府の発表によれば、日本で生き残っている魔王の数は観測、確認できた限りで186人。『大変革』時はおよそ16,000人の魔王が存在したと言われていたので、かなり激減したといえるだろう。


 また、一部の魔王は建国を宣言し力を誇示した。


 有象無象の魔王たちの建国宣言は無視されたが、無視できない勢力も存在していた。


 日本で最も広大な支配領域を展開している、北海道道南を支配している――魔王マサキ。


 最も堅牢な支配領域と評される、宮城県と岩手県を支配している――魔王スミレ。


 軍隊のような統率力と連携力で神奈川県を支配し戦争王と評された――魔王ユイ。


 支配領域内で次々と自動車やバイクを量産し機動力に優れた戦争で愛知県と静岡県を支配した――魔王ハヤテ。


 日本で最初に人類との交易を開始した、兵庫県を支配している――魔王ヨイチ。


 生存率が一番低く、最も危険と評される支配領域を展開し、大阪府を支配している――魔王ルナ。


 センセーショナルな宣言を掲げ、今の情勢を創ったと評される、石川県と富山県を支配している――魔王シオン。


 人類のみならず魔王の中でも最強の魔法の遣い手として魔導王と評される、奈良県と和歌山県を支配している――魔王ヒバリ。


 圧倒的な物量で広島県、島根県、山口県を瞬く間に支配した――魔王ギンガ。


 香川県、徳島県、愛媛県を支配した四国の覇者――魔王アラタ。


 福岡県を拠点とし常に戦争を繰り広げ続ける九州の暴れ者――魔王メイ。


 これら11人の魔王が宣言した建国は、非公認であるが多くの人類からも認知されていた。


 上記11人の魔王に、名前も種族も不明なunknownにして、長野県の支配者である魔王ナナシ(仮称)と、渋谷を拠点に都内13区を支配し最強と名高い魔王ケイスケを加えた13人の魔王が、政府認定のS級ハザード――通称『十三凶星ゾディアック』と呼ばれていた。


 人類も各自治体及び有志の団体さんと協力しているが、対魔王カオスとの戦争は劣勢であると言わざる得ない状況であった。


 次号では人類の希望――勇者特集を掲載いたします』


「シオンさーん、何を読んでいるんですかぁ?」

「タカハルが土産で持ってきてくれた週刊誌」


 タカハルからもらった週刊誌を読んでいると、自称軍師の妖精カノンが声をかけてきた。


「そんなのネットを見ればいいじゃないですかぁ」

「たまには紙媒体で読むのも悪くないぞ」

「検索もできないし不便ですよぉ! ページをめくるのも大変ですしぃ。っと、どれどれ……『十三凶星』特集ですかぁ」

「まぁ、ここ半年は変化ないけどな」


 週刊誌の冒頭にもあったように、現在の日本は小康状況だった。


「最近は大きな戦争もないですからねぇ」

「小競り合いは多い……と言うか、小競り合いが途絶えた地域は他の地域に呑み込まれるからな」


 争いがなくなれば、魔王も人類も成長――レベルが停滞してしまう。


 すべての地域で争いがなくなるのであれば問題はないのだが……一部の地域のみが平和になったとしても、いずれ争いが活発な地域からレベルアップした者が侵略してくる。


 だから、絶えず争い……と言うか、経験値稼ぎをすることは不可欠だった。


「シオンさんは大きな戦争を起こさないのですかぁ?」

「んー、どうだろう? 新潟県か岐阜県を侵略してもいいが……厳しいな」


 俺はカノンの提案に少し思案するが、侵略で得られるメリットよりも、侵略で失うデメリットのほうが大きかった。


「最近は人類も強くなりましたからねぇ」

「それもあるが、この世界のルールだと攻め手がどうしても不利だからな」


 小康状態――勢力図に変化がないのは、この世界のルールが原因だった。


 この世界のルールは守り手側が有利過ぎるのだ。


 支配領域を侵略するときには、人数制限が課せられる。対して、守り手側には数の制限はかからない。


 統治をするにしても、外に出れるのは魔王と眷属。その直属の部下だけと制限がかけられるが、守り手側には数の制限がかからない。


 魔王側の仕組みも解明された今では、人類は積極的に眷属から狙ってくる。


 また、守り手が超有利なことから、本腰をいれて侵略を開始すると手薄になった支配領域に雪崩のように人類や他の魔王が押し寄せてくる。


 事実、侵略した結果1つの支配領域を獲得し、複数の支配領域を失ったケースは非常に多く、一度失った支配領域を取り返すのは至難の業だった。


「近隣の魔王か人類が大規模な侵略をしてくれたら、その隙に攻めるんですけどねぇ」

「みんな同じことを考えているだろうな」


 と、こんな感じで小競り合いは絶えないけど、大規模な戦争は起こらない――そんな小康状態が一年以上続いていたのであった。



  ◆



 このままアスター皇国の王として、平和に暮らすのも悪くないな。と、変わらぬ日常に満足していたある日。


 ――!


 突然、スマートフォンの画面から眩い光が溢れ出し――俺の意識はブラックアウトしたのであった。



―――――――――――――――――――――――

(あとがき)


お久しぶりです!


という訳で、久し振りのダンバトとなります。


完全に趣味の延長で始める連載となるので、更新頻度は月に2〜3回ペースを目標に不定期投稿になると思います。ご了承お願い致しますm(_ _)m


不定期更新だけど、ブックマークすれば……更新された時に通知が来るらしいよ……(小声w





 


 

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