13話 お熱いのは平気


さっぽろ夏祭りの前日の朝の中央第一営業所。


話ができるレベルまで回復できた姫野は、清掃中の彼女に時間があれば大通公園まで遊びに来いと誘った。


「皆さんは何をされるんですか?」


「俺達はサンプルを配るんだが、他にも売店があってソフトクリームもあるぞ」


「……私、ソフトクリーム大っ好きなんです。お邪魔にならないように伺いますわ」



こんな約束をした小花は、祭りの当日、夏山愛生堂のテントに顔を出した。炎天下の大通公園。たくさんの買い物客や観光客が行き交っていた。


「松田さん!こんにちは」


「まあ。すっかりアスリートね」


真夏の天気にかかわらず日頃から体を動かしているという彼女はランニングウエアで自宅から軽く走ってきたと話した。姫野はそんな眩しい彼女に笑みを見せた。


「君は台上前転は出来ないのに、走るのは出来るんだな」


「まあ?私は道具を使わないスポーツは得意なんです」


彼のからかいにちょっとむすとした彼女の元に実行委員会とTシャツに書かれた人が顔を出した。



「あの~すいません!ミニマラソンに出場する女子が全然足りなくて。もし良かったら、歩きでいいので参加しませんか?」


「私ですか?」


見るからに走りそうな服装の小花に実行委員会の関係者はこれから行われる札幌の街を軽く一回りするマラソン大会のチラシをくれた。


「止めておけ。この暑さだし。君なんか疲れて伸びるだけだ」


「……やりますわ」


「なに?」


「私、参戦させていただきます」


姫野の態度にカチンときた彼女は、こうして参加する事になった。この決断に姫野は最後まで反対したが、風間は自身の車から青いTシャツを持って来た。




「ね!良かったらこれ着て走って」


背や肩に『ススキノ風間薬局』と書いてあるTシャツはサイズも合うので彼女は快く袖を通した。


「待って。暑いから帽子をかぶらないとね。これでいいかしら?」


松田が貸してくれたのは、夏山愛生堂と書かれたのサーモンピンクのキャプだった。


「ありがとうございます。あの、松田さん、私……」


松田にそっと耳打ちをすると、小花はテントの中でジャージのズボンを脱ぎ下に穿いていた黒いスパッツ姿になった。そして姫野を無視したまま、お気に入りの百円ショップのサングラスをしっかりと掛けた。


こうして彼女は勇ましくスタートラインに着いた。





『実況は私、北海道テレビの南郷なんごうひろ美がお伝えします!いよいよ大通りミニマラソンがスタートとなります。それではコースを御紹介します』


アナウンサーの説明では大通り公園テレビ塔をスタートし、ランナーは石狩街道を北へ進み札幌駅前を通り、石山通り、そこから南へ進へと進み、大通り公園に戻り、ここテレビ塔がゴールとなるものだった。


『さあ。いよいよスタートです。パンと言う音で、ランナーは一斉に飛び出しました!!』


夏山愛生堂のテントの中では、石原の私物のラジオが、競馬中継ではなく、ミニマラソンの中継を流していた。姫野や風間は来場者にサンプルを配布するのに忙しくしていたが、やがて、松田の声に振り返った。


「二人とも!大変よ!小花ちゃんが!」


「何?部長すみませんが、一人でこれを配って下さい」


「俺の分も!」


「うええ?」


慌てて戻ってきた姫野と風間は、松田に倣いラジオに耳を澄ませた。


『……つづきまして女子のトップですが、先頭は北海道女子体育大学の松野さんですね。その彼女の後ろにいるのは……飛び入り参加の市民ランナーでしょうか。名簿がありませんので名前が不明ですが、ゼッケンは白のままで、ピンクの帽子は夏山愛生堂。青いTシャツの肩にはススキノ風間薬局とありますね』


