おい、稲木!バントさせる場面ちゃうやろ!
今日はアマチュア選手との強化試合だからなあ。
俺だってキャリア1年目であんまり実績もないし、代表初招集だから、スタメンはないだろうなあと思っていたから、最後の最後の9番レフトで自分の名前が呼ばれるとは思わなかった。
びっくりし過ぎて、世界一高い山の名前を叫んでしまった。
そのくらい気持ちが天に聳えるように高揚していると考えて頂いて問題ない。あと、伸びしろばかり若い選手達には、そのくらい高い志を持って欲しいというメッセージもある。
「みんな、相手には遠慮しないで、どんどん積極的に行こう!!」
スタメンを読み上げた稲木監督が最後にそう激を飛ばして選手達がオス! と、気合いを入れて一時解散の流れとなった。
すると、選手の1人が俺の可愛いおケツを触りながらニヤニヤとする。
確か大阪ジャガースに所属する、今日セカンドでスタメンのたいら君だ。敏捷性に優れた広い守備範囲とシュアなバッティングが持ち味の内野手。
「新井さん。あれはちょっとウケなかったですね。ドンマイです」
「な! 微妙にそういう空気じゃなかったね」
「俺は好きですよ、ああいうの」
「じゃあ、笑えよ、ゴラァ!」
と、俺はゆっくりの膝蹴りを食らわせる。
「アハハ! すみません!」
しかし、その後も……。
「いやー、俺もよかったと思いますけどねえ」
「結構面白かったっすよ」
「チョモランマってなんすか?」
などと、25歳以下の若い選手達がコミュニケーションを取りにきてくれた。
これが何よりありがたく、嬉しかった。
ビクトリーズの選手が他にはおらず、ルーキーの身である自分としては、いくらみんな年下の選手とはいえ、ちょっとした疎外感は否めなかった。
ロッカールームでも、練習中でも、居心地のいい自分のチームの時とは気持ちの入り方や精神状態が不安定な部分があり、どこか地に足が着いていないふわふわした状態だった。
ふわふわと言えば、ギャル美のおっぱいはふんわり系バストであり、控えめみのりんは柔らか重視の感度良好なふにふに系。
逆にポニテちゃんは、重厚感のあるもっちり系であることが俺調べで判明している。
もちろん、触らせてもらったわけではないが、多少ガードが緩めになるそれぞれの部屋着越しでなんとか分かる次第であります。
宮森ちゃん? 知りません。
つまり何が言いたいかというと、このままいつもとは違う感じで試合に入るのはちょっと不安だったので、それを解きほぐしてくれたチームメイト達に感謝したいというそんなお話であります。
「プレイ!!」
という球審の一言で大学生・社会人選抜チームとの試合が始まった。
日本代表は後攻。まずはレフトの守備に就いた俺。
うちの先発ピッチャーは、今試合をしている愛知ドームをフランチャイズとする、愛知ドラゴンスの若きエース添田。
高卒4年目の22歳。今シーズン12勝を挙げた本格化右腕。
最速152キロのストレートに落差のあるシンカーとキレ味鋭いカットボールが武器。若手の日本代表となれば1番手に名前が上がるピッチャー。
その添田君が相手するのはアマチュア最高峰の選手達。
大学春期リーグの首位打者。リーグ優勝チームの4番。都市対抗野球で3本塁打を放った長距離砲。
そんなプロ予備軍と言っても余る実力の選手相手に、ここは貫禄のピッチング。
三振2つと内野フライで簡単にスリーアウトチェンジとなった。
対するうちも、アマチュア最強左腕と言われているピッチャーの勢いあるピッチングにアウトを積み重ね、試合は緊迫したゼロ行進。
しかし、3回。
内野安打とフォアボールで、ノーアウト1、2塁のチャンスで、バッター俺という場面。
ベンチからのサインは………バント。
迷うことなきバント。
食いぎみのバント。
釘を刺すようにバント。
どっからどう見てもバントのサインだった。
そう恨み節に言っても無視するわけにもいかないし、失敗しようものならもうスタメンは無くなるんじゃないかという勝手な雰囲気を感じていくスタイル。
セットポジションから足を上げてボールを投げたアマチュア最強左腕。
ギュルンギュルンと唸りをあげるようなストレートがインコース気味にやってきて、それをコツン。
バットに当たった瞬間、威力が十分に伝わるくらいの衝撃。しかし、その勢いを殺しつつ、差し出したバットの芯にボールは当たった。
新調したばかりのピンクバントで、両足をピッチャーに向かって平行に向けて丁寧にコツンとしてやったら、ボールは3塁線に沿うようにしてうまく転がった。
やはりフリーバッティングでバントの練習をしておいて正解だったね。
100点満点中95点のスーパーバント。
自分がセーフになったら100点満点と、上にはそれしかないくらいのハイパーバント。
もう血眼にしてバントシフトを敷いてきた相手チームも、サードが前進してきて拾い上げるしか残された選択肢はなく、俺が1塁でアウトになる間に、2人のランナーが悠々先の塁に進んで俺の第1打席が終わった。
俺がゆっくりと走りながらベンチに戻ると、みんなが立ち上がって出迎える。
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