第8話 土足で家に入る事は、犬の糞のかけらを家に持ち込む事

 防疫で土足厳禁はかなりの効果があるようなので、敢えて過激なタイトルを載せてみました。

 ノロウイルスとかも地面に落ちたゲロを踏んで、それが口の中に入った可能性がないともいえませんし…。


 あ、今回は魔術師とゾンビの戦いです。

 サブタイトルは『ファンタジー世界のチート。 魔術師 VS 地球産ゾンビ』でした。


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「ここはまだ靴を脱がないと入れないのかよ」

 暗殺者が悪態をつく。


 宮廷の中でもそこは特異な部屋だった。

 土足が当たり前のこの世界で、この部屋の主は絶対に靴を脱ぐように指示する。

 この部屋の改装で大工が土足のまま床板を踏むことは絶対に許さず、それが破られたときは床板すべてを廃棄させた。


 そのような我儘を通すだけの実力が彼女にはある。

 部屋の主は女性。

 セミロングの髪に眼鏡を付けた彼女はこの国でも最上級の魔術師だった。

 なので彼女の事は魔術師と呼ぼう。


 前にそうとは知らずに土足で上がろうとした暗殺者は風魔法で吹き飛ばされて魔法の矢で30発ほど追撃を受けたので、流石にしたがうようになった。


 部屋の主は冷ややかに暗殺者を見ると

「何度言ったらわかるの?クソ。コートを脱がずに家にはいるのは粉末化した糞を持ち込む事よ。あなたは私の部屋をクソまみれにしたいのかしら?」と言った。


 彼女は重度の潔癖性だったのである。


「おまえ、顔だけはきれいなんだからクソクソ言うなよ」

 と言いながらも居心地悪そうに大人しく待機する。

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「…とまあ、以上が今回戦った異世界からの召還者の顛末だ」

 と暗殺者は事件の顛末を話す。

 この宮廷、夜間は暗殺者、昼間は魔術師が警備の統括者となっているので重要事項がある場合は引き継ぎをする必要があるためだ。


「ふうん。特に魔力の反応もないのにゾンビ化した…と」

「ああ、ナイフで切っても切れない服を着てたけど、耐久度は普通のゾンビと同じ。攻撃力だけは高いって感じだな」

 ウイルスを知らない暗殺者は見たままを話す。

それを聞いて魔術師は眉をひそめ

「もしかして、あなた。そんな生き物と戦ったのにそのままの服で来てたりしないわよね?」

「え?そのまま来たけど」

 その瞬間、暗殺者はドアの向こうまで吹き飛ばされた。


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 宮廷の奥で、そのようなやり取りがされていたが、庭の方では戦いが繰り広げられていた。

 宮廷で働くゾンビ化した女性たちと兵士たちが戦っていたのだ。


「密集陣を組め!!敵を近づけさせるな!!!」


 障害物のない庭で、勝手気ままに動くゾンビとの戦いは分が悪い。

 突出した重装歩兵3人は10体のゾンビに囲まれて身動きがとれなくなった。

 生身の体では鉄の鎧を攻撃できない。

 どれだけゾンビの数が多くてもコンクリートの壁を破壊して入ってくるゾンビはいない。


 とはいえ、鉄板一枚隔てて凶悪なライオンの如きゾンビに迫られて平気な人間などもいない。

「AAAAAAAAA!!!!!」

 大口を開けてまるで熱いキスでもするかのように兜の上からかじりつこうとする若い女性のゾンビ。

 生前の状態なら男性である重装歩兵は喜んで兜を脱ぎ、彼女の求めに応えただろう。

 だが、口が血だらけの補食者と交わされるのは金属籠手と牙の応酬だ。

 歩兵はなんとかゾンビを引きはがそうとするが、暴徒と化したゾンビは一向に離れる様子もない。

 その間にゾンビ達は城の職員達を襲い始めた。


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「こいつ!女のゾンビのくせに何でここまで強いんだ!」

 ゾンビ退治に駆り出された騎士団長が叫ぶ。

 ゾンビによって彼の部下2人が喰われてしまった。


 兵士を一人育てるのには時間がかかる。

 特に80kgを超えるような大鎧を装着するには年間単位での訓練と、肉体づくりのための食料が必要だ。

 そんなプロが戦闘訓練も受けていない女性30人によって殺害されたのだ。

「こいつはただのゾンビじゃない」

 そう思いながら少しずつ押されていく騎士団達。


 このまま、邪悪な異世界人たちはゾンビにやられてしまうのか?

