第7話 重装歩兵VS地球産ゾンビ×200 ウイルス対策は感染者を増やさないことが大事 体

 ウイルスと細菌の違いは、

『細菌は自分で増えることが出来る』が、

『ウイルスは

 という点だろう。


 細菌は細胞質という小器官を持っており、自分でエネルギーを作れるので独自に増殖できる。

 これに対して、ウイルスは細胞質を持たないので、のだ。

 他人の建物を壊して、勝手に自分の家に作り替えるようなもので、材料がなければ増えることはできない。

 増殖が出来なければコロナウイルスなどはエアロゾル気体中に浮遊する微小な液体で3時間、 プラスチックやステンレスの表面では 72 時間(=3日)まで、段ボールの表面では 24 時間以降は生存が確認されなかった。

(参考;厚生省の『新型コロナウイルス感染症に対する感染管理』改訂 2020 年 10 月 2 日 https://www.mhlw.go.jp/content/000678572.pdf)


 つまり、ゾンビウイルスも『』と考えられる。


 だが、生物の中に入ればウイルスは爆発的に増える。

 スタートキーを押しっぱなしにしてしまったコピー機の様に、生物の命が続く限り増殖を続け細胞という細胞をウイルスへと作り替えていくのだ。

 短命のウイルスが長期間人間を悩ませるのは、増殖した次世代が人体を攻撃し続けるからであり、絶えず世代交代する事で種自体を生存させていく。


 なので、感染者が別の人間に感染させなければ最終的に人間は勝つ。


 不可能という点に目をつぶれば…だが。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 ゾンビ化した女官たちの宿舎は情報漏洩防止の観点から城壁の内側、城を出て東のはずれにある。

 ところが、朝になっても誰も出仕をしないので不審に思った施設長が調べた所、堰をきったように200体のゾンビが流れ出てきたというわけだ。


「はやく駆除するように重装歩兵に伝令を出せ!」

 と大臣が命じる。


 ここで一つ問題がある。

 重厚な防御を誇る全身鎧にタワーシールドだが、これは非常に重い。

 階段を登るのも一苦労だし、移動だってのろくなる。


 ゆっくりとそれでも全速力で階段を登る重装歩兵達。

 だが、そこに王宮への侵入に成功したゾンビが襲いかかって来た。

「うわぁ!!!」

 50段の長い階段の半ばまで進んだ所でゾンビの群が顔を出す。

 しかも、段差を認識できないゾンビたちは階段でこけて転がり落ちてくる。

「たっ、退却!いや、間に合わん!総員踏ん張れ!押し返すぞ!」

 

 隊長らしき人間が指令を出すが、足場の悪い階段では踏ん張りも聞かず駆け降りることもできない。

 哀れな重装歩兵たちはダイブしてくるゾンビの群を受け止める形となった。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 大量のゾンビが狭い通路に押し掛けてきた場合どうなるか?

 仮に40人。

 4人が列をなして10列で襲いかかって来た場合でも、平均体重を60kgとすると


・60×40=2400


 約2400kg=2.4t。

 階段を駆け降りる標準サイズの2tトラックを受け止める形となる。

 たかが0.12t×10人の重装歩兵で支えきれる重さではない。


 その結果、女性ゾンビの『全身の骨が押しつぶされるほどの』熱いダイブを歩兵たちは受けることとなった。

 6m高さから3.5tを超える重量物が墜落したことで石畳の床にはクレーターができ、女性ゾンビの30体は複雑骨折で再起不能。10体は無傷。

 下敷きとなった歩兵たちは衝撃に絶えきれず、首の骨が折れたり鎧の中で内臓が破裂した。即死である。


 30体の若い女性に抱きつかれて死亡するというある意味羨ましい死に方ではあるが、そんなのは中の歩兵にとって何の慰めにもならないだろう。

 ただ全身鎧で死んだ事にも良い点があった。


 厚い鎧に守られた彼らはゾンビウイルスに発症しなかった事だ。


 仮に発症したとしても重りをつけた状態ではまともに動けなかっただろうが人間のままで死んだ彼らは、死体を破損させず葬る事を重視するこの世界では幸運だったのかもしれない。


 ■2回戦 重装歩兵VS地球産ゾンビ×200

 結果;相打ち 決まり手;墜落


□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□

 ゾンビの勝ちばかりだとアレなので前回は人間側が勝利しましたが、数の暴力とTPOのわきまえ無さ、永久に動ける事が地球産ゾンビの強さだと思います。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る