第54話
誤字脱字報告ありがとうございます。
今日もよろしくおねがいします!
※※※★※※※
今日の買い出しメンバーは俺と萌々花、リーダーの小牧さんとサブの篠田さん。俺以外の男メンバーは佐々岡くんだけだ。必然的に俺と佐々岡くんが荷物持ちに任命されている。俺は大量の布は重たいことを熟知しているので折りたたみカートを持参していたんだけど、買い物を始めるまでは『コイツ何を持っているんだ?』みたいな訝しげな目でメンバーからも見られていたよ。いざ買い物を始めると納得されていますがね。
「佐々岡くん、重かったらこっちのカートに載せてもいいからな?」
軽くて載せにくいような形のものだけ持ってくれたらいいと、声をかけている。
「君方ってすげー準備いいんだな。鈴原さんもかなり慣れているみたいだし、よくここらへんに来るのか?」
「そうだな。萌々花は洋服作りが趣味だからな。よく付き合いで来るな」
「へ~ そういえば今日、君方の着ている服は、もしかしたら彼女の手作りなのか?」
「おっ、わかる? その通りだぞ。これ着心地が最高なんだぜ」
女の子たち三人は姦しく、やいのやいの言いながら布を選んで次から次へと店を渡り歩いている。俺と佐々岡くんはただの荷物持ち要員となっているので、兎に角女の子たちに付いていくだけだから、二人で無駄話をしながら親交を深めていた。いつもの拓哉やジンとは仲良く喋るけど、他のクラスメイトとは連絡事項でちょっと話す程度だったので世間話をしているだけでも新鮮でとても楽しい。分かってきてはいたけどやっぱり友達がいるって嬉しいな。
「なあ、君方。お前と鈴原さんって付き合っているんだろ?」
「あ、ああ。付き合っているよ。俺の可愛い彼女だよ」
「で、どうなのさ。恋人がいるって感覚は?」
「え~ なにそのざっくりした質問は。えっと、感覚? ん~ なんだろ。ほわほわ温かくて、何にでも頑張れる気がして、常に気分が上向き、みたいな?」
なんとも抽象的な質問だったので答えまで具体性に乏しい、それこそ感覚的な答え方になってしまった。
「そっか……。そういうもんなんだな」
なんかこんなのでも通じたらしい。そもそも佐々岡くんはなんでそんな質問してくるんだろう。
「佐々岡くんは、誰か気になる人がいるって感じなのかい?」
「……。ま、まあ。そうだな」
俯き、もじもじする佐々岡くん。別に男が顔を赤らめても可愛くないからシャキッとしていてください。
「おーい! 荷物お願いしま~す」
「ほら、篠田さんが呼んでいるよ。佐々岡くん、受け取ってきてくれないか?」
俺はカートを引いているから、混雑した店内は容易に入っていけないんだ。なんで佐々岡くんにお願いしたんだけど、彼は喜々として荷物を受け取りに行ってくれた。
メーター一〇〇円の布を何束か受け取るだけなのに何が楽しいんだろう?
十数件のお店をハシゴして普通の木綿ぽい布だったり、やたらときらびやかな布だったり、レースや革紐、ミシンの糸や消耗品まで買いに買いまくって昼過ぎから夕方まで歩き回った。さすがの俺も足が棒のようになって疲れている。佐々岡くんも桃色吐息、じゃなかった青息吐息だよ。
女の子たちの買い物熱って凄まじいものがあるよな。アレだけあるき回ったのに帰りに駅前のファミレスでパフェ食べていこうって話しているしさ。もう帰りたいんすけど……。
「萌々花ちゃん
ファミレスでチョコレートパフェを頬張りながら小牧が聞いてきた。
「え、なんで?」
「ううん。学校だけじゃ足りない作業をどこかのうちに集まってできないかなって?」
文化祭前だからといって皆バイトもあるし、部活動がある人はなかなか参加できないんだよな。特に運動部なんかは秋季大会近いみたいだしさ。それなんで今日も準備メンバーの小田島くんがこの買い出しに来なかったんだよ。彼、今日は練習試合だって言っていたしね。
「う~ん、ごめんね。うち、家の人がお客さんを招くの好きじゃないんだよね。ほんと協力できなくてごめん」
はい。こんにちは、私が噂の非協力的な家の人です。俺たちが二人で暮らしているのはクラスメイトには知られたくないので、申し訳ないけどぜったいに無理です!
「そっか~ しょうがないね」
「あ、ウチだったら大丈夫だよ。毎日、とかじゃなければ、だけど」
「え? シノちゃんち大丈夫なの? じゃあお願いしていい? ええっと、まずは今日買った荷物を預かって貰いたいんだけど……、あ、やっぱ重くて持って帰るのは無理だよね」
まあ預かるだけなら俺がこのまま預かっても構わないんだ――
「僕が持っていくよ、篠田さんの家まで。方向的に大丈夫だから……」
かき氷を突きながら、ボソリと佐々岡くんがつぶやいた。
佐々岡くんが申し出たので、荷物は一旦篠田さんのところで預かってもらうことになった。必要なものだけ休み明けに篠田さんが学校に持ってくるか、誰かが篠田さんちまで取りに行けばいいってことになったんだ。なので俺はカートごと佐々岡くんに今日買った荷物を預けることにした。
本来ならば学校が開いていれば学校に寄って荷物は置いてくるんだけど、今日は休日だし、もう夕方なんで誰もいない可能性もある。無駄足ってことは避けたいのでね。
学校最寄りの四つ手前の駅で小牧さんが最初に電車を降りて、次の駅で佐々岡くんと篠田さんが降りる。
「じゃあ、荷物よろしくな。今日はお疲れ様でした。バイバイ」
手を振って二人と分かれる。
「ねえ、漣。気づいている?」
「なにが?」
「佐々岡くんの家の最寄り駅は少なくともあの駅じゃないよ」
「え? そうなの?」
「佐々岡くんとわたし、同じ中学校だったしね。彼は友達じゃなかったからあたしのことは覚えてないかもだけど」
「じゃあ、なんで同じ駅だって言ったんだ?」
「篠田さんと同じ駅なんて佐々岡くんは一言も言っていないよ」
あ、ああ。確か『方向的に大丈夫』か。遠回りしても方向的に無問題だし、他に重要なことがあるってことなのか? そうなのか? 佐々岡くん! つまり昼間話したアレは……。
「なるほど?」
「いやぁ~ 青春ですね」
「青春だなぁ」
アホな話をしているうちに降車駅についたので、駅前のラーメン屋で夕飯を食うことにした。
「わたしお昼からお口がずっとラーメンだったの」
「左に同じぃ!」
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佐々岡く〜〜〜ん! ガンバ!
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