「なにー!?」


「マジで?小花ちゃんじゃないかよ?親父に言わなくちゃ!」


「おい姫野!?これはうちの天使の小花嬢の事か?」


姫野と風間とテントにいた中央第二営業所の部長の渡は、ラジオに耳を寄せた。


『名前が不明ですので。彼女はこのまま夏山愛生堂でご紹介していきます。さあ、先頭集団の走りはいかがですか?本日の解説は、スポーツライターの増田さんです。よろしくお願いします』



『よろしくお願いします。そうですね。先頭集団は今のところ5名ですが、先頭の松野さんはまだ余裕のある走りですね。ですが背後の夏山愛生堂は、松野さんを風よけに使っているようにみえますね。先頭は松野さんですが、レースを操っているのは夏山愛生堂かもしれないですよ』


この声に、渡はテントの外へ飛び出した。


「おう!中央第二の野郎ども!これより我らの小花嬢を応援のために、ロイトンホテルに向かう!いいか、サンプルは移動しながらついでに配れ!俺について来い!」



おお!という掛け声に赤いポロシャツの襟を立てた渡は、白いポロシャツ軍団の中央第二の社員達を引き連れて人波に消えていった。


「ど、どうしたら。松田さん!俺はどうしたら?」


「姫野係長も慌てることが有るんですね」


「先輩!うちの親がチャリで先回りして、京王プラザホテルの前で応援するって」


「俺も行く!」


「待ちなさい!二人はゴールで待っていて欲しいって彼女の伝言なのよ」


「へ?」


「マジで?」


うんとうなずく松田に首を掴まれた二人は、がっくりとうなだれた。




『……代わって女子の方ですが、給水ポイントで先頭の松野は水を取れましたが、夏山愛生堂は取りに行きませんでしたね。増田さん。これは何か作戦なのでしょうか?』


『さあ。もしかしたら、夏山愛生堂はこういう給水をした事がないのかもしれませんね。今日は30度を超える暑さですので、この給水は大事ですよ』


このラジオを聞いていた姫野は、動悸が止まらなかった。



「たぶん、走りながら水を取るなんて、やったことないんじゃないか……」


自分がからかったばかりに彼女が無謀に参加してしまったと責任を感じている姫野はその自責の念で胸が苦しかった。


「あ、先輩。スマホに映りましたよ」


風間のスマホには、先頭に必死で食い付く、彼女が映っていた。


「小花……」


『ここ京王プラザホテルの前には、夏山愛生堂を応援するご夫婦でしょうか、同じTシャツ姿の大きな声援に、ランナーも……今!手を振りました』


「すっげ?間に合ったんだ」


「……」


「でも水が飲めないってきついみたいですよね。小花ちゃん、だんだんペースが落ちて集団から遅れて来た……あれ?この人」


二人はスマホを見ながら、ラジオの中継を聞いた。


『ああっと?ここで。近くを走っていた同じ夏山愛生堂の帽子の男性ランナーが、並走しながら女子の夏山愛生堂に水を渡しました!この男性ランナーのゼッケンを確認します……市民ランナーの会社員の手塚さんですね』


「先輩!?この男の人は、夏山の子会社の人ですよ!小花ちゃんの知り合いです」


「小花……」


『男性から水を受け取った夏山愛生堂。これを飲み、頭にも掛けました。そして?何か話を聞いていから、追走を開始しました!』


「小花……」


スマホを握り締めながら、姫野はつぶやくばかりだった。サンプルを配る松田は不甲斐ない男性に苛立っていた。



「二人とも。いいですか?小花ちゃんは心配しないでゴールで待っていてって言ってたんですから。ここにいて下さいよ」


二人の背後から念を押す松田に、姫野と風間は仕事もできずため息しか付けなかった。


『男子のレースに気を取られていましたら、女子にも動きがありました。夏山愛生堂がいつの間にか先頭集団に追いつきました。増田さん。これは、先ほどの給水の効果ですか?』


