第64話

今回、ちょっと長いです。上手いこと分けられませんでした。お付き合いください。


※※※★※※※



 修学旅行も三日目だ。昨日は張り切って歩きすぎたようで、佐々岡くんあらためユヅルを一人残し俺らは早々に寝てしまったので、今朝はなんとも清々しくスッキリとした目覚めとなった。

 今日はこの後、バスに乗って北中部にある有名な水族館に向かうんだ。俺でも知っているぐらいなのでさぞや素晴らしい水族館なんだと思う。ワクワクが止まんないぞ。




 水族館の見学が終わると六人班は一旦解散となって、完全に自由行動となる。基本四人でタクシーでの移動をするか、予め決まっている観光ルートをバスに乗って周るかの自由もある。みんなでワイワイしながら観光バスで周るのも楽しそうだけど、俺、萌々花、ジン、北山さんはタクシーでの観光を選んだ。因みに拓哉と雫ちゃんはサッカー部の連中と観光バスでのコースを選んでいた。


「水族館すごく良かったね」

「あの巨大な水槽はすごかったな。ジンベエザメってあんなにでかいんだな」


「こんどまた来ようね」

「そうだな。今度は免許証を取ってレンタカーとか借りたいよな」


 やっぱり自分で移動手段を持っていないと沖縄での観光は辛いってよくわかった。これからだってタクシーを学校が用意してくれなかったらどこにも行けないもんな。


「おーいレン! タクシーの順番が来たから早くこっち着てくれ」

「おー! 今行く」


 ジンと北山さんが先に順番に並んでいてくれたので、ちょっとトイレに行くつもりが萌々花と長話をしてしまった。


「行くところって?」


 俺はタクシーの助手席から振り返ってジンに行先を聞いてみる。準備のいい北山さんはタクシーの運転手さんに回りたいルートの書かれたメモを既にわたしてある。運転手さんはそれを見て素早くナビに入力しているんで、邪魔したくないんでジンに聞いてみたんだ。


「申し訳ないけど、沙織の行きたいコースをチョイスしてしまったよ」

「それは問題ないよ。俺も萌々花もこれといった希望はないからさ」


「じゃあ、逆に聞かないで着いてのお楽しみのほうがいいかもな」

「そっか、じゃあそうするよ」



 乗車して三〇分。特に特徴のない田舎道を走っていたが、屋我地島という島に入ってとある角を曲がって丘を超えたら驚いた。


「なにこれ! すっごい景色じゃん!」


 青い空、白い雲、エメラルドグリーンの海に真っ直ぐ伸びる一本の道路と橋。

 同乗の三人もわーわーと騒ぎ始めた。


「はい、最初の目的地の古宇利大橋ですね。待ち時間は三〇分ぐらいでいいですか?」

 ここでの観光時間は三〇分。運転手さんにそう言われたあと早速下車し、橋の方に向かった。


「車の流れが切れたら写真を撮ろうよ。二人ずつで撮って最後四人で……誰かにシャッター押してもらおうよ」


 俺が提案して、みんなからOKをもらう。早速橋の上で車が来なくなるのを待つ。今日が平日だからなのか、案外とすぐに車の流れは切れたので順調に撮影が進んでいく。


「ねぇ、漣。あの人達見て! きれい」


 萌々花が指差す先にはウェディングドレスの様なドレスとタキシードを着込んだカップルがタクシーから降りてきていた。他の車からはカメラマンとアシスタントと思われる二人も。


「ああ、ももちゃん。あれは多分フォトウェディングってものじゃないかな?」

「フォトウェディング?」


「うん。きれいな景色とか森の中とかでウェディング写真を撮るっていうサービスだよ」

「へ~ すごい! 沙織ちゃんてホントものしりだね」


「そういうわけじゃないけど、沖縄でのフォトウェディングってサイトをこの前仁志くんと見ていたから……」

 おっと。北山さんとジンは早くもウェディングの予定を話しているのか? 気が早いなぁ。


 橋の上で写真を撮り終えたら、橋のすぐ下の浜辺に降りる。真っ白な砂浜で小さい貝殻を拾ったりしていたらあっという間に移動の時間になった。


 次は今の橋を渡って、向こう側の古宇利島へ渡ってちょうど橋の反対側まで行ったところにあるティーヌ浜のハートロックってものを見に行く。波に侵食された岩の形がハートに見えるって――こんな説明じゃ色気もなにもないけどね。


 ふかふかな深い砂浜に足を取られながらも波打ち際まで行ってここでも記念撮影する。萌々花をお姫様抱っこして写真を撮られるとかちょっとテンションハイになったのはここだけの話にしてくれ。ただの侵食岩なんていってゴメンナサイ!