 そう思われた時――


「こんなゾンビごときに、だらしない」


 一人の女性が現れた。


 大きなつばつきの黒帽子にゆったりとしたローブ。

 右手には大きな杖を持っている魔術師だ。


「危ない!!!」


 ゾンビに囲まれて身動きのとれない騎士団が叫ぶ。

 魔術師に反応して6人のゾンビが襲いかかってきたのだ。


 だが


「遅い。ウインドカッター!」


 杖を一振りすると、風が刃となってゾンビの足を切断した。


「火は効果なし。刃物も効かないって話だったけど、風魔法は効果あるみたいね」

 と足を切られて歩けなくなったゾンビを見ながら魔術師は言う。


「右から20…いや、30体が来ます!!!」

 そんな彼女に兵士が叫ぶ。

 重装歩兵でも手を焼いた1.8tの人間の津波だ。


 この世界の魔法では、呪文の詠唱に少し時間がかかる。


 たとえ前列ゾンビの足が切れても、すぐに後列のゾンビが波状攻撃で襲ってくるだろう。


 だが


「切るばかりじゃ、飽きるわね。だったら、足止めしましょう。アイシクルスピアー氷槍群

 その言葉とともに、ゾンビの足下から巨大な氷のつららが丸太杭のように飛び出し、ゾンビの足を凍結させ、後続のゾンビを串刺しにした。

「どんなに数が多くても、体を貫かれて地面に足が届かなければ体当たりもできないわね」

 と、これから殺害する予定のモルモットでも観察するような目で見上げる。

 その瞳に、元同族への憐憫はない。


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 ファンタジー世界の魔法使いは設定によってチートとなる。

 この世界の魔術師は、弓矢銃器を使わずに正確な遠距離攻撃ができるマジックアローが使用可能。

 また、発火石や燃料を用いなくても大型の火炎を操れ、熱交換システムなしで冷気まで使いこなせる。


 これを現代の科学で再現するとなると

 風の力で敵を切断する魔法は、超高圧をかけた水などの代替物を使わないとならず、それさえも数トン単位の大型装置が必要となる。

 また、氷のつららによる障害物の構築など人力では不可能に近い。

 仮に丸太杭で再現したとしても10人の工作兵が縄で縛り固定するのに10分はかかるだろう。

 それを地面から射出するなど考えただけでも面倒な下準備が必要だ。

 それを『たった一人で』『数秒で』実現可能なのが(この世界での)ファンタジー世界の魔術師なのである。


 まさに一人軍隊。

 一人建築会社。


 彼女一人でだいたいの土木工事は『もう、あいつひとりでいいんじゃないかな?』状態となるだろう。


 後ろから襲いかかろうとしたゾンビ達は爆破魔法でバラバラに吹き飛ばされた。

 横から来たゾンビは瞬間的に掘られた穴に落ちて登れなくなった。


 魔術師は、氷に胴体を貫かれ身動きできないゾンビの前に立つ。

 目の前に人参をぶら下げられたロバのようにゾンビは魔術師にかみつこうとする。

「GAAAAAAAAAA!!!GAAAAAAAAAA!!!」

 生前は美しかったであろう侍女の面影が少し残るゾンビに指を向けると

「ウインドカッター」

 魔術師は何の躊躇もなくゾンビの首を切った。

 氷に貫かれてもなお活動していた胴体は、しばらくけいれんした後に停止した。

「へぇ。このゾンビは頭を切っただけで動きが止まるのね。力は強いくせに意外と貧弱ね」

 と魔術師は観察する。

 映画にでてくるゾンビは頭部を破壊すると動かなくなるものが多いが、術師によって体を操られているファンタジーゾンビは頭が無くても戦えるものが多い。


 こちらに来る前に可能な限り情報を集めていた魔術師は、その情報が正しいか実際に実験をしていたのだ。


「みんな。このゾンビは頭を潰せば動きが止まるタイプみたいよ。」

 その情報を元に、剣から槍に武器を持ちかえた兵士たちは密集陣計でゾンビを串刺しにし、残った兵が頭部を破壊するという作戦に切り替えた。


 かくしてゾンビの群は駆除できた。


 ■魔術師 VS 地球産ゾンビ


 勝者 魔術師 決まり手 チート魔法


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 シミュレーションRPGとかでもマップ兵器使える方が強いと思います。

 水魔法が使えれば砂漠でも生き残れそうだし、異世界に行ったら絶対魔法使いになりたいですね。

 

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