『それもありますが。気温がだいぶ上がって来て、先頭集団のペースも落ちている気がしますね』


『……ああ?と、ここで!松野がスパートを掛け、集団を抜け出しました!が、夏山愛生堂がこれを追う!』


『松野さん。仕掛けてきましたね!』


「小花……」


「がんばれ!小花ちゃん」


『逃げる松野を、夏山愛生堂が追う!ここロイトン札幌ホテルの前では夏山愛生堂の大応援団が、ものすごい声援を送っています』


ラジオからも、いけいけお嬢!という大声援がこれでもかと響いていた。


『これはランナーにとって大きな励みですよ』


「がんばれ!小花ちゃん……あれ?先輩?」


「もう!ゴールで待ってって言ったのに……」


いつの間にか消えた姫野を他所に、二人はスマホにかじり付きながらラジオに耳を傾けた。




『……石山通りを走る女子の先頭はいよいよ左に曲がって、大通り公園に入ろうとしています』


「諒!どうだ?」


チャリを激走させてテントに戻ってきた青いTシャツ姿の風間夫婦は、息子に駆け寄った。




「小花ちゃんはまだ二位……」


『……そして、松野がコースを大きく左に曲がる、おおっと?ここで後方にいた夏山愛生堂はインコースをすすす、と走り抜けトップに躍り出たー?』


『今度は夏山愛生堂が、仕掛けて来ましたね』


「「「来たーーー!?」」」


うるさい風間親子の雄たけびに、松田は耳を塞いだ。




『まだまだです。背後の松野さんも諦めてないですよ』


その時、風間のスマホには、小花に並走しながら何かを叫ぶ、姫野が映った。


『……先頭を走る夏山愛生堂、今!サングラスを投げ捨て、ここから……スパートですか?』


『ギアを一段上げましたね。すごい胆力です』


「「「ぎゃあー!行けー小花ちゃんっ」」」


耳をつんざくような声の風間親子の雄たけびに、松田はこの場を離れた。そうして二位をぶっちぎった小花は、そのままテレビ塔へ向かった。




沿道の札幌市民達は、ライラックの並木道を必死で駆けていく彼女に大きな拍手を贈っていた。


『……札幌の中心部を駆け抜ける大通りミニマラソン大会。この猛暑の苦しいレース。激しい先頭争いを見事に制したのは、無名の美しきアスリートです。熱い日差しがありました。難しい給水がありました。しかし、そんな中を夏山愛生堂はこうして爽やかな笑顔でテレビ塔に舞い戻ってきました。……札幌市民がこんなに多く祝福する中、今。トップでゴールし、太陽の女神となりました!……』



