新たな同盟
同盟の依頼か……。
どうすべきか?
俺は日本地図を広げて状況を確認する。
○○
○○
○○○ ★★★
○○○○○○●●★★★ 新潟県
○○○○○●●●★★★
○○○○●●●●●●●
☆☆☆ 岐阜県 長野県
福井県
○=アスター皇国
☆=加賀国(魔王カオル)
●=富山県人類
★=魔王モトキ
魔王モトキと同盟を結んでも、直近で影響力はゼロだ。影響力を発揮するとしたら、富山県の人類に対して東西から同時に侵略を仕掛た場合くらいだ。
長期的に見たらどうなる?
加賀国が福井県からの防波堤ならば、魔王モトキの支配領域は新潟県からの防波堤に成り得る。
そうなると、富山県を統一後は岐阜県と長野県に戦力を集中することが可能となる。
岐阜県には『十三凶星』の一人である魔王ハヤテから追い出された愛知県の人類が集結し、一大勢力を築き上げている。
長野県には『十三凶星』の一人である唯一名称不明の魔王――通称"ナナシ"が支配領域を広げている。
どちらの戦力も中途半端な戦略で相対することは出来ない。
そう考えると、今回の同盟は悪くない話とも言える。
「カノンはどう思う?」
「今回の同盟ですかぁ?」
俺は頼れる軍師……には至らないが、最適な話し相手であるカノンに声を掛けた。
「それ以外に何がある?」
「んー……わたし的には反対ですかねぇ」
「ほぉ、理由は?」
「理由ですかぁ……えっとぉ……稀代の軍師カノンとしては非常に心苦しいと言うかぁ……意に反すると言うかかぁ……」
カノンが珍しく口ごもる。
「何だ? 早く言え」
「えっとぉ……そのぉ……怒らないですかぁ?」
「答えによるな」
「えー! そこは流れ的に怒らないと――」
「早く言え!」
俺は尚も言い淀むカノンを一喝する。
「か、勘ですぅ……」
「は?」
予想外のカノンの答えに俺はア然とする。
「えっとぉ……魔王モトキは同盟相手として頼りないと言うかぁ……信用出来ないと言うかぁ……胡散臭いと言うかぁ……何か嫌な感じがするんですぅ」
「えっと、つまり……カノンは何となく魔王モトキが嫌だから同盟に反対と?」
「そう言われると、わたしがワガママっぽくないですかぁ?」
「理論的な理由もなく、ただ嫌いだから同盟には反対と?」
「うぅ……シオンさん、怒ってます? 怒らないって約束した――」
「してない。とりあえず、カノンがカノンなことは理解した」
「カノンなことって……まるで私の名前がバカの代名詞みたいじゃないですかぁ!」
まるで……? この虫は何を言っているのだろうか? 当然、バカの代名詞だろ。
俺はカノンとの話を切り上げ、やるべきことをすることにした。
今回の同盟を仮に結ぶならやるべきことが一つある。現在の同盟相手――魔王カオルへの確認だ。
魔王カオルとの同盟はアスター皇国の防衛において大きな意味を持っており、当面は友好的な同盟関係を維持したい。
その為、一応の確認を取ることにした。
俺はスマートフォンを操作して魔王カオルへと電話する。
『あれ? 今って富山攻めに忙しいんじゃないの?』
カオルは名前も名乗らずに雑談をぶっ込んで来る。
「久しぶりだな」
『あ、ごめん。久しぶり! 調子はどう?』
「富山攻めの調子はまずまずだが、別件で相談がある。今少しいいか?」
『いいよ。なになに?』
「富山の情勢は把握しているか?」
『んー、正直あんまりしてない』
「なら簡単に説明する。富山県は現在、西部は俺が、中央は人類が、東部はモトキとか言う魔王が支配している」
『富山で生き残っている魔王は一人だけなんだ』
「そうなるな」
『それで本題は?』
「その唯一生き残った魔王から同盟の提案を受けた。カオルはどう思う?」
『え? その同盟ってボクも加盟しないとダメなの?』
「いや、あくまで俺と魔王モトキのみの同盟になる」
『ふーん……それで、その話を受けるの?』
「正直、答えに悩んでいるな」
『お、いいの? ボクに弱いところ見せちゃって』
「弱みではなく、信用と言って欲しいな」
『言うねー。まぁ、ボクには関係のない話だからどっちでもいいと思うよ』
「寂しいことを言うな」
『あはは。思ってもないくせに。まぁ、シオンがこれから先、最初に直面する強敵は岐阜県の人類か長野県の『十三凶星』になるだろうから、同盟もありじゃないかな?』
「なるほど。また、進展があったら連絡する」
『今度はボクにもメリットのある話でお願いね』
カオルは最後まで陽気な口調を崩さず、電話は終了した。
同盟を結ぶのはありか……。
まぁ、同盟と言っても永続的ではない。期限を設けて、その時の状況に応じれば問題ないか。
勘ね……。
カノンの言葉が少し心に残ったが、俺は魔王モトキとの同盟を決断したのであった。
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