第21話 奇抜過ぎる潜入捜査、開始!

 「でも、絢香さんに果林ちゃんをどうにかする動機が


あるとは思えないけど…?」


 「そんなものはでっち上げれば済むじゃないか」


 「例えば…?」


 「絢香さんのあの素行が、彼女自身を追い込むことに


なるさ。周辺の者に聞けば、冷酷、無慈悲、


トラブルメーカーって、意見がてんこ盛りで集まる。


 それを警察は、都合のいいところだけを抜粋して


繋ぎ合わせれば、些細な事が、あたかもの体裁を


繕うものさ。あとは、感情を抑えられず、つい、カーっと


なって、犯行に及んだとでも、決め付けるだろう」


 「そんな酷ーい」


 「俺たちだって、実際に絢香さんに触れて、


考えが変わったじゃないか、人のことは言えないよ」


 「まぁ、そうだけど…」


 「でも、警察が参考人を知ろう、理解しようとするか。


 しないさ、痴漢冤罪がそうだろ。やってなくても、


やったと決め付ける。加害者が被害者なんて考えない。


 性欲を満たすためにやった、そう決め付けるじゃないか」


 「そうだね、痴漢冤罪はを晴らすのは難しそうだものね」


 「あれだって、調べる側が出来れば置換したい、


それを俺らは抑えているのに、お前は、やりやがった。


 だから、許せないって、感情が丸出しだよ」


 「真司の話を聞いてると、正義じゃなくて、


やりたくてもやれないことへの嫉妬心に聞こえるわよ」


 「そうだと思っているからだよ。


 衝動殺人みたいなものは、別として、他の要因が


絡む案件を解す余裕なんて、あいつらにないさ。


 ドラマでも、大抵、その事件を解決するのは、


暇な部署に所属する刑事か、組織からはみ出した刑事


じゃないか…でなければ、無理だよ」


 「ドラマの見過ぎじゃない」


 「見過ぎで結構。何だか、絢香さん救出に燃えてきたぁ」


 「それは、いいけど…。何か、腑に落ちないなぁ」


 「闘志を燃やすときは、巨大な敵を作ることさ」


 「そうだけど…、何か違うんだなぁ」


 「いいじゃないか、やる気のエネルギーになれば」


 「まぁ、いいか。誤った結果を正せるなら」


 「そうだよ、罪が確定してしまえば、覆せない、


それが冤罪の温床。俺たちがどんな怒りを持とうと


誰にも迷惑を掛けないからな。


 でも、冤罪だけは、早期発見、早期修正させなければ」


 「そうね、真実は、良くも悪くもひとつだからね。


 偏見、偏向でねじ曲げさせてはダメだよね」


 「そう言うことさ」


 「うん…、何だか僕、丸め込まれた?」


 「気のせい、気のせい」


 「あのさぁ、真司の友人のほら…あの…


阿笠徹さんのデータはどうするのよ。


 匿名でもいいから、警察に提出すれば…」


 「その手もあるが、まだ、早い。


 今、渡せば、果林と怪しい匂い袋の裏は、


別件として処理され兼ねない。


 捜査班が別物になれば、意思ぼ疎通は


難しいだろうし、互が手柄を競い合って、


繋がるものも、繋がらなくなるかも知れない」


 「それは、不味いわね」


 「ああ」


 「それに、こちらのことを根掘り葉掘り、


嗅がれるのもいい気分じゃないからな」


 「…」


 「取り敢えず、花は、練習だ。


 まずは、相手の懐に潜り込むのが目前の課題だ」


 「そうね、絢香さんを守るためにも、頑張らなきゃ」

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