馬、ランプ、年貢
某村ではその昔、「とらこ豆」なる作物を作っていたらしい。なんでも搾ると良質の油がとれ、煙が出ず佳い匂いがしたため、行灯など照明器具の燃料として重宝された。搾り滓は馬の飼料になったそうで、米の代わりにとらこ豆を年貢として納めていた時代もあったという。大正時代の同村の医師の日記には、とらこ油をランプに入れて使ったという記録が残っている。
現代ではその種子や栽培技術は失われ、幻の作物となっている。なんでもとらこ油の香りを長期間嗅ぎ続けると、幻覚や幻聴などの症状に見舞われるらしい。件の日記を残した医師はその後発狂し、「皆とらこの花になってしまう」と言いながら鉄砲を持ち出して村民を手当り次第に撃ち殺した。とらこ豆の栽培が下火になり始めたのはそれ以降からと言われ、現在その香を嗅ぐことはできない。ただ、廃村となった土地では、今でも盆の時期になると、芳香と共にランプの灯りのような人魂が飛ぶという。
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