「はあ、はあ、はあ……」


「小花ちゃーん!!お疲れ様」


「……かざま、さん。まつだ、さん……はあ、はあ……」


「いいのよ。無理して話さなくて」


松田は大きなバスタオルで小花を包み、風間は彼女を抱きしめた。


「お嬢……そこまでして我らの宣伝を……」


「わたり、さん。みな、さん。ありがとう、ございまし、た」


「何を言う?……涙で前が見えないじゃないか……」


渡と中央第二の社員は、彼女の力走に涙が止まらなかった。



「小花さん!あんたは大したもんだ……」


「風間の奥さま、社長も。応援、ありがとうございました」


「バカね?あんた!うちの宣伝のために、そんなになってまで走って」


勘違いの風間夫婦の目にも涙が浮かんでいた。



「ねえ。ところで諒、姫野君はどうしたの?」


小花を抱えた風間は、彼女をそっと地面に座らせ母に顔を向けた。


「先輩はゴールで待ってって言われていたのに。応援に行ったんだよ」


そこにマイクを持った取材の人が集まってきた。




「すみません。インタビューをお願いします。こちらにお願いします」


やがて息が整った彼女はインタビューで夏山愛生堂内で勤務していると説明した。


『インコースで抜いたのは、作戦ですか?』


『はい。あそこは直射日光になると聞いたものですから。チャンスだと思いました』


『チャンスといいますと?』


『私は暑さに自信がありますので』


『そうですか。あと、ラストスパートを掛けましたが、あのタイミングは考えていたのですか?』


『いいえ。いつスパートを掛けるか考えながら走っておりましたが、知り合いの顔が見えたので。それで、スイッチが入りましたわ』


『まだまだ聞きたい事がありますが、時間ですのでこれで失礼します……』



ようやく解放された小花は夏山愛生堂のテントに戻ってきた。





「小花ちゃん、お疲れ様!あれ、先輩は?今までいたのに」


「さっきまでここにいたんだけど、恥ずかしくなったみたいで、どこか逃げたのかしら」


風間と松田がキョロキョロと見渡していると、人波をかき分けて姫野が現れた。




「……小花!これを」


頭にサングラスを載せた姫野は、ソフトクリームを持っていた。



「おめでとう!さ。食べろ」


「い、いただきます」


「おいしいか?」


「はい。おいしいです」


「疲れただろう。ここに座れ」


「はい」


「……飲み物飲むか?汗、拭くか?」


「フフッフ」


「疲れてないか?足揉むか?」


そう言って、彼女の周りをうろうろしている姫野に小花はおかしくてソフトクリームを食べられずにいた。


「どうした?早く食べろ」


「だって?フフフ」


「おーい姫野!サンプル、俺が一人で配ったんだぞ!」


「そうだった?石原部長に任せたんだっけ?」


「フフフ。姫野さん、そんなに心配して……アハハ」


「なんだよ。心配しちゃ悪いかよ」


すると渡部長が、皆を集めて号令を掛けた。




「えー。それでは我らの小花嬢の優勝を祝って、真っ昼間でありますが、乾杯をします!『夏山愛生堂には!』」


……愛があるー!イエーイ……


社員達は缶ビールを一気飲みすると、頭を下げる小花を盛大な拍手で包んだ。


「……皆さん。ご声援ありがとうございました」


そして彼らの万歳三唱は実行委員会から注意を受けるまで続いたのだった。




「ええと。私、帰りますね」


こうして一息着いた彼女はすっと立ち上がったが、松田が待ったと制した。


「小花ちゃん。優勝したからたくさん商品あるわよ。家まで誰かに送らせるわ」


すると姫野はポケットの車の鍵を探した。


「自分が送ります。小花、車を取ってくるからここで待っていてくれ」


そして姫野はあっという間に地下駐車場から愛車を取ってきた。そして風間を差し置いて彼女を車に乗せた。



「本当によろしいの?」


「あ、ああ。あのな、小花」


「何でしょうか?」


助手席に彼女をエスコートした彼は、ドアを開けたまま勇気を出して彼女に向かった。


「……済まなかった。走る前から君には無理だなんて言って」


彼女は姫野をジーーと見ていたが、やがてニコと笑顔になった。


「もういいです。帰りましょう。さすがに疲れました」


「ああ」


そして姫野は運転席に座り、車をそっと発進させた。


「しかし、腹が減ったな、なんか食べるか」


「私、この前のラーメン美味しかったです。あそこの冷やしラーメンを食べたいですわ」


「わかった。君の行きたいところに今すぐ行こう……あ、そうだ小花」


「何ですか?」


他人は滅多に載せない愛車の助手席。座る清らかな汗が光る少女に、姫野は一瞬ごくとツバを飲んだ。


「これからは夏山愛生堂で困った事があったら、何でも私に言いなさい。仕事も勉強も面倒見るから」


そういって彼は彼女の頭にサングラスをそっと差した。


昼下がりの札幌。


この夏一番の暑さの街を、二人の車は熱く駆けて行ったのだった。







そんな夏祭りの翌日。


夏山愛生堂の社員は大通り公園に集合していた。みな火ばさみや、軍手を付けてゴミを拾っており、それを北海道テレビの生中継が入った。



『おはようございます!私は今、大通り西十一丁目の広場に来ています。例年、ゴミが問題になっていましたが、今朝はボランティアで学生さんや、企業の方がゴミ拾いをされています。では、早速、インタビューしてみたいと思います、おはようございます、どちらの会社の方ですか?』


