七色の虹と僕の夢。

久しぶりの休日。社畜な僕に舞い降りた奇跡的な出来事。嬉しさのあまり頬が緩む。昨日は散々呑んでほとんど記憶がない。誰かに迷惑をかけていなければいいが…。

そんなこんなで起きたのはお昼丁度。休日と言っても出かける気力も友達もいない。流石休日というほどのくつろぎ具合に自分でも驚くほどだ。


きっと自分には休息が必要なんだ。抗うことはせずそのまま睡魔に身を任せることにした。

目を覚ますとーベットの上ー

すっかり寝ていたみたいだ。ふと窓の方を見てみると太陽は真ん中へ登っていた。

空には虹がかかっていた。赤、橙、黄、黄緑、緑、紫。あれ、何かが足りない。「青」が足りないんだ。何故だろうか。不思議と気になった僕は虹の端を探しに麓へ行ってみることにした。

そういえば虹の麓へ行くのははじめてだと思った。いや、その前にまず虹に端なんてあるのだろうか。ふとした疑問に不安が募る。

「まぁ、別にいいか。」

でもこれは単なる好奇心からなる行動であるから虹に端が有ろうが無かろうが関係ない。麓へ行こうとすることこそが大事なのである。そう開き直り、来ていたジャージを脱ぎ捨て着替える。足早に階段を降りていき、家の扉を開け歩き出したーーー

虹を追いかけ、着いたのは「川」。肝心の虹はどこだ…。辺りを見渡したが、求め探した虹の端は無かった。無かったというよりは見えなかったと言った方が正しいだろうか。虹は川の中に続いていたのだ。つまり、見ることができない。これはどこまで続いているのだろうか。謎は深まるばかりである。

結論:虹はロマンに満ち溢れた夢のような存在であった。

端があるあたりが気になって目が離せなくなった。ふと吸い込まれるように虹が続いてる川の中へ入っていった。幸い今日は浅瀬みたいで、膝くらいまでしか沈まない。一歩、二歩、ゆっくり、だんだん早く。最後には全力ダッシュで虹へ向かっていた。

案の定、滑って転んだ。

川の中にひとつの光を見つけた。近づいてみると「大きな箱」。川に手を入れそれを掴む、それは宝箱みたいなものだった。錠は付いているが鍵はかかっていないらしい。開けると中には「沢山の青い宝石」。これは何だ…?

おもむろに鞄の中を漁り携帯を取り出す。写真を一枚。それからネットで「青い宝石」と調べてみる。すると一番上に出てきたのは「サファイア」。載っている写真からしてこれと同じであろう。この「青い宝石」は「サファイア」と言うらしい。

何故こんなところに宝箱が、そしてこの沢山のサファイアが置いてあるのか。考えれば考えるほど謎は深まるばかりであった。

「まぁ、別にいいか。」

考えることは止めた。謎は謎のまま置いておくのがいいだろう。

でも、最後に…

「ひとつくらい、いいよな。」

沢山の宝石の中からひとつ手に取り、そっと蓋を閉めた。

突然爆発音が鳴り、

雨が降り出し、水の勢いが増す。嫌な予感がした。自分は全くと言っていいほど泳げない。予感的中。僕は溺れた。流れる水に逆らえず、流されていく。苦し紛れに取ったサファイアを握り締める。これは離してはいけない、そう思った。

遠のく意識の中で宝箱が何か囁いているような気がした。

夢を見ていた。とても不思議な夢であった。

目を覚ますとーベットの上ー

あれは夢だったのだと確信するまでにそれほど時間はかからなかった。

起き上がり

玄関にひとつの段ボール箱が目を入った。何か頼んだっけ、覚えていない。近づき箱を開ける。

すると中にはー宝箱ー

見覚えがある。これは夢の中で開けたサファイアが沢山入っていた宝箱だ。

急な不安と焦りが募りドアを開けて外に出た。

重たい扉を開けるとー大雨ー

なんてこったい。確かに、今日は驚くほどの大雨だった。まるで何かを失った哀しみに大粒の涙を流すかのように。

ふと下を見るとーサファイアー

これは僕が貰った一欠片。まさか、これは僕のせいなのか?次に虹が出た日にでも返しに行くか…



終。

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