幕間 第二波のはじまり 机に靴のまま足を載せるとは地面のばい菌を食卓にかけるということ

 今回は

 ■机に靴のまま足を載せるとは地面のばい菌を食卓にかけるということ

 という食事中の方によろしくないタイトルですが、イタリアではなみずの付いたハンカチを使いまわすのと同じレベルで、アメリカでコロナが流行している根本原因ってこれじゃないかという部分だったため、敢えてタイトルにしました。

 なお本来のタイトルは


 ■番外 大臣VS地球産ゾンビ でしたが戦いでは無かったので変更しました。


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「かんぱーい」


 ここは城下町の酒場。

 普段は町の住人たちでにぎわう庶民の社交場だが、本日は貸し切りとなっている。


「いやあ、まさか侍女たちがゾンビ化するとは思わなかったな」

 本日宮廷内でゾンビ討伐に尽力した兵士たちの打ち上げが行われているためだ。


「ちょっと!これから食事だってのに、

 泥だらけの鎧靴をだらしなくテーブルの上に載せている兵士の一人に女給が怒る。

「いーじゃねぇかよ。今日は一日中戦いづめで疲れてるんだからよぉ」

 と恨みがましく抗議する兵士。


 なお日本人では『罰当たり』というか、汚いから忌避されるテーブルへの足のせだが、。(筆者はアメリカに行ったことはありません。


『アメリカでコロナウィルスが流行しているのは土足文化が原因ではないか?』と思って調べたら、どうやら彼らは地面というのは『それほど汚くない』と考えていたようだ。

 それどころか、靴下や素足などの『汗の付いた足』の方が汚いと思っていたようで、これが土足文化の理由のようである。

 、ベッドまでも靴のまま上がったりすると現地在住の方のブログに書かれていた。

 なのでそういう欧米文化に近いこの世界で

「本日の勝利に乾杯!」

 と靴のままでテーブルの上に乗る人間がいても、そこまで咎められる人間はいないようだった。(※本作はフィクションです


「おーい!ビールだビール!」

 テーブルの上で動く靴と泥。

 その土が落ちたテーブルに力強くたたきつけられるビールジョッキ。

 舞い上がる埃と泥が料理にかかる。


 魔術師が言う『』による『』の出来上がりである。


 だが、そんな食べ物を食べていても彼らは腹痛を起こさなかったし、特に問題もなかった。

 まあ、今回はそれ以上にヒドいゾンビウィルス付きの血液の固まったものや、ゾンビの細胞がトッピングされているのだが…。


「しかしよぉ。今回のゾンビ、体はもろいけど力は強かったなぁ」

 まあ、それに勝った俺はもっと強いけどな。という自慢話から、兵士たちは自分の手柄をアピールしあう。

「ああ、。傷口がまだ痛むぜ」

 と負傷をアピールする兵士。すると同僚の女性兵士が傷口に口を付けて

「舐めておけば大丈夫よ」

 といたずらっぽく笑った。


 はい、ここでこのカップルは感染しました。

 パリピなリア充 死すべし。情けはない。


 という個人的な感想はさておき、この感染済みの二人は

 これでウイルスが含まれる鍋のできあがりである。

 さらには、

「おい、このエール酒旨いぞ」

「どれどれ」

 と、同じジョッキを回し飲みする。

「こっちの料理も旨いぞ」「確かに旨いな」

 集団で働く職場は味方の団結が重要なので、肌のふれあうスキンシップは必要であり、常識だ。

 兵士たちは肩を組んで騒ぎ、高らかに歌を歌ってつばを料理に飛ばしまくり、互いにゾンビウイルスに感染した唾液を食べた事になる。


 ウイルスにとっては天国のような宴会は朝まで続いた。


「思いきり騒いだもんだな」

 そう言うと料理長は酔っぱらいどもの惨状に眉をひそめる。

 ここで残された料理は調理スタッフがおいしく頂き、店の中にぶちまけられたと捨物は、道に捨てられて野良犬などの餌となる。

 この犬が子供などの顔を舐めれば立派な感染経路の出来上がりであるし、この世界の料理人は手もろくに洗わないので、作られた料理もサラダ類は危険である。


 日本で一時期流行したノロウィルスというのも、このような過程で地面から人の口に入って感染したのではないかと思われる。


 というのも筆者は先日、とある料理店に行ったが「テイクアウトは3時で終了」と言われた厨房で、土足で歩くスタッフの隣を別のスタッフがモップも使わずに雑巾で直接床を拭いている光景を見たからだ。

 このコロナウィルスが流行している2021年2月27日の現代日本で、である。


 見えないものは汚くない。と考える人間は一定以上いるようだ。



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 その日の晩、宮廷でも問題が起こっていた。

 またしても、宮廷でゾンビが現れたのだ。

 今度は城の厨房。料理人達がゾンビとなったのである。

 昼の警備である魔術師は営業終了のため夜の警備ある暗殺者を呼んだのに出てこない。そこで大臣自らが暗殺者を呼び出しに向かったのである。


「おい!暗殺者!出番だぞ!」


 大臣は大声で暗殺者を呼んだ。

 いつもなら影から現れて来るのに今日はなぜか出てこない。

「寝ているのか?それともどこかに行っているのか?」

 そう思っていると、ドアの向こうから何かを叩く音がする。

「何だ?誰かいるのか?」

 人格的に問題のある暗殺者の部屋に忍びこむとは怖いもの知らずだな。

 と思いながらドアを開けると


「AAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!!!!!!」

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


 そこには一体のゾンビがいた。


「あ…暗殺者。貴様もか…何故だ?」

 何故だ?も なにもゾンビの血液なんかなめたら感染して当然である。

 個人的に、アニメや漫画のサディスティック系のキャラの記号で斬った相手の血をなめるというのがあるが、あれは非常に不衛生だと思っていた。

 仮に相手が赤痢やノロウイルスに感染していたら半日後にはトイレに入る羽目になるだろうし、エイズに感染してたら二回目は様々な合併症を引き起こすことになるのではないかと心配である。余計なお世話ですか。そうですか。