『夏山愛生堂の石原と申します』


頭にタオルを巻いた部長の石原がカメラ目線で答えた。


『なぜ清掃活動をされているのですか』


『えー。うちの会社も夏祭りを盛り上げたいと思ったんですが、社員みんなで話し合って、清掃活動で参加をし、札幌の街を綺麗にして祭りを締めるのが良いということになりました』


『そうですか。やってみていかがですか』


『暑いですけど、心が綺麗になりました』


『ありがとうございました。次は通行人の方に話を聞いてみましょう。おはようございます。どうですか、このような活動は?』


『大変素晴らしいですね。こういう会社はなかなかありませんから。大したもんです』


初老の男性のコメントでこうしてテレビ中継は終わり姫野はこれをスマホで確認していた。



「石原部長ってテレビ映り良いですね」


「当たり前だろう。こういう仕事は俺に言えよ?いつでも出演してやるからよ」


「その時はお願いします、あ、風間社長!」


通行人役を演じた風間の父が、輪に加わった。


「どうだった?俺の演技?」


「俺ほどじゃねえな」


「は?お前、とうとう、ぼけたんでねえか?」


夏山愛生堂で同期であった初老の二人は人目をはばからずにらみ合うという大人気ない態度を取っていた。


「はいはい。そこまで!会社に行きますよ」


間に割って入った姫野は、松田に連絡をし軽トラックをゴミの山まで付けさせた。


みんなで文句を言いながらゴミを積むと、松田と姫野は夏山愛生堂に向かった。そして会社に到着すると、待っていた風間がオーライ、オーライと車を誘導して行った。そして車を停めると、風間と姫野はゴミを下ろそうと荷台に上がった。


「こっちです!ここにお入れ下さいませ」


彼女の掛け声に産業廃棄物と書かれた鉄のボックスに二人はどんどんゴミ袋を投入した。やがて荷台が空になったので、二人がここから下りると運転手の松田女史は、軽トラックを駐車場へ移動させた。


「しかし。結構な量だったな」


姫野は小花からもらった首のタオルで汗を拭いながらゴミの山を見上げた。


「姫野さん。写真を撮ったらいかがですか?社長に報告するのにあった方が良いですよ」


「よし、風間、撮ってくれ」


「はいはい」



風間が撮影している間に、小花はすっと飲み物を取り出し、綺麗な手でキャップを開けて姫野に手渡した。


「これどうぞ」


「おお」


彼は冷たいペットボトルの水をぐびと飲み干した。


「はあ。ありがとう。そうだ!君に御礼をしないとな」


「何の御礼でしょうか?お世話になっているのは私の方ですが」


不思議そうに小首を傾げた彼女に、思わず姫野は遠くを見ながら呟いた。


「このゴミの処理や、掃除用具の手配は君だろう?」


「どうしてそれを?」


「……総務の二人が今までの事を全て白状したよ。キルト展も君が行ったと言うし。全く」


腰に手を置いた姫野は意地悪そうに彼女を見つ目、彼女の返事を待った。


「キルト展はごめんなさい。私が姫野さんの代理って、お嫌かと思いまして」


「その逆だ」


「はい?風で聞こえませんでした」


その時、この場に風間がやってきた。


「おい風間。こいつはキルト展のことを白状したぞ」


「あれ?その話し。先輩にばれてたんですか?」


「あ、こぼれた……」


姫野は持っていた水を風間にバシャとかけた。


「何するんですか?このー」


風間も負けじとペットボトルの水を姫野の頭にふりかけた。


「冷て?このバカ野郎!」


「まあ。お二人とも、お戯れを?今日はこれからお仕事なのに!キャ?冷たい!」


小花は、あわててタオルを二人に手渡した。こうして北の街に爽やかな夏がやってきた。




つづく


    

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