第50話
すわっ、修羅場?
※※※★※※※
「……おんな」
「?」
「漣は今日、おんなと一緒にいたでしょ?」
「? は⁉ いやいやいやいや、ほかの女となんて一緒にいないよ!」
萌々花の顔が般若のよう……。髪は逆立ち、目が座っていてすごく怖い……ぶるぶる。
「ふ~ん、白を切るつもりなのね……。じゃあ、漣。一体、この匂いは何なのかしらね? 甘ったるいフローラルなコロンの香りが漣の身体から漂ってくるんですけどぉ? 漣はそういう少女趣味なコロンをつけていましたっけぇ??? あらら、もしかしたらわたしの記憶違いかしらね?」
萌々花さん、すっげー怖いんですけど! 怖すぎなんですけど!
えっと、こ、コロン? コロンなんか俺はつけていないし、匂いが移るような行為もしていな――
「あっ……」
「ふんっ、心あたりがあるようね?
……ねえ、浮気なの? わたしじゃ物足りないの⁉ そのおんなはだれなの? いつから漣はその娘と付き合っているの?」
わかったぞ、アレだ! 樋口を本屋から無理やり連れ出すときに腕を掴んで肩を抱きかかえるようにして外に連れ出したんだった……。そのときか? 匂いが移ったのは。そう言われてみれば樋口からは甘ったるいようなコロンの匂いがしていた気もしなくもない。あの時は怒りと動揺であまり気にしていなかったけど、たぶんそれが正解だと思う。
「あーあー、萌々花、ちょ、ちょっと病まないで落ち着いて! あの違います。違うから! 説明するからすこし落ち着いてくれ! じ、実は、以前萌々花にも話したことがある例の元カノとなぜか偶然、バイト先の近くの本屋で会っちゃってさ――」
「松ぼっくりが火を噴いたっていいたいの⁉」
それを言うなら『焼けぼっくいに火がついた』じゃないかな? いま訂正するのは火に油を注ぐのと一緒で、萌々花が余計に怒りそうだから聞かなかったことにしてスルーしますけどぉ!
「違います! 違います! 一度、いまいちどご冷静にわたくしの話を聞いてください。本当にただの勘違いですから‼ 浮気もしておりませんし、火も噴いておりません! これは絶対。わたくしには萌々花さましかいないのですから!」
もう敬語で懇切丁寧にご説明申し上げ祀りまするぅぅ~
「ん、あ、え、わ、わたししかいないって……え、えへへ、へへへ。っ! ううん! そんなんじゃわたしは騙されないからね!」
あ、ちょっとデレて落ち着きそうだったのに! おしい!
「じゃ、じゃあなんで漣から甘い香りがするのよ? 会っただけなのにニオイ移りするなんてそんなわけないじゃない! おかしいじゃない! 絶対に肉体的接触をしたに決まっているんだから!」
肉体的接触って何だよ? 混乱しすぎて言葉遣いがおかしいぞ⁉
「あっああ、事細かに、今日の俺の行動を全部、子細説明するから、そうしたらなんでそうなったのかわかると思うから! ね? 聞いて!」
俺タイムライン、放課後学校をでたところから時系列ごとに全部話すことにした。変にごまかすと深みにハマりそうなんで余計なことを含めて全部話してしまおう。
「えっと学校を出たらそのまま駅に向かって――」
「そういうの端折って説明してよ。おんなと出会ったところから始めて?」
「あ、はい」
子細話すって言った途端に端折られた!
本屋で偶然再会してってところから話し始めたらまたもや萌々花はエキサイトし始めてしまった。
「そんな不遇によって音信不通になったカレカノだった男女が偶然、以前の場所からすごく遠い場所で数年後に再会するなんて運命じゃない! 二人の気持ちが盛り上がるのは必至じゃない! 焼けどっくりが火だるまだよ! やっぱり漣は浮気してきたんじゃないの!」
焼けどっくりってなにさ? 火だるまにしないで!
確かに運命的な再会っちゃ再会だけどさ。本当に何もないし、説明ばなしのはじめも始めの方で話の腰折られちゃ説明なんてできないじゃん!
「あの、ごめん。とりあえず一回、話聞いてくれる? 萌々花さん、聞いてる?」
さっきからずっとフローリングの板の間に正座しっぱなしだからそろそろ足の方の限界が、ね?
…………。
「じゃあその娘とはなにもないのね?」
「うん、何もない。神に誓ってなにもないよ。連絡先さえ交換していないし、二度と俺の前に顔をだすなと彼女には言ったんでこの先絶対に会うことはないと思うよ」
「ほんと?」
「ほんと、ほんと。俺には萌々花しかいないから。他の女なんて眼中にないし、この先も絶対に浮気なんてしない自信があるよ」
「えへへ。ありがとう。漣のこと疑ってごめんなさい。怒っているよね?」
「いいや、分かってくれたなら俺もそれでいいよ」
押し問答を繰り返しながらもやっとのことで俺が樋口美鈴とは一切おかしなことはしていないし、今後もそうなることは全くないということが萌々花に理解された。
ほんと良かった。もう小一時間も正座しっぱなしだから足の感覚がなくなってきちゃっているんだよ……。
「さて、じゃあリビングで一回ゆっくりしたら夕飯でも作ろうかね?」
「えっ? 漣。ちょっとそのままステイだよ」
「ん。なんで? もう足がしびれちゃって痛みさえ分からないほどになっているんだけど?」
「そうなんだ。ちょうどいいじゃないかな?」
「? どういうこと?」
「わかっているくせに~ ごまかしてもだめだよ~」
「いや、本当にわからないんだけど……」
萌々花が浮気云々でお怒りのときと似たような雰囲気になってきたんですけど? はて?
「喧嘩したでしょ?」
「……はい。でも、仕掛けられたから仕方ないと思うんだけど?」
「足はついているんだから、逃げることはできたよね? なんで立ち向かおうとするの?」
逃げても解決には至らなさそうだから、やっちゃおっかなぁ~って軽い気持ちで手を、じゃなくて足を出しちゃったんだけど、それをそのまま言ったら萌々花にすごく怒られる気がしてので口をつぐむ。
「また怪我をしたらどうするつもりなの? わたしがどれだけ心配したか漣は分かってくれないの? だから――」
ちゃんと話をしたら浮気じゃないってことについては萌々花も理解してくれたけど、喧嘩をしたことを話した結果、この後も正座のまま叱られ続けました。
俺の足、崩壊……。とほほ。
※※※★※※※
ずっと正座は辛いよね……。腕の心配はしてくれるのに足の心配は一切してくれない萌々花さん~
カワイそうな漣に★をつけてあげてね♥
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