宝物、落ち葉、換気扇

 子供の頃、僕が一人で公園に行くと知らない女の子がいて、積もった落ち葉の中に何かを埋めていた。

「何それ」と聞くと「宝物だよ」と言う。気になって落ち葉の中に手を突っ込むと、なにか動くものに触れた。端っこを掴んでみると握り返され、僕は慌てて手を引き抜いた。

 舞い上がる落ち葉の中に、人間の手首が見えた。

 驚きと恐怖が同時に襲ってきた。僕は脇目もふらず、走って家に帰った。

 家には誰もいなかった。台所の隅で顔を伏せて泣いていると、換気扇の音だけが響いていた台所に、突然甲高い笑い声が響き渡った。

 顔を上げると、目の前にさっきの女の子の顔があった。大きく開けた口の中が、洞穴のように暗かったことを覚えている。

 気がつくと帰宅した母に揺り起こされていた。僕は台所の床に倒れていたのだ。

「こんなところで寝ないでよ」

 事情を知らない母には叱られた。でもほっとした。さっき起きたことは夢だったのだ。

 そう考えながら体を起こすと、背中に貼り付いていたものがはらはらと床に落ちた。落ち葉だった。公園にあったものと同じものだった。

 それ以来、僕は一人で公園に行かなくなった。

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