本当は、ポニテちゃんのおっきなほっぺたをぷにぷにしたいけどね。ポチ付きのやつ。

「えっ、今の真似って新井さんですよね!?」




「絶対そう」






「あんたなの…………?」







「さあ、どうかしら」





とか言いながら。、俺はCMの間、みのりんのほっぺたをぷにぷにしながらとぼけていた。




そしてやがてCMが開けて、コーナーが復帰すると、こたつを飛び出した3人娘はテレビに釘付けになる。



画面が非常に見にくい。





その代わりに、3人分のうなじがこちらを向いている。





「いやー、彼にはとにかく打たれましたね。………そんなにたくさん対戦はしてないと思うんですけど、打たれた記憶しかないですね。ルーキーとは思えないですね」





「すごいですよね。どこのコースに投げてもバットに当てられてしまうんで、投げにくかったです。ストレートを投げても変化球を投げても上手く対応されてしまう印象でした」





「自信のある変化球とか投げるんですけど、空振りが取れないんですよね。それで投げるボールが無くなって、気付けば得意なコースに投げてしまっているという感じっすね」






北海道フライヤーズで14勝を挙げたルーキーピッチャー。東京スカイスターズで13勝。最優秀防御率投手。最多奪三振投手。




が、揃って俺を嫌なバッターだという。





それが心地よく、それを見た3人娘の初々しいような反応もくすぐったい。




そして最後に、平柳君がインタビューに答えている。





「1人だけちょっと別のところにいますよね。打率4割ですからね。自分じゃ一生かかっても無理です。


でも、彼が出て来てから、自分のバッティングも変わりましたね。やっぱり負けたくありませんでしたから。



本当に彼から色々学びましたね。低めの変化球の見極め方とか、アウトコースの対応の仕方とか。多分、今シーズンの自分の成績が良かったのは彼のおかげですね。やっぱりバッターとして高い打率は目指していきたいところですので。



この前のアジアベースボールカップで一緒にやった時は、彼がバッティング練習している時は全部チェックしてましたね。






ビクトリーズの新井さんですね。1位はダントツで。みんなそうなんじゃないですかね」







平柳君がそう答えると、他の選手が同じように俺の名前を口にする映像がいくつも流れた。








「バットコントロール部門の映えある第1位は、北関東ビクトリーズの新井時人でした。今シーズンは、規定打席届かずも、放った142本のヒットは、東日本リーグのルーキー右打者としては、あのミスタープロ野球に次ぐ歴代2位。打率も4割1分2厘という驚異の数字をマークしました」





俺がレフトにライト前にセンター前にとヒットを放ち、1塁ベース上でベンチに向かって、大きくガッツポーズをする映像が写し出された。






テレビ画面は平柳君のインタビューから、水嵩アナと俺が白い壁を背にして並ぶ場面になった。




ビクトリーズスタジアムの1塁ベンチ裏で撮影したやつだ。その映像を3人娘が食い入るように見ているとなると、なんだか変な気持ちになる。




「新井選手、おめでとうございます!! 見事今年の100分の1アンケートのバットコントロール部門1位に選ばれました!おめでとうございます!!」




と、水嵩アナがニコニコしながらゆっくりと丁寧に俺へトロフィーを渡す。



僅かに互いの指先がふれあう。



みのりんの眉間にシワが寄る。




「新井選手には、64人の選手からの投票がありまして、2以下の選手達を大きく引き離しましての、ダントツの1位獲得となりました」


「ありがとうございます。自分がまさかこんな賞をもらえるなんて思ってなかったんでめっちゃ嬉しいです」





「なるほど。来シーズンこそ、規定打席を到達しての打率4割期待するファンも多いと思いますが」






「まあ、打率4割というのはね、果てなき夢になるかと思いますけど。それより今年はチームとしてずっと悔しい思いをしてきたので、来シーズンもチームの勝利に貢献して、その結果、打率4割に挑戦出来ればいいかなと思います」



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