台湾戦、総括!

結局、お立ち台には今日の俺に比べたらそれほどである平柳君が、そのルックスと人気で足りない分をカバーしたヒーローインタビューで最後に明日も勝ちます!


と、そう宣言し、スタンドを盛り上げて、無事開幕戦はなんとかいい形で終わることが出来た。



「よーし。もうバスに乗り込む時間だ。とりあえず今日は終わりにしよう」



マッサージおじさんはそう言って、最後に謎の固いめのクリームを俺の腰に塗りたくった。



そんなタイミングで………。



「おーい、新井。どうだ、具合は?」



「あ、お疲れ様です」



稲木監督が様子見に現れた。



マッサージルームのドアを閉めると、心配そうな表情で、スラパン1丁でベッドに腰かける俺のことを見下ろす。



「大丈夫か? まだ痛いか?」



「全然大丈夫っすよ。明日も遠慮なくスタメンで使って下さい」



俺は親指をぐっと立ててウインクしながそう答えたのだが、俺の視界ギリギリのところで、マッサージおじさんが稲木監督に向かって首を横に振った。



稲木監督はそれを見ながら少し考えるしぐさをして………。



「無理しなくていいよ。ここでお前を使ってさらに悪化させたら、萩山さんに殺されるから」



稲木監督は、ビクトリーズの監督である萩山監督の名前を出して、説得するように俺にそう言った。



稲木監督は、萩山監督の大学時代の後輩だったなあ、そう言えば………。



まあ、正直親善試合みたいなものだし、確かに無理しても仕方ないかしら。




稲木監督が出ていった後、俺は自分に言い聞かせるようにそう考えることにした。









台湾  002 001 000 3



日本  201 002 000 5



勝ち投手 酒井 1勝 負け投手 チャン 1敗




本塁打



日本 新井1号ソロ(3回裏)



台湾 なし



MVP賞 新井(日本)



3安打1本塁打4打点の活躍でチームを勝利に導いた。




日本が開幕戦で台湾に勝利。日本は初回、ランナー2塁のチャンスで新井が右翼へタイムリーツーベースを放ち先制すると、4番棚橋の犠牲フライで追加点を挙げた。


同点に追い付かれた3回には、新井のホームランで勝ち越すと、再び同点となった6回には新井が今度は値千金の2点タイムリースリーベースを放ち、再び勝ち越しに成功した。



日本先発の添田が4回2失点と粘りのピッチング。3番手の酒井が勝利投手となった。


敗れた台湾は、期待された先発のチャンが先制を許すなど、投手陣が要所で粘りきれず、注目された打線も6回以降無安打と沈黙した。




日本代表は、日本シリーズMVPの東京スカイスターズ平柳と打率4割を記録した北関東ビクトリーズの新井の1、2番が機能した。




初回にヒットを放った平柳がすかさず盗塁を決め、新井がバットを折られながらもしぶといタイムリー。稲木監督の思惑通りに、1、2番の2人がいきなり先制点をもたらし、日本代表に勢いをつけた。





勝利した日本代表稲木監督の談話。



「まずは初戦勝てたことにほっとしている。思っていたよりも台湾のピッチャー陣がよく、簡単には点が取れなかった。しかし、打線の頭(1番平柳2番新井)が上手く機能してくれたので、先制して、点を取られても、すぐに取り返せたのが大きい。


先発の添田は開幕戦の難しい先発だったが、力は出してくれたと思う。失点はだいぶ不運が重なったからね。最終戦となる韓国戦に中継ぎとしてまた投げてもらうつもり。リリーフ陣には満足している。


初めてやる選手も多かったけど、上手くコミュニケーションは取れていたのではないかなと。


この大会では出来る限り全員の選手に出場機会を与えたいので、明日はまた違った形のスタメンや投手起用になるかもしれない」




Q新井が三振した後に途中交代したが………?



「残念ながら少しどこか痛めたかもしれない。今日は大活躍だったからね。出てもらいたいが無理もさせられないしね。……明日以降は様子見しながら使う。代打でという形もあるかもしれない」









敗戦した台湾代表監督の談話。



「やはり日本は全てにおいてレベルが高い。なんとか同点で終盤に持ち込めればと考えていたが……。6回に勝ち越された後、チャンスを作れなかったのが残念」





先発した日本代表添田投手の談話。



「今日の調子自体はよくはなかった。それでも試合は作らなくちゃいけないと少し力んだ部分が失点に繋がってしまった。特に点をもらった直後に失点してしまい、チームに迷惑を掛けてしまった。


周りの選手が僕を盛り上げてくれたのに、早く降板する形になってしまって申し訳ない次回登板のチャンスがあればしっかり挽回していきたい」




勝利投手になった酒井投手。



「目の前のバッターを抑えることだけを考えた。とにかくボールを低めに丁寧に投げるつもりでマウンドに上がった。キャッチャーの浦野とは初めてだったけど、上手く配球してくれたことに感謝したい」




1番打者として2安打の平柳内野手。



「とにかくチームを勢いづけるバッティングをしたかった。次の新井さんに繋げればなんとかしてくれると信じていたし、その通りにチャンスを生かしてくれたので自分もノッていくことが出来た。気持ちに余裕が出来ていい形で打席に入れている」





3安打1本塁打。ゲームMVPに選ばれた新井外野手。



「初めての代表だったが、周りが盛り上げてくれたのでプレーしやすかった。今日の成績は出来すぎだけど次の試合もチームに貢献出来るように頑張ります」



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