みんな、みのりんより大きい。

11月末の。



ビクトリーズのファン感謝デーをやった時に、スタジアムに選手が紛れているので見つけた人には特別なサイン入りグッズを差し上げますみたいな企画の時に会った女の子だと思い出した。




他の選手は、警備員とか清掃係とか案内係だったのに、俺は何故かフードコートにあったおでん屋さんに振り分けられて。




しかもその日は結構寒くて、おでんがバカ売れして、この子を含めた2人では回らなくなったから、俺もおでん売りを手伝ったりしたのも思い出した。



パチンコ屋にいた時に、かき氷とかわたあめをお客さんに配ったりしたことを思い出しましたよ。



会ったのはその時の1回だけだが、一生懸命働く姿が好印象だったので言われればすぐに思い出せた。




そして唯一、はじめましての女の子が………。




「…………」




ちょっと気まずそうにして、なんとなくポニテちゃんの背中に隠れるようにして立っていたその子を引っ張り出す。




「君が京香ちゃんだね」




俺が背後から両肩にがっしりと手を置くようにしてそう訊ねると………。



京香ちゃんは少しおっかなびっくり。おののくようにしながらゆっくりと頷いた。




「…………は、はい」




「とりあえず、お店入ろうか。お腹空いちゃったよ」


俺はそう言って、そのままの体勢で京香ちゃんの背中を押すようにして歩き、ファミレスの中に入っていった。







ファミレスに入ると、明るい店員さんがJD5人組とボクちゃんを店内の1番奥。



陽の光がたっぷり入る、Uの字型になった1番大きなテーブル席に案内してくれた。



時刻は午後1時を過ぎたところ。お昼のピークをやや抜けたところではあるが、店内の6割くらいの席が埋まっており、そこかしこから賑やか声が聞こえ店内に響いている。



俺はテーブルの真ん中に陣取り、ポニテちゃんから、おっぱいの大きい順になるように座らせた。




とりあえず、それぞれドリンクだけを注文し、俺はアイスティーにポーションシロップを入れてストローで一口飲んでから話を始めた。




「あの、まあ、早速本題に入るんだけど。……今回はみんながかねてより計画していました卒業旅行の件について集まってもらいました。




およそ2週間ほど前に、そちらのさやかちゃんからだいたいの話は聞かせてもらい、みんなも知っている話だと思うんですが……。




約3年半ぐらいですよね。みんなでコツコツ積み立てていたお金を京香ちゃんが失ってしまったとそういう話なんだけれども……」




俺がそう話を切り出すと、やはりそう触れられたかと、端に座る京香ちゃんの目が、ゾッとするくらい危機迫るものになった。






とっても興奮しますわ。










今日の朝、起きた頃までは、お金だけのちのち返してもらえることだけを伝える形にしようとかとも思った。



けれど、ファミレスの前でみんなの顔を見た時に、これから社会に出ていく彼女達に少しでも何か学べるものがあればと思い、俺は知った全てを告げることにした。




京香ちゃんのそのゾッとするような目も、その元カレとの関係というか、なにがその間にあったかを友達の前で公開されてしまう。



というような感情からくるものだとすぐに分かったが、本当の友達ならばどうしてみんなで積み立てていたお金が失ってしまったのかを知るべきであると、俺が勝手に判断し俺は話を進める。




すると、京香ちゃんはすぐにこらえようとするも、溢れた涙を流した。




彼氏がギャンブルによる借金があること。



京香ちゃんの住むアパートに居座り、金銭を要求してきたこと。




なかなかお金を返してもらえずに、ズルズルと貸し続けてしまったこと。




1つ1つが明らかになる度に、京香ちゃんはただひたすらに、ごめんなさい、ごめんなさいと、他の4人に向かって、頭を下げ続けながら涙を流していた。



俺の隣に座るポニテちゃんも。気付けば、アミちゃんや綾子ちゃんも。テーブルの紙ナプキンがなくなってしまうんじゃないかというくらいに、みんなぼろぼろと涙を流していた。



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