前のエピソード――第22話奇抜過ぎる潜入捜査、開始！

　「その手もあるが、まだ、早い。今、渡せば、果林と怪しい匂い袋の裏は、別件として処理され兼ねない。捜査班が別物になれば、意思疎通は難しいだろうし、互が手柄を競い合って、繋がるものも、繋がらなくなるかも知れない」

　「それは、不味いわね」

　「ああ」

　「それに、こちらのことを根掘り葉掘り、嗅がれるのもいい気分じゃないからな」

　「…」

　「取り敢えず、花は、練習だ。まずは、相手の懐に潜り込むのが当面の課題だ」

　「そうね、絢香さんを守るためにも、頑張らなきゃ」

　「敵は味方の振りをする、いや、敵は味方になるかも」

　「そうね、可能性は低いかも知れないけれどね」

　「分からないぜ、今回のグループ結成は、絢香さんの一存だろう、それだけ、思い入れがあるってことだ。その熱意が、上手く働けば、可能性は出てくるぜ、きっと」

　「そう上手く、行きますかねぇ～」

　「行かせるんだよ、花が」

　「おい。他人の褌を借りて相撲をとるつもり？」

　「花の褌姿…、いいねー」

　「あっ、エロい創造罪で、検挙する、はい、罰金ね」

　「お許し下さい、お代官様」

　「もう、ほんと、慎司は、真剣なのか、アホなのか、分からないわね」

　「お褒めに預かり、伊丹十三」

　「褒めてない」

　いつものボケ・ツッコミのやり取りが花にとっては、楽しかった。花のスマホに、佐伯日菜子から連絡が入った。

　「おっ、日菜子さんからだろう？」

　「チェッ、何で分かるのよ」

　「分かるさ、日菜子さんは、仕事が早いからな」

　「はいはい、私は、のろまな亀で御座います」

　「亀は、文句を言わないから、可愛いがけどな」

　「もう、いい！」

　「それで、何だって？」

　「動画サンプルとして、MMDと踊ってみた、宅舞、それと、ダンスポジションが書かれたメールだ」

　「宅舞？」

　「bilibili動画よ、知らなきゃ、自分でググってよ」

　「日菜子さんのマッサージは気持ちいい。痒いところに手が届くからねぇ～」

　「はいはい。でも、困ったなぁ、僕、ダンスなんて…」

　「確かに想像はつかないな。それなら、ほら…広瀬すずに名前の似た…そう、広瀬いすずちゃんに連絡、取ればいいじゃないか、彼女は、京都だろ？」

　広瀬いすずは、京都精安女子短期大学の一年生だった。佐伯日菜子は、大学を卒業後、今は実家の岡山に帰り、農家を手伝っていた。鬼龍院花と佐伯日菜子は、大学を卒業した経歴を詐称し、在学中として、Cat's-Cat'sのオーディションに応募していたのだ。花と日菜子は、見た目より、ずっと幼く見えたのが幸いしている。犬タイプの日菜子と猫タイプの花は、遠からず近からずのいい関係を築いていた。