第33話 内偵捜査活動のターゲット登場

 足立、吉村両刑事は、鳥羽警部の特命を受け、ファンとのSNS、ライブ、イベントなどで、ファンとの交流を深めていった。何度か顔見知りになったファンに吉村刑事は尋ねた。


 「ねぇ、最近、果林ちゃん、見ないけど病気か何か」

 「えっ、知らないの?果林ちゃんは…、亡くなったよ」

 「えっ、いつ、何で」

 「詳しくは、発表されていなんだけど、突然死って事になっているみたいだよ」

 「って事にって、何か他に原因があるかもって事だよねぇ~。僕の推しメンだったのに~、果林ちゃんは」

 「それは、残念だったね」

 「誰か、詳しいこと知らないのかい、知りたいよ僕。居たら、紹介してよ」

 「そうだなぁ…、あっ、マッキーなら知っているかも」

 「愛称だけどね、本名は、知らないな」

 「そのマッキーさんを紹介してくれないか」

 「連絡先は、知らないけれど、顔は、分かるよ」

 「じゃ、今度、そのマッキーさんに会ったら、僕に教えてくれないか」

 「いいけど、自分で聞いてよ。顔見知り程度で、よく知らないんだ僕」

 「勿論さ、君には、迷惑を掛けないよ」

 「分かった、見かけたら、メールするよ」


 吉村刑事は、捜査線用のニャインアドレスで連絡先を藤原拓巳と交換した。


 「ああ、頼んだよ、有難う。ほんと、持つべきは友達だよなぁ」

 「は、恥ずかしいだろ、よせよ…、でも、嬉しいよ。そんなこと初めて言われたから」


 数日後、藤原拓巳からメールがあった。


 「マッキーがいま、溜まり場のスタバに居る。目印はCat's-Cat'sのスッテカーを貼ったノートパソコン」


 吉村隆刑事は、詳しい地図を拓巳に送ってもらい、足立康夫刑事と共に向かった。店内を見渡すと如何にも場違いな集団が目に入った。直ぐ傍の席が偶然空いていた。

両刑事は雑談しながら、マッキーたちの会話に耳を集中させ、話に加わるきっかけを待った。それは、直ぐにやってきた。


 「あの~」


 吉村刑事が声を掛けた。


 「つい聞こえてしまったんですが、あなた方もCat's-Cat'sのファンの方ですか」

 「そうですが、見たことないなぁ、君たち」 

 「まだ、二ヶ月程の新参者でして」

 「そうなんだ」

 「宜しかった僕らも、混ぜて貰えませんか」

 「どうする?」

 「いいんじゃないか、仲間だし」

 「だな」

 「有難う」


 二人の刑事は、呆気なく、仲間入りを果たした。その席には、マッキーの他、古参のファンの三人が居た。年齢的には皆、両刑事と同じような世代だった。吉村、足立は何も知らない後輩を見事に演じ、マッキー他三人を先輩として持ち上げた。

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