第59話



 中間テストが終わると次のイベントは十一月上旬に実施される修学旅行だ。


 ちなみにだが、中間テストでの萌々花の順位は一学期の中位から一気に順位をあげて学年上位三〇パーセント入りを果たした。俺? 残念ながら順位はひとつも上がらなかったよ。


 さて修学旅行の行先だが、わが校は一般的な県立高校なので海外旅行などあるわけもなく平平凡凡な国内旅行だ。いや他校では公立校でも海外が行先のところのもあるかもしれない。俺はしらんし興味もないけど……。ただ行き先が沖縄であることは俺的にせめてもの救いだった。関西の古都は中学の修学旅行で行ったし、それにあまりいい思い出もないからな。そんなこんなでしばらくは古都には行きたいとも思っていないんだよね。古都のほうには何も不備不足はないんですけどね。俺の気持ち的なアレなんでね。

 それに俺としても平和教育は絶対に必要派なので、沖縄の過去と現状は目に焼き付けたいと思っているところ。もちろんそれだけでなく、ふつうに某有名な水族館などの観光地も満喫したいけどね。



「では、班決めをしたいと思います。えっと、うちのクラスは四〇人……でしたが、四人ほどいなくなったので三六人です。ということで、ひと班六名で六班作ってください。よろしく~」


「何故かなんて、お前が言うなァ~」

 ヤジがうるさいなぁ……。


 ということで、学級委員長の仕事を本日はやっています。たまにしかやらないので自分の役割を忘れてしまいそう。


 俺の班は当然ながらいつものなかよし六人組セクステットです。


 いつぞやの佐々岡くんもどうやら篠田さんと同じ班になった模様で、文化祭のお陰でだいぶ仲良くなったような様子が見られる。うちのクラスはいなくなった四人のお陰で他のクラスよりも団結力が高いんでハブられたりするやつはいないんだ。順調に班分けができて後は、自由行動中にどこに行くかなどの調べ物にLHRの時間が費やされる。


「あれ? 沖縄って電車ないんだ」

 図書室から借りてきたる○ぶのページを捲りながら拓哉がつぶやく。


「そうだね、電車はないみたいだよ。モノレールはあるけど路線距離自体は短いんだよね」


 拓哉が沖縄には電車がないことに気づいて、そういうのを知っていた北山さんが拓哉に教えてやっていた。


「そうなんだ。沖縄には電車は走っていないんだ。じゃあ、移動はどうするんだ? まさか路線バスの旅ってわけじゃないよな?」

 サイコロの出た目で行き先が決まるやつだったら嫌だね。


 他の班でも同じ様な疑問が出ているようなので委員長として俺が答える。っていうか、クラスのみんなに言わなきゃいけないことを忘れていただけなので、再度教壇のところまで戻った。


「はーい、ちゅうもーく! えっと、向こうでの移動手段を説明しますね」


 まず、集団での移動は当然ながらバス移動になる。三泊四日の初日と最終日がこれに当たる。あとは沖縄本島南北間の長距離の移動もバスだ。


 大まかな行程はこんな感じ。


 初日は学校に集合してバスで茨城の空港まで連れて行かれ、そこから沖縄の空港まで飛行機で移動することになる。昼飯は機内で弁当が配られるんだと。残念ながら機内食ってやつではないらしい。到着後はバスにて糸満市に向かい平和学習の各施設や公園を巡ったあとに那覇市内のホテルへチェックイン。これで初日の日程は終わる。


 二日目は軽くいくつかのチェックポイントになっている施設を周る以外はほぼフリーで那覇市内を観光する予定だ。チェックポイントと言うのは、沖縄の歴史や風俗を調べてレポートにまとめるための課題なのでただ遊んでいるわけにはいかないようになっている。


 三日目は那覇市内のホテルを朝食後に出発し一気に北方してかの有名な水族館へ行った後は自由行動となる。この場合は班もフリーになって他のクラスも交えてもOKの四人を一ユニットと考えてタクシーでの移動が可能だ。個別の観光を望まない生徒には観光バスで定番の観光ルートを周ってくれるプランもある。これらの学校側の大盤振る舞い仕様は佐藤先生の発案によるものらしい。どんな手練手管を使ったのかは知らないし、知りたくもないけどね。この日の宿泊は名護市内のホテル。


 最終日は、読谷村の観光施設で遊んだ後に北谷町でお土産ショッピングタイムまで用意されており。買い物終了後は速やかに空港へ移動し、帰路をたどることになる。


 これじゃあ修学旅行というよりもただの観光旅行ではないかと思うが、佐藤先生が夜な夜な須藤にゲフンゲフンされているであろうお胸をこれでもかってくらい張って「どやっ」っと言っていらっしゃるので何も意見はありませんよ?


「あ~三日目のあれさ。おれと雫は部の奴らと周っても大丈夫か?」


 勝手を言って悪いんだけど、と拓哉が申し訳無さそうに言ってくるが、残された俺を始めとした萌々花、ジン、北山さんも特に否はないので、快く了解した。問題なく二日目の六人組班と三日目の四人組ユニットが出来上がって、余計な苦労がない分助かったようなものだ。


「はいはい、ちゅうもーく」

 佐藤先生が手をパンパンと叩いて自分に注目させる。


「今日全部決めなくてもいいですけど、来週はじめまでには計画表を各班とも出すようにしてくださいね。四人組の方は他のクラスのこともあるので早めに行動すること、ね。先生方が行く先をチェックして無理な行程や危険な場所への立ち入りは事前に注意しますので間違いなく提出してね」


 あと各班のリーダーのスマホにはGPS追跡アプリのインストールがらしいです。またあの佐藤先生謹製の無駄にハイスペックなものなのでしょうか……。


「そういえば、パスポートって持ってないけど大丈夫なの?」

「雫ちゃん、沖縄は日本なのでパスポートはいらないですよ?」


「え? 飛行機に乗るのにパスポートが必要なんじゃないの?」

「いらないよ。萌々花ちゃんまでどうしたの? すっとぼけがカンストしているわよ?」


 北山さん、うちの萌々花と雫ちゃんが申し訳ないっす。雫ちゃんはどうだか知らないけど、萌々花は飛行機どころかまともに旅行なんて行ったことないんですよ。ま、俺も旅行は小中学の時の林間学校や修学旅行以外はどこにも行ったことないので偉そうなことは言えないんですけどね!


「萌々花、あとで二人で温泉旅行あたりから経験していくことにしようか?」

「温泉いいね、混浴たのしみね?」


「えっと、混浴の前に旅行に行くってことを楽しみにしてみようか?」



※※※🌒※※※

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