第65話
早くも修学旅行最終日。程よく学びも修めたしそろそろお家が恋しくなる頃じゃないか?
俺だったらあとひと月ぐらいは旅行が続いてもかまわないけどね。
中学校の修学旅行の部屋割りも大部屋だったけどあのときの俺はかなりスれていて孤独な子だったのですごくつまらない思い出しかなかった。
だけど今回は大違い。すげえ楽しかった。
そのせいで寝るのが遅くって、はたして就寝が何時になったのかわかんないけど、見回りの先生にものすっごく叱られるくらいには遅かった模様。親の勝手な期待とか学友とかいう周囲は只の競争相手でしかないとかそういうの全部取っ払ったらこんなにも人生が楽しいなんて、クソ親、もう一度訴えてやろうか?
まあ何が言いたいかというと、単純にもうクソ眠いってだけなんだよね。朝食もほぼ寝ながら食っていたので、半分くらいは萌々花に『あ~ん』して食べさせてもらったようなものなのは我ながら情けないとは思っている。幼児なのか、俺は?
さて最終日は午前中、沖縄文化のテーマパークにて過ごした後、商業施設に移動してみやげ物やらを購入する時間が設けられている。生徒に早い時点でみやげを買ってしまい後の日程をみやげ物と一緒に過ごすといった間抜け行動を取らせないための学校側の処置だって誰かが言っていたよ。スミマセン、ぎり間に合わず昨日たっぷりみやげ物を買ってしまいました……。お陰で、確かにバッグはおみやげでパンパンです。
バスで南下移動中も車中は初日のような騒がしさはなくだいぶ落ち着いたもの。パークに着いてもテンション爆上げてるやつは、いない訳では無いがみんな相当おとなしいものだった。単純に疲れているだけかもしれないけど。
施設の
昼食をとったらみんなお待ちかねのお買い物ができる商業施設に移動した。まあ、我がクラスの一部の男子はショッピングモールよりも道路挟んだ反対側にある、うちの近所にもあるようなスーパーマーケットのイ○ンの方に興味が偏っていたりするんだけどね。奴ら菓子がどうしたとか煩かった……。
俺と萌々花はこれといってする用事もないので近くの海岸まで散歩にでかけることにした。
「サンセットビーチって言うみたいだな。看板がある」
「サンセットって夕暮れとかそういう意味だっけ?」
「そだね。夕日がきれいなのかもな。海のほうが多分西側なんだろうね」
「そっか、残念だね。夕暮れ時は飛行機の中だもんね」
今日の夕方前には帰宅の途につくから、沖縄の夕日は、今日は拝めない。昨日一昨日は見ているからそこまで残念ではないんだけどね。
「また来たときにでも、この近くに泊まってここへ来てみようよ」
「漣がまた連れてきてくれるの?」
「当たり前じゃん。何度でも連れてきてやるよ」
「えへへ。ありがとう」
俺の左腕に身体を寄せてしがみつく萌々花。もう三日も我慢しているんだから刺激が……。
「も、萌々花は、もう買い物はいいのか?」
「うん。お父さんが欲しがっていた泡盛は未成年だからわたし買えないし、お母さんへのおみやげは昨日買ったから大丈夫だし、自分のおみやげも十分だからね」
泡盛については須藤から佐藤先生にお願いしてもらって既に購入済みだったりする。佐藤先生は須藤へのおみやげを買うついでだからって快く引き受けてくれた。いつもありがとうございます!
「んじゃ、時間までのんびり散歩しておこうか?」
「うん」
なんか穏やかそうな雰囲気なんだけど、戦闘機の爆音が定期的にやってくるのであまり気持ちよくはない。戦闘機オタクが『あれはF-15な』とか言っていたけど俺には違いがあまりわかんないよ。プロペラ機かジェット機かぐらいは流石にわかるけどさ。
「わ~ネコがいっぱいいる!」
萌々花は騒音など物ともせずネコと戯れていたけどね。うん、和むわ。
一通りビーチを周っても時間が余ったので、みやげは買わなくてもショッピングモールでも眺めるかと、他のみんなが買い物しているだろう店舗の方に向かった。十一月といっても日差しが強く少し暑かったってこともある。現地民らしき海人は長袖を着ていたので『この陽気で寒いのか?』とちょっと驚いたりもした。
モール内をうろついていたらジンと北山さんの二人に会った。
「よう、ジン。ジンたちは買い物したのか?」
「いいや、僕たちも昨日のうちにみやげは買い終えたし、飲み物ぐらいしか買っていないよ」
「やっぱ、そうだよな。どこ行っていたんだ? あっちって何があるんだ?」
ジンたちがやってきたのはモールの向こう側からだったので聞いてみたんだ。
「仁志くんがホームセンターを見たいって言うから、向こうにあるホムセンをぐるって周ってきたの」
「おいおい、ここまで来ておいてホムセンかよ⁉」
ジンはバイト先がホムセンだからな。気になったのかもしれないけどさ。わざわざこんなところで彼女連れて行くかなぁ~
「ま、普通のホムセンだったな。火の神は売っていたけど」
「火の神? 沖縄じゃ神様がホムセンで売っているのか?」
「ふふっ、売っているんだな、これが……。っていっても神棚みたいなものだったよ」
火の神と書いてヒヌカンと読むらしい。台所の神様らしく、キッチン用品売り場で火の神コーナーがあったそうだ。
その後、機内で食べるお菓子をいくつか買って集合場所へと戻った。
バスに乗ったらいよいよ空港に向かい、沖縄を後にする。長いようで短かった四日間だったな。
俺は搭乗機が水平飛行に移行した途端寝てしまい、次に気がついたのは茨城の空港に着陸の直前だった。旅行帰りあるあるだよね。旅行ってものに滅多に行ったことない俺としてはほぼ初めての経験だったけど、特に感慨深いものではなかったよ。だって往復とも寝てばっかだもん。もったいないことした……。
ところで、帰りの座席でも北山さんと傍から見ると仲睦まじく肩を寄せ合い寝ていたようで、写真までクラスメイトに撮られていたようだ。空港から学校までのバスで萌々花を宥めるのに相当の苦労があったのは修学旅行最後の思い出になった、よ。
それにしても飛行機に乗る前は暖かかったのに降りたらスゴく寒いんだけど? 茨城が寒いのか十一月が寒いのか………。へくしっ‼
※※※★※※※
晩秋の頃は沖縄と関東の気温差に驚きます。やや暑いくらいの気温から数時間後は木枯らし吹く環境に置かれるんだもの・・・。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます