日本、ヤバくない?
「バッターは3番、7回に同点ホームランを放った下林。フルカウントから第6球!………低めワンバウンド空振り三振!!3アウトチェンジ!
アジアベースボールカップ2017優勝決定戦、9回終わって1ー1同点、両者譲らず!試合はタイブレーク方式の延長戦に入ります!!」
また下林君が2打席連続でガツーンといってくれるのを期待したけど、ここはあえなく三振。
アジアなんちゃらカップとかいう、わりと沢山のお客さんも入った、ちゃんとした大会っぽいけど、1試合の目安時間や、水道橋ドームの使用時間の関係から延長戦に入ったら即、タイブレークに移行することになっていた。
10回表、韓国の攻撃が始まる前に、ベンチの中で軽くミーティングをして、タイブレークに関しての確認作業が改めて行われた。
俺もベンチ裏での素振りなどを中断して、その輪に加わる。
もちろん大会が始まる前に何度もそのシミュレーションはしていたのだが改めて。
それが解散した後、選手達が守備に向かう時にも、首脳陣にスコアラーが混じって、色々と話し合いが行われていた。
その結果………。
「新井! 8番の齊藤まで回ったら、代打に出すから準備しとけよ!!」
「サー、イエッサー!!」
そんな感じになった。
「さあ、10回表。ノーアウトランナー1、2塁という場面から始まるタイブレーク。この大会初めての延長戦、タイブレークになりました。大原さん。韓国は9番という打順になりますが、このタイブレークをどう戦うべきでしょうか」
「ランナーがね、もう2人いるわけですけど、これはもう極端な話、いないものだと考えていいでしょうね。1つ1つのアウトを確実に取っていく。
日本は先に守るわけですけど、下手に1点もやらないという考え方は逆に大量失点に繋がりますから、無駄な走者を許さずに、最低でも2点以内に抑えたいところですね」
「なるほど。……そして日本のマウンドには、岡屋が上がりました。福岡ハードバンクスで今シーズンは主に中継ぎを任された22歳の岡屋です」
「岡屋君には落ちるボールがありますのでね。タイブレークに入って、三振の取れる確率の高いピッチャーを日本ベンチは起用してきたということでしょうね」
「ええ。………その岡屋、セットポジションから第1球を投げました! ………打った! 打球は三遊間!
サード青竹が飛び付く!…………も、届かないー! 打球はレフト前! ……2塁ランナーは3塁を回った!……いや、止まりました、止まりました!!」
「韓国、9番のパクの当たりは三遊間を破るレフト前ヒット! レフトを守る齊藤が本塁へいいボールを返しました! ……ノーアウト満塁となります!」
「キャッチャーの浦野君は外に構えたんですが、少し真ん中に入りましたね。バッターもかなり思い切り振ってきましたよ。バントもあるかなと思っていたんですが……」
「バッターは1番のソンに回るところ。まずは日本、アウトが1つ欲しい場面です。守る日本は、前進守備ではありません。ファーストの柿山もベースまで下がりました」
ベンチ裏で素振りをしながらも、すぐ側にモニターがあるのでついついそちらを見てしまう。
9番バッターにヒットを打たれて満塁。1番バッターを迎えて2ボール1ストライクとなり、ストライクを投げないといけない場面。
サインを出してピッチャーの岡屋君がセットポジションに入り、キャッチャーの浦野君がすっと左バッターの内側にミットを構える。
その構えた通りのコースに岡屋君はストレートを投げ込んだ。
バッターは窮屈なバッティング。
打球は詰まって高いバウンド。ピッチャーとファーストの間に弾む。
カメラが切り替わり、1塁側スタンドからの角度に。
その瞬間跳ねる打球を間にして、ピッチャーの岡屋君とファーストの柿山が一瞬見合ってしまった。
1番連携が難しいピッチャーとファーストの間。しかもそこに高く跳ね上がった打球。
打球のコースや跳ね上がった先が、どっちかはっきりしていれば問題ないんだけど、どっちも処理出来て、処理しなかった方がもれなくベースカバーに回らなければならないといういやらしめ。
ファーストが捕るのか、ピッチャーが処理するのかそれを察しようとした2人の出足が揃って、その場でピタッと動きが止まる形になった。
その間に打球は高い位置から落ち始め、ファーストの柿山君がヤバいと焦りながら、改めて打球に向かってダッシュし直す。
岡屋君は一瞬打球に行きかけた足を方向転換して、1塁ベースに向かって走り出す。
その結果………。
「セーフ!!」
韓国のバッターランナーが1塁にヘッドスライディング。
1塁ベース付近のアンツーカーが舞い上がり、その向こうで審判おじさんの腕が広がる。
柿山君からボールをもらった岡屋君がベースに入ろうとしたが、間に合わず。
記録はファーストへの内野安打となり、韓国に勝ち越し点を許した。
しかもまたノーアウト満塁。
これはヤバい。
タイムがかかり、1塁ベンチからあわててピッチングコーチが現れて内野陣がピッチャーマウンドに集まった。
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