きんぎょ

勝利だギューちゃん

第1話

「ねえ、聞いて」


私は金魚鉢の中にいる金魚に話しかける。

名前は、まさみ。


金魚の雌雄の区別が私にはできないので、男女共にに使える名前にした。

一昨年の夏祭りに、なかなかすくえない私を見たおじさんが、「お嬢さん、かわいいからサービスだ」と。お情けでくれた。


おじさん、ありがとう。

またお願いね。


で、まさみだが・・・

すぐにくたばると思っていたが、割としぶとい。


正直、ケアは最低限しかしていない。

甘やかすより、多少過酷な環境の方が、長生きするらしい。


まさみは、不思議そうにこちらを見る。

なんとなく、まさみの心が読めた。


なら、遠慮なく・・・


「私、お腹空いたの。まさみを食べていい?」

まさみは、ムッとする。


「冗談よ。金魚は美味しくないもん」

そう、美味しくない。


好奇心旺盛だった、幼き幼女だった私に言いたい。

「やめろ」と・・・


「金魚がかわいそうでしょ」と、親に怒られた。

なら、鰯や鮎や鮪や鰈や鰺や鯉は、可哀そうじゃないのか?


「はい」と、即答された。

人は怖い。


まあ、私も食べているが・・・


あっ、まさみが怒ってる。

「いいから早く話せ」と言いたげだ。


オスだな、わからないけど・・・


「ねえ、どっちがいい?」

私は、青と緑のジュンパースカートを見せる。


「ねえ明日、デートなんだけどどっちがいい?」


まさみは、きょとんとしている。


デートと言っても、彼氏とまではいかない。

仲はいいが、優しすぎるかな?


ちなみに、私の人付き合いは、広く浅くで、男女問わず友達が多いが、それほど深くない。

まあ、私の事はおいておこう。


『で、デートはどこへ行くんですか?ご主人様』

まさみが、そう言っているように感じた。


「水族館だよ。あの子、イルカが好きなんだ」

『嬉しそうだな』

「だって、私の行きたいところを、チョイスしてくれたんだもん」

『なら、どうして俺に訊く?』

「同じ水系でしょ?」

『俺は、淡水魚だ』

「水族館にも、いるよ」


まさみが、溜息をしたように見えた。


『水族館は青い。なので、かぶってしまうので、その二つなら緑がいいだろう』

「緑ね、ありがとう。ところでまさみ・・・」

『何?』

「魚って、色の識別出来るの?」

『普通は出来ない。ていうか、目はそれほどよくない』

「そうなんだ・・・」


『そう、普通ならね』

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きんぎょ 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu

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