第4話 幼馴染の元へ
今回の話を書く上で前回のラストを少し加筆致しました。もし時間があればそちらもご確認ください
〜レイside〜
「はぁ」
憂鬱な気持ちでため息が溢れる。
「なんでこんなことになっちゃったんだろ」
そんなこと分かり切っている。私があの幼馴染に恋してしまっているからだ。
女神様がカイを見たとき心臓がキュッとなって目の前が真っ暗になる感覚に襲われる。
このまま私が断ればカイを勇者にすると女神様の目はそう言っていた。
それを理解してしまった私は女神様からすればまな板の上の魚みたいなもので、あっという間に私は勇者として魔王を倒す使命を背負ってしまった。
それでも私にはそれ以外の選択肢なんて無かった。だってもし女神様がカイを勇者にしてしまったらどうなるのか簡単に想像できてしまったから
もしかしたらどこかの国のお姫様に一目惚れ
それて結婚するかもしれない
もしかしたら旅先でよった町で出会った女の子に一目惚れするかもしれない
もしかしたらどこかの森で妖精に愛されて一生を過ごすのかもしれない
そんなもしもが簡単に想像できてしまったから、だから私は勇者になるしかなかった。
幸いカイは私が女であることに気づかないくらいには鈍感だし、女神様も私が彼に恋していることをわかって彼に女性が近づかないように多少は配慮してくれるだろう(と信じていないとやっていけない)
だから私は頑張れる。いつか彼と結ばれるそんな夢みたいな未来のために
「うっ…ぐすっ……ひっぐ……うぁ…」
あれ?なんで?涙が…悲しいことなんてないはずなのに…
「止まって…止まってよぉ…」ぐいっぐいっ
止めたいはずなのに拭っても拭っても涙が止まらない
「なんで…いやだ…いやだよぉ…うぅ…」
魔王を倒せばそれで終わりなのにほんの少しの間別れるだけなのに
けれどやっぱり
「やっぱり…ぐすっ…寂しいよ…ひっぐ……会いたいよ…カイ…いつもみたいに私を助けてよ」
「待た…せ…て……ごめ…んな」
「へっ」
聞き慣れはずの声に思わず顔を上げる
「…助け…に来た…ぞ」
そこにはボロボロの体で不敵な笑顔を浮かべた私の最愛の幼馴染が立っていた
〜レイside out〜
走れ!走れ!走れ!もっと早く!
深い森の中を木々を掻き分けながら進む
魔狼「Glaaaaa!!」
「邪魔だァ!!」
襲ってくる魔獣たちをた二振りの刀を持って叩き斬り、最短ルートを突き進む
「このままいけば!…ッ!?」
???「GLAAAAA!!!!!!!!!!」
声が聞こえた瞬間、視界の端からこちらに向けて飛んでくる巨大な黒い塊。咄嗟にガードの体制を取りながら真後ろに飛ぶ
???「GLAAAAA!!!!!!!!!!」
「ガァ!?」
体中の骨がメキメキと嫌な悲鳴を上げる
「ガホッ!!?ゲボッ!?!?」
何が起きた?軋む体に鞭を打ち視界の端にに現れた黒い塊の正体を見る
「…クソッこんなところで鉢合わせるか」
その正体は全長が3mはあろうかという巨大な熊の魔獣だった
魔熊「GLUAAAAA!!!!!!!!」
咆哮と共に片腕を振り上げ一気に接近してくる
「クソッ!」
なんとか体を捻る事で回避するが右腕を抉られる。
「これで!どうだ!?」
関節に向けて刀を振うが…
魔熊「GLUAAAAA!!!!!!!!」
腕を払う事で防御された
(このまま戦っても持久力の差で俺が負ける…それなら…)
カイは魔熊に対し刀を正面に構えた
(次あいつの攻撃を受ければ終わりだ。俺が全力で刀を触れるのも後1、2回が限度、あいつの攻撃を正面から避けて隙を突くしかない)
魔熊「GLUGUAAAAA!!!!!!!!!!」
カイが魔熊の一撃をギリギリで避け魔熊の態勢が大きく崩れる
「ここだぁ!!」
魔熊「GLUGLaAAaAAa!?!?!?」
カイが振り下ろした刀は見事に魔熊の右腕を叩き落とした。だが魔熊はその程度では揺るがなかった。なんと残った左腕でカイの胴体を掴んだのだ
「な!?ガァ!?」
(まずい!?このままだと握りつぶされて!?)