「HUUUUUUUUUU」

 クールな口からは涎が垂れ流し、目は完全に白目を剥いている。ナイフなめパフォーマンスの30倍は怖い。

 個人戦力として最強の力を持っていても、ゾンビウイルスには勝てなかったようだ。過酷な修行も血液や抗体まで鍛えられるわけではないのである。


「うわあああああああ!!!!」

 あわてて逃げ出した大臣は死を覚悟した。

 なんと言っても相手は個人戦最強。

 単純に走っても早いし、そうでなくても影から現れるチート能力までもっている。

 常人が彼から逃げるのはチーターから逃げるようなものである。

 だが、


「…………………あれ?」


 一歩、また一歩。

 暗殺者のなれの果てはゆっくりと歩いてくる。


 かつて俊足を誇った二本の足は赤ん坊のようにおぼつかなく、子供でも逃げられそうなスピードで追ってきた。

 これなら逃げられる。そう思った大臣は「ゾンビが出たぞー!!」と叫びながら安全な自室へ急ぐ。

 その途中で何故、暗殺者がゾンビとなったのか、その原因を思いだしていた。


「…そういえば、昼間に暗殺者と会ったときに気になる行動があったな」


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 昼間、魔術師の部屋を訪れた後、暗殺者は大臣を部屋に呼んだ。

 暗殺者は椅子に腰掛けると、ワイルドさを強調するためか

 衛生上の問題もあるが、この姿勢 腰を壊滅的に痛めるので絶対やめた方がよい。

「あの魔術師、腕は良いけどあの性格だけはどうにかならないのか?」

 そういうと暗殺者は大臣に言う。

「こないだ、こんな感じで机に足を載せたらよぉ、風魔法で部屋の外まで吹っ飛ばされたんだよ」


 重さ100kgはあろうかという木製の机ごと吹き飛ばされた暗殺者は「テメェ!なにしやがる!」と怒ろうとしたが

「ファイアーストーム!!!」

 という彼女の呪文の下、火炎魔法で燃え盛る机を見て言葉を失った。


 この机、名工が作った逸品であり相当に高価なものだったからだ。


「お、おい。これ高かったんだろ?何で燃やすんだよ!」

「汚いからよ」

 まさにゴミでも見るかのような目で日本円にして100万はくだらない高価な家具を見下ろしている。

「たかが足を載せただけでそこまでするかよ!嫌がらせか!さすがに俺だって傷つくぞ!」と抗議したが


「……………たかが?」


 まるで、噴火寸前の火山のような目を向けられて暗殺者は恐怖を覚えた。

「私ね。この机、結構気に入ってたの。でももう要らないの。何でか分かる?」

 笑顔で尋ねる彼女の後ろに暗殺者は般若の如き鬼の姿が見えた。

「机に靴のまま足を載せるという事は、地面の糞を食卓に載せると言うこと。あなたは糞入りの餌を私に食べさせたいのかしら?」

 そういうと本当に殺しかねない威力の魔法を手元から発動させる。

「だとしたら、敵よね?敵は殺すしかないでしょう?そんなに早死にしたいのなら遠慮なく苦痛死に協力させて貰うわ」

 と一片の冗談も感じさせない表情で言われた事がある。


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「机に足を載せただけでそこまで言うか?だいたい毎度毎度『クソ』ってあのクソ女は言うけどよお、この靴のどこにクソがあるんだよ?見えねぇじゃねぇか」

 とぼやきながら靴で机を何度もたたく。


 この机はその時、彼女に頼んで買い取ったものだ。

 いまでは暗殺者の足のせ台として立派に活躍している。


『クソはないかもしれないけど泥がボロボロ落ちとるんだがな』と大臣は思ったが口にはしなかった。


「だいたい、汚ねぇもんから逃げてばかりいたら生きていけねぇだろ。こちとら戦場で泥まみれになったり何日も風呂に入らずに戦っているのに、あのクソ女は口ばっかりじゃねぇか。ちっとは働けってんだよ」

 そういいながら机の上に置かれた干し肉を噛むと手で引っ張ってちぎる。

 その肉に暗殺者の靴の泥が多少付いてたのをみた大臣はさすがに嫌悪感を覚えたが顔には出さなかった。


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 大臣はそんな会話を思い出しながら思った。


「…もしかして、


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 はい、今回大臣さんが衛生概念と言うものに少し気が付きました。

 ウイルスの知識のない時代に悪魔とか神の祟りでなく別の原因を思いつくと言うのは凄い事で、大臣の(悪)知能の高さがうかがえますね。


 余談ですが筆者の職場にもアメリカナイズされた風習にあこがれた後輩が靴のまま机に足を載せて休憩していました。

 時期が時期ならノロウイルス発症する原因になるので絶対辞めた方がよいです。

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