第4話 第2戦 闇系暗殺者 VS 地球産ゾンビ

「おやおや、これはやりすぎだね。客人」


 そう言って姿を現したのは暗殺者。召還者が変な動きをした際に殺害する役目の男である。

 暗殺者というと怖そうな人間をイメージするかもしれないが、彼の場合相手を油断させて後ろから刺すタイプなので見た目は穏和そのもの。

 町にいればさわやかなイケメンと称される容姿の持ち主である。


 そうして油断させた所で、さわやかな笑顔で両手両足の健を切り裂き、なぶり殺しにするのが好きなサディストなサイコパスだったりする。

 なので、歴代の召還者の運命もお察ししていただきたい。


「いくよ」

 そう言うと、暗殺者の姿は影に沈み、別の影から現れた。


 暗殺者は気配を消して相手の死角から即死の一撃を与えるのが主な役目である。

 その中でも彼は特別な力を持っていた。

 アニメなどで良くある『影から影へと移動できる能力』である。

 この力で敵の君主は戦争中、常に油断が出来なくなる。

 戦場で指揮を執っていても、食事中も、休憩中も、睡眠中も、休戦するまでは常に警戒を怠れないのだ。

 このおかげで人道的には最悪なこの国が他国から侵攻されもせず、生き残れていると言っても過言ではない。

 アニメとかマンガではよく登場する能力だが、チートすぎるなと筆者は能力内容を分析しててそう思ったくらいだ。

 まあ、このような危険な存在を、裏切る可能性など考えもせずに部下として使役できる能天気な君主など、この国にしかいなかっただけなのだろう。


 初期のゾンビの弱点に移動の鈍重さがある。

 移動手段は二本の足。

 車には追いつけず、多くの仲間でスクラムを組まなければ容易に回り込まれてしまう。

 なので、暗殺者のようにトリッキーな動きで敵を翻弄するタイプには弱いのである。


「ほらほら、こっちだよ」


 前と思ったら後ろ。左と思えば右。

 変幻自在に姿を現し相手を消耗させる戦術だ。しかし

「……驚いた。まるでボクがどこにいるのか、分かってるみたいじゃない」

 目の前の軍人はまだ生きていると思いこんでいる暗殺者は知る由もないが、ゾンビと化した軍人には『自分の身を守ろう』という本能はない。

 そのくせゾンビは何故か生者へ反応する感覚だけはあるので暗殺者のいる場所へ的確に反応するのである。

「だったらここはどうかな?」

 そう言うと暗殺者は軍人の真下に姿を現し、ナイフで足を切り裂いた。だが

「…切れてない?」

 暗殺者のナイフは、軍人の足に傷一つ与えていなかった。鉄をも切断する切れ味抜群のナイフだが防刃服には文字通り刃が立たなかったのである。

 未知のテクノロジーにひるむかと思われたが、暗殺者は「刃物無効の加護でも掛っているのかな?」と素早く思考を切り替えた。

 進んだ科学も魔法の力でだいたい理解できてしまう世界ならではある。

「だったら、こういうのはどうかな?」

 そう言うと、懐から取り出したメイス(鈍器)で両膝、手の甲、あごの五カ所を一瞬にして粉砕した。

 刃物で切れないなら物理的に砕けばよい。

 その判断は正しかった。

「……………………………」

 噛みつきにひっかき、体当たりを封じられ軍人は芋虫のように地面をのたうちまわる。だが、物理的に歩けないので戦力は無いに等しい。


 こうして、ゾンビとの戦いは暗殺者に軍配が挙がった。


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 暗殺者 VS ゾンビ


 勝利;暗殺者(決まり手 四肢粉砕)


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 暗殺者はもがくゾンビを被虐的な目で見下ろして

「何度切っても動けるなんて凄いね。動きは鈍かったけど、そこそこ楽しめたよ」

 と言うと無防備となった軍人の目をナイフで刺した。

 軍人が悲鳴一つあげないのに失望たが、気を取り直して

「ずいぶんと我慢強いね。

 そう言うと嗜虐に溢れた目で軍人を見下ろすとナイフについた血をぺろりと嘗めた。



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 賢明なる読者諸兄ならお気づきと思いますが、火を通してない肉を切ったナイフを嘗めるのは止めましょう。示威行為のように一見見えますが、ナイフについた雑菌をそのまま体内に入れており、大変危険です。

 焼き肉屋さんで生肉を取る箸と、焼いた後の肉を取る箸も別々にしないと食中毒を起こす可能性が十分あります。

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