 来たときとは島の反対方向に向かって行くと古宇利オーシャンタワーがある。高台にあるので景色がいい。さっき渡ってきた古宇利大橋も見下ろせるロケーションだ。


「めちゃくちゃキレイじゃないか?」

「おいジン。あそこの鐘の下で写真を撮ってやるから北山さんと並びなよ。撮ったら俺たちもなっ」


 ジンがただ景色に感動しているので、せっかくの景色を写真に収めたくなった。ここまで写真を撮りまくったのってこの修学旅行が初めてかもしれないな。


 自由時間の半分弱ぐらいが過ぎたところで屋我地島に戻ってハンバーガーをおやつ代わりに食す。なんでハンバーガーって思ったけど、けっこう人気なんだって言うので素直に頂いたわけだけど、人気な訳はよくわかりました。夕飯のこと考えなくていいならもう二~三個は食っちゃったかも?


 島中央部にあるさとうきび畑でまたも記念写真。なんにもないさとうきび畑の真ん中でさとうきびと青い空をバックにしただけの写真だったけど、沖縄っぽさ満載で北山さんのチョイスのセンスに脱帽したよ。



 残り時間は町の普通のスーパーで買い物をするんだって。何故にスーパーマーケット?


「こういうスーパーって全国チェーン展開してないから、ローカルな食材とか地域限定のお菓子が割安な値段で買えたりするんだって」

「へ~ あ、早速スパムが安い! 今日の特売品だって」


 うちの方では見かけないものや、夜の部屋での夜食になりそうなものを隅から隅まで探索して買い物かごいっぱい詰め込んだ。もう明日の土産物屋なんて買うものなんかないかもしれない。沖縄っぽい袋麺や缶詰、お菓子各種に日持ちしそうなレトルト食品やジューシーの素とかいろいろ。普通のちんすこうセットみたいなお土産ではないけどこれはこれでとってもいいおみやげになったと思うな。



 今日泊まるのは名護の高台にある高級ホテル……ではなく、名護市内にある普通のホテルっていうか旅館っていうか、まあよくありがちな修学旅行で使いそうな宿だった。今度もし来るようなことがあったら萌々花とあの高台の立派なホテルに泊まってやるんだ!


「拓也たちはバスでどこ行ったの?」


 夕飯も風呂も済んで今は部屋でゴロゴロしている。ここの宿は昨日までの四人部屋ではなく一部屋一五人の大部屋だ。三日めともなると夜にはしゃぎまくっているやつも少なくなり、みんなダラダラと過ごしている。


「ん、水族館とおんなじ敷地にあるとこでイルカショーみたり、浜辺行ったりしていたら結構時間経っていたな。バスで観光とか言ってもこの宿に向かうついでに今帰仁の城跡見に行ったぐらいかな。まあサッカー部のやつと遠征以外での旅行なんて初めてだったからそれなりに楽しめたよ」


 スーパーマーケットで買った地元限定のお菓子をボリボリ食いながら他愛も無い話をしていたら、お菓子に部屋のみんなが群がってきた。


「あ、これ美味いな。あした行くところにスーパーマーケットあるかな? 俺も買いたい」

「明日は恩納村のテーマパークと北谷町でみやげの買い物だろ? スーパーマーケットってあるか? いや、空港でも売ってたりするのか?」

「マップで調べてみよう。あったらみんなで行こうぜ」


 なんか勝手に盛り上がっている。やっぱ北山さんのチョイスは完璧だったんだな。ああ、俺ももう一袋このお菓子買って帰りたいから、最悪コンビニでも覗いてみることにしよう!



※※※★※※※

旅行に行ったら地元のスーパーに行くと面白いものが見つかりますよ。その土地の人には当たり前でも他地方民には魅力的なんですよね。是非どうぞ!

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