検証(配下)
眷属を創造するにはCPの回復を待つ必要が生じた。
俺はやるべき事の優先順位を繰り上げ、次なる検証――新たな配下の性能確認へと移行した。
魔王(吸血種)へ進化したことにより、新たに創造出来るようになった配下は、
ジャイアントバット――ランクE。創造CP:5
グール――ランクD。創造CP:10
ライカンスロープ――ランクD。創造CP:30
の3種だ。
性能確認をする前に、気になるのは新たな配下ではなく、唯一創造CPが減少したバット。
今現在、俺はバットをCP2で創造出来る。元々はCP3であった。
これはCPが1減少したのか、もしくは半減し端数を繰り上げた結果2になったのか。
後者であるなら、ジャイアントバットの本来の創造CPは10となり、コボルトと同様のCP(強さ)と言うことになる。
と言う訳で、検証開始だ。
「戦え。但し、相手を殺すことは許さん」
ジャイアントバットとコボルトに戦闘を命じた。
「キィキィキィ!」
ジャイアントバットはその巨躯を活かして、空中からコボルトへと体当たりを仕掛ける。対するコボルトは、空中から下降してくるジャイアントバットを撃退すべく、しゃがみ込んだ体勢で、跳躍の準備をする。
激しいぶつかり合いが繰り返され、時にジャイアントバットが巨大な牙でコボルトに噛み付き、コボルトもジャイアントバットに上から覆い被さり、犬歯を羽根に突き立てる。
結果は、ジャイアントバットが辛くも勝利を収めた。
決め手は超音波による行動阻害からの、首筋への噛み付きであった。
CP10……回復に要する時間は20分。誤差の範囲だな。俺はジャイアントバットを2体創造し、続いてジャイアントバット2体vsコボルト2体の戦闘を命じる。先ほど戦闘をしたジャイアントバットとコボルトは体力の消耗が激しいので、休ませる。
結果は、コボルト2体が辛勝を収めた。連携力はコボルトが一枚上手であった。
戦闘の結果から推測されることは、相性のいい配下は創造CPが半減するということであった。
「戦え。但し、相手を殺すことは許さん」
次いで、グールとオークに戦闘を命じる。
「ヴォォェェォォォ!」
「ブヒィィィィ!」
グールは緩やかにオークへ接近し、腕を振り下ろす。対して、オークは口元に生えた巨大な二本の牙をグールへと突き上げる。
激しい衝突音が周囲に響き渡り、グールに殴打されたオークが後方へと殴り飛ばされる。グールも首元に牙を突き刺されたが、意に介することなく、殴り飛ばされたオークへと追撃を仕掛ける。
うは!? グールエグいな……。
武器を一切装備出来ないグールの一撃は強烈の一言であった。
このままでは勝負にならないと判断し、オークに得意な得物である槍を放り投げる。
槍を手にしたオークは、リーチを活かして刺突を繰り返し、グールの接近を阻む。グールは突き刺さる槍をものともせずに、ひたすらオークへと殴打を繰り返す。
結果は、グールの勝利であった。
互いに瀕死となり、相手を殺さないように手を緩めたオークを、グールは構わずに殴殺した。
勝利を収めたグールは雄叫びをあげている。
え? こいつバカなの? 俺の命令忘れたの?
グールだけは眷属にしない。今回の戦闘の結果を見て決意するのであった。
次いで、いよいよメインイベント!
一番気になった存在――ライカンスロープの性能確認だ。
ライカンスロープ。ランクDにも関わらず、創造CPが30。先程の法則を当てはめるなら、創造CP60相当の強さとなる。現在、俺が創造出来る配下で一番ランクが高いのがCランクのダークエルフ。進化前の創造CPは50。
ダークエルフよりも創造CPが高いはずなのに、ランクは低い。
その答えは?
「戦え。但し、絶対に相手を殺すことは許さん」
俺はライカンスロープとダークエルフに戦闘を命じた。
勝利するのはランクが高いダークエルフ? それとも消費CPが高いライカンスロープ?
仮に、ライカンスロープが勝利を収めるにしても、殺傷は絶対に許さない。ダークエルフの創造CPは100もするのだ。現在ダークエルフのストックは10人。出来れば、一人も減らしたくはなかった。
「※※※※!」
「####!」
互いに、理解不能な言葉を叫びながら衝突。
予測不能なライカンスロープとダークエルフの戦闘が始まった。
……え?
目の前には、フルボッコにされるライカンスロープ。
ダークエルフのしなやかな肉体から繰り出される殴打を、受け続けるライカンスロープ。ライカンスロープも苦し紛れに攻撃を繰り出すも、ダークエルフは突き出された拳を、時にいなし、時に華麗に回避する。
「ちょ!? たんま!」
俺は慌てて柏手を叩き、戦闘を中止させる。
その後、オーク、コボルトと戦う相手を格下げ。最終的にライカンスロープはゴブリンを相手に辛勝を収めた。
弱くね?
試しに、剣、槍、斧、弓といった様々な武器を装備させたが、強さが劇的に変わることはなかった。
強さ的にはレベル1の人類相当だろうか。
『ライカンスロープ――ランクD。獣憑きの呪われた種。月の光を浴びることにより、真価を発揮する。真価を発揮するまでその正体は不明である。創造CP:30』
えっと、こいつって月の光……つまりは、屋外の夜限定?
あ!? そういえば……。
俺はスマートフォンを操作して、【支配領域創造】→【タイプ変更】を選択。
『月光夜:月の光が照らす、夜の一面へと変更する』
お!? これこれ。
『支配領域の全域を変更しますか?(創造CP1000)』
……………。
部分変更は?
俺はライカンスロープの性能確認を諦めたのであった。
◆
配下の性能確認を終えた時点で、CPは282。CPの全回復まで32分となった。
この時間を活かして、俺は新たに習得した特殊能力の確認をすることにした。
新たに習得した特殊能力は――『ダークアロー』、『ダークインダクション』、『吸収』。『血の杯』と『
ある意味魔法とも言える未知なるチカラ――特殊能力。
その使い方は、習得すると本能で理解出来た。
あなたはどうやって右手を動かしている? 右手の動かし方を誰かから習った? 習わなくても動かせる。特殊能力の使用方法とは、本能に刻み込まれた、そういう類いであった。
俺は右手を突き出し、念じる。
――ダークアロー!
突き出した右手の周辺から現れた10本の漆黒の矢が、意識した空間――誰もいない岩肌の壁へと放出される。
漆黒の矢が壁に衝突すると、巻き上がる土埃と共に激しい衝突音を響かせた。
うぉ……ビックリした。
自分で放ちながら、想像以上の破壊力に驚愕する。
実際に当てたら威力はどうなる? 俺は周囲で控えている配下達に視線を送る。
グールを除いた配下達は、何かを察したのか、サッと目を逸らす。
流石に、配下で試し打ちって言うのは……ダメかな?
結局、無駄に配下を減らす必要は無いと判断し、試し打ちは中止した。
気を取り直して、次の特殊能力の確認しようか。
ターゲットは……ゴブリンでいっか。次の特殊能力は流石に
俺はゴブリンに意識を集中。右手の指を鳴らしながら、念じる。
――ダークインダクション!
黒い
「ギィギィギィ!」
対象となったゴブリンは、先程のグールの様に、理性を一切感じさせない瞳で、隣にいた別のゴブリンを殴り始める。殴られたゴブリンがその場から退避すると、対象となったゴブリンはその場でフラフラと泥酔した中年の様にフラフラと踊り出す。
混乱? もしくは、対象の理性を奪い去る?
その後も、対象を変えて、何度か検証。結果として、成功率は100%ではないということがわかった。ダークエルフに関しては10回試して、成功は2回のみであった。
お次はいよいよ『吸収』の検証だ!
俺自身を大きく強化する可能性を秘めた――『吸収』の検証に胸を躍らせるのであった。
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