魔熊「GLUGLaAAaAAa!!!」
(こんなところでくたばってたまるかぁ!)
「アアアアアアアァァァァ!!!!!!!」
「はぁ…はぁ…はぁ」
(なんとか勝った。早く行かないと)
ボロボロの体を引きずって村の中を進んでいく。騒いでいた村の人達が異常なものをみる目でこっちを見てくる。そんなもん知るか。周りなんて気にするな。お前が今気にする必要があるのは一つだけだろ
進め!進め!進め!
周りの音が遠くなり目の奥がチカチカする
薄れる意識の中でなんとなく理解する。体が限界を迎えたのだ。だが、それがなんだ。たかが体が限界を迎えただけだ。その程度で足を止めるほど俺の思いは軟くないだろ?音なんか捨ておけ、体なんて気にするな今は一分、一秒でも早く!!一歩でも先にあいつの元へッ!!!!!
進め!進め!進め!進め!進め!!!
「…あ…と…少……し…」
プツッ
体の中で何かが切れた感覚。限界なんてとうに過ぎていたはずの体が悲鳴をあげる
「アガッ!?グッ!?ガァアア!?」
あつい!?熱い!?熱イ!?アツイ!?
体中が燃えるようにアツイ!!
「ガァッ!? アグッ! グォオオ!!」
ダメだここじゃ止まれない。こんなところじゃ…無理矢理手を伸ばし先に進もうとする。だがどんなに動けと命令しても指一本すら動くことはなかった。心が体がゆっくりと凍えていく感覚。死の足音がすぐそこまで迫ってきている。
もういいだろう。ここまでよくやったほうだ。もう体も限界を超えていてもう一歩も…
『うっ…ぐすっ……ひっぐ……うぁ…』
「レ……イ………?泣いて?」
『なんで…いやだ…いやだよぉ…うぅ…』
(レイ…レイ…レイ…レイ!」
動かなかったはずの体がゆっくりと動き出す
「助け…るん……だ…俺が……レイ…を…」
「助けるんだ」
体中を支配していた熱が集まって行きゆっくりと体が変化するような感覚
(今はそれでもありがたい)
「この熱さがあれば気絶しないで済む…」
一歩、また一歩。ゆっくりとされど確実に進んでいく。
そして…ついにカイは教会に辿り着いた
「やっぱり…ぐすっ…寂しいよ…ひっぐ……会いたいよ…カイ…いつもみたいに私を助けてよ」
(あぁ助けてやるさ。いつもみたいに)
「待た…せ…て……ごめ…んな」
「…助け…に来た…ぞ」
「レイ」
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前回引き続き今回も
おまけ
魔獣について
野生の獣が空気中に満ちる魔力を受けて変質した存在
魔獣になると元の生物から身体能力と凶暴性が大幅に向上する
凶暴性が向上する理由は身体能力の向上に伴い体躯が二回りほど大きくなるため消費エネルギーが上がるからと考えられている。また知能が高い魔物は魔法を使用したり死亡時呪いを残すなど討伐が難しくなる
魔獣に変化した動物は頭に’’魔’’を着けて呼称されることが多い
(例、熊→魔熊 狼→魔狼 鮫→魔鮫 など)
惑わしの森
カイたちの村から少しした場所にある森
大気中の魔力が指向性を持っており森に入ってきたものを惑わせ森から出れなくさせる。森の最奥には特別な道でしかいけない開けた場所があり、何かの台座があるらしい…
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