お胸に何か入れてるね?

たまには外食と洒落込んで、美味しい料理とお酒を満喫して、いい具合に気持ちよく家路に就いていると、ギャル美が突然ぐずり出した。



「ちょっとー、おんぶしてー!」




と、俺の買ったばかりである青色のライトダウンにしがみつく。




「マイちゃん、引っ張らないでよ。タクシーじゃなくて、みんなで歩いて帰ろうって言ったのはマイちゃんでしょ」




俺はそう10分前の彼女の言葉を使い、諭すように言ったが、ギャル美はちょうど目の前にあったバス停のベンチに座り込んでしまった。



まあ、1番飲んでたからなあ。仕事でのストレスや疲れがあったんだろうけど。




そして、それを見て俺もそのベンチに腰を下ろし、みのりんもちゃっかりちょこんと俺のすぐ隣に座る。



ポニテちゃんは元気だ。3人の目の前でおっぱいをぶるんぶるん揺らしながら、ピッチングフォームを披露する。




「ピッチャー、新井! 第1球を投げました!!…………初球打ったー!! ライトへ大きな当たり! 入りましたー! チーム鶴石の柴崎が先頭打者ホームランです!!


あ、これ今日の新井さんの物まねですよ」







「なんとなくそんな気がしたよ」




「打たれた瞬間の振り返り方が特にそっくり」




みのりんもわりと痛烈な一言を披露した。








「背中さすってー………」




「はいはい、このくらいの強さでいいかい?あ、そういえば、さやかちゃん。トレーナー学校の試験はいつだっけ?」






うげー………と苦しむマイちゃんの背中をなでなでしてあげながら、俺はポニテちゃんにそう訊ねた。




ポニテちゃんは投げるまねから、今度は俺の流し打ちするまねに切り換えながら答える。




「来週ですね! 筆記試験と面接なんですけど、合否は12月の20日頃に分かるみたいです!今、絶賛猛勉強中なんですよ!」





「そっか。じゃあ、受かったらまたみんなでお祝いだなー」





「はい、是非!!出来ればお寿司でお願いします!」







「大丈夫? 受かるのか? スポーツトレーナーだから、結構競争率は高いでしょ? 初年度校だし」





「自信はありますよ! 大学受験の時よりも勉強していますし、なんといっても新井さんを育てた経験がありますからね!」





あ、ポニテちゃんは俺を育てた感覚なんだ。




まあ確かに試合後は毎日のようにマッサージしてもらって、大助かりでしたけど。





ポニテちゃんとそんな話をしていると、側の自販機でペットボトルの水を買ってきたみのりんが、マイちゃんの髪の毛を鷲掴みにして、無理やりを顔を上げて、開いた口にペットボトルを突っ込むようにして飲ませていました。






ええ。今日1で面白かったです。








また10分ほど、マイちゃんを介護しながらその場で駄弁り、道路の向こう側からバスのライトが見えてきたので、邪魔にならんようにそろそろ帰るかー、という雰囲気になった。





すると、酔っぱらいギャルが………。





「あんたー、おんぶしてー」





と、駄々をこねる。







「えー、めんどくさいなあ」







「めんどくさいってなによ! ケチ!!」





ちょっともったいぶろうとしただけなのに、ギャル美はあっさり拗ねた。





するとそれを見ていたポニテちゃんがベンチに座るギャル美の前にしゃがみ込む。






「私が代わりにおんぶしてあげますよ!」







一瞬ギャル美は、あんたじゃ意味ないのに………。みたいな顔を浮かべたが、ポニテちゃんに悟られる前に、笑顔でポニテちゃんの首に腕を回す。





「みのり宅までヨロシクー!」





「かしこまりました!」






ポニテちゃんはギャル美をガッチリ背負うと、たいした踏ん張る様子もなくその場からスクッと立ち上がり歩き始めた。





さすがはスポーツトレーナー志望の子。なかなかのパワーだ。






そう感心しながら、俺もベンチから立ち上がると、みのりんが俺の服をそっとつまむ。







「新井くん」







「なに?」









「おんぶ」







少し視線を逸らしながらそう呟いたみのりん。



バスのライトに照らされてさらに白くした彼女の頬だけが、俺の方を向いていた。








「はー!山吹さん、ただいまー!」




「おかえりー、新井くん」





カギを受け取り、ガチャリと玄関のドアを開けると、背中におぶさっていたみのりんがそう上機嫌に返事をした。




そして、背中からスタッと降りたみのりんは、同じくポニテちゃんの背中から降りたギャル美を多少ながら脱ぎ脱ぎさせて、リビング横の部屋に置かれたみのりんベッドに放り投げた。


わりかし、親友の扱い方がぞんざい。



「みのりさんて、たまに結構豪快ですよね」




と呟いたポニテちゃんの横をぐっと親指を立てながらすれ違うようにして、今度は浴室に向かったみのりんはお風呂を沸かし始める。






「新井くんもお風呂入る?」






「いや、自分の部屋でシャワー浴びるから大丈夫よ」



「そう。それじゃあ、さやちゃん。先に入っちゃって」


「りょーかいであります!」




俺はすぐ隣の自分の部屋に戻った。


もちろん、誰とナニがあるか分からないので一応入念に体を磨くように洗い、勝負下着である真っピンクなボクサーパンツを履いて、黒のスウェットにも着替えてみのりんの部屋に戻った。



するとちょうどポニテちゃんがみのりんよりも先にお風呂に入ろうとするところ。




やあと声を掛けただけなのに、ものすごい恐い顔で睨まれた。





「さやかちゃん。まさか、俺を信用していないのかね」






「信用とかそういうことじゃなく、こういう時の新井さんには少し軽蔑しているくらいです」








ひどいわ。


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