第43話

今年(2022)の夏はいつまで続くのでしょうか?

始まったばかりで既に夏バテ……


※※※★※※※


 お泊まり会から数日後。

 俺と萌々花は実家を離れ、自宅に戻っていた。午前中からうだるような暑さが俺たちを襲う。夏はまだ終わるつもりがないようだ。


「暑い……」

「残暑がきついざんしょ……」

「漣、ありがとう。すこし涼しくなった……」

「う、うるさいよ!」


 ピコピコピコ♫

 ピコピコピコ♫


 萌々花のスマホに電話の着信がきた。


「あ、お母さんだ」

「ん? 実母?」


「違う、佳子お母さんだよ」

「そっか、何の用だろう? 早くでな」


「もしもし、こんにちは。うん、そうそう――」


 今更実母が萌々花に連絡をしてくることもないだろうとおもいながらも、『お母さん』の言葉にビクッとしてしまったが、相手が佳子だと聞けば気が抜ける。ここ最近は俺抜きで佳子母さんと萌々花だけで買い物に行ったり遊びにでかけたりもしていたので、直接佳子母さんから萌々花に連絡があっても何も驚かないし、何かを感じることもなくなっていた。


「――えっ? 本当ですか⁉ うれしい……本当に嬉しいです。はい。でも……うん」


 急に萌々花が大きな声を出したので驚いたけど、萌々花の顔がにこやかなので悪い話ではなさそうだ。


「ねえ、漣。ペンとメモ用紙ってどこにある?」

「ん、と。ほいっ、どうぞ」

「ありがとう!」


 メモ用紙を受け取ると、サラサラと住所らしきものを書き込んでいく。


『東京都中央区京橋二丁目○-△△ XXビル六階………』


 俺にも少し覚えのある住所が書かれているような気がするんですけど。


 XXビル六階といえば俺が実の親と裁判沙汰になったときに頼りにした弁護士の事務所がある場所だと思う。はっきりと覚えているわけではないが京橋二丁目でXXビルだから間違いはないだろう。


 萌々花が、あの弁護士になんの用事があるのだろう?


「では明日一〇時ですね。わかりました。お母さんも身重なんだし、無理しないでくださいね。では~」


 萌々花の通話が終わる。


 気にしちゃいけないのか気にしていいのかわからないけど、気になっちゃうので聞いてみる。


「萌々花、その住所って?」

「うん。漣のときの敏腕弁護士さんのところだね」


「……その弁護士になにか用事なのか?」

「ふふふ、そうなんだけど……。理由についてはもう少し待ってくれるかな? ちゃんと教えるから」


 弁護士のところに行くっていくのになんだか楽しそうな萌々花に疑問は感じるが、萌々花が待ってくれと言うのならば待つのが当たり前だと思う。


「おっけ。でもキリがついたら絶対に教えてくれよな」

「もちろん! 絶対!」


 萌々花は『漣くん驚くこと請け合い!』って笑っているから大事ではなさそうだし、時期が来れば教えてくれるっているし……。ま、気長に待っていようか。




「じゃあ行ってくるね」

「いってら~、気をつけてね。ナンパとかされたら大声出して逃げるんだぞ⁉ ぜったいについていっちゃだめだからな!」


「もうっ、子供じゃないんだから大丈夫だよ。佳子お母さんも一緒だから変なことにはならないから平気平気! そんなことよりも漣も早くしないと病院に遅刻しちゃうよ?」

「あ、ああ。そうだった。じゃあ本当に気をつけてくれよな」


 これってはじめてのお使いに出す親の気持ちなのかもしれない。いい加減一人で出かけても大丈夫なのはわかっているのに過保護的に心配しているだけだって言うのも自覚しているんだ。


「(はあ、考えてもしょうがない。俺も用意して早く病院に行かなきゃ)」

 今日の検査の結果次第では病院のリハビリに通わないで良くなるかもしれないんだ。


 あと数日で学校も始まるので、もういちいち病院のリハビリ通院は終わりにしたいところ。もう痛みもないし多分大丈夫だろう。俺の方も萌々花にいい結果を知らせることができそうだ。




「ただいま!」

「おかえり、萌々花。なんだかやけに嬉しそうだな」


 ただいまの声が弾んでいたもんな。顔だってにっこにこだよ。


「えへへ。実は――おっと、まだ言えないんだった。うん、まあいいことはあったよ」

「ふ~ん。まだ言えないんだね。まあいいや、暑かったろ? リビングで休みな」


 今日も残暑の日差しは強く、三五度をゆうに越していたような体感気温だった。


「ありがとう。一休みしたら夕飯の用意をするね」

「おー、今日は一緒につくろう。予定通りハンバーグの具材の用意はしてあるよ」



「「いただきます」」

「うまっ、上手に焼けたな!」


「ホント。今日のは特に上手にできたんじゃないかな? 漣が手伝ってくれたからだよね」

 俺たちは一緒に台所に立ちハンバーグと付け合せを一緒に調理し、日が沈みきったあたりの時間で夕食となった。


「そういえば、漣。病院の方は?」

「ああ、今日で連続での通院は解除されたよ。今後は週に一度の診察があって、そこでも問題がなかったら完治ってことになるらしいよ」


 怪我のほうが完治でも、弱った筋肉のトレーニングは今後も数ヶ月続けていかなきゃいけないんだけどね。まあ、普通に身体を鍛えるのと一緒だから気にすることはないと思っているんだ。


 父さんの知り合いが経営しているフィットネスジムが隣街にあるみたいだから週に何回か通えるように便宜を図ってもらおうかなって思っていたりする。ついでにバイトでもできるって言うのがベストなんだけどさ。まあバイトのほうが主な目的なので『便宜』が必要なんだけど。


「そのバイトができるときはわたしも一緒だよね?」

「そう、そういうふうにお願いしているところだよ」


 とくに俺がお金に困っているわけじゃないけど、日々の生活費で萌々花が俺にお金を全額出させているのが嫌だって話なんだ。俺的には余分にお金は持っているし萌々花のためならなんとも思っていないけど、萌々花が負担だと思うことは軽減したいからさ。それにバイトっていうのも楽しそうだしね!



 三日後、面接を経てバイトに俺たち二人して採用された。


「アルバイトが始まっちゃう前に間に合って良かったんだけど、三〇日の金曜日に一緒に例の弁護士さんのところにわたしと一緒に行ってほしいんだけど大丈夫かな?」


「いいよ、当然。萌々花がないしょって言っていたやつの内容がわかるんだろ?」

「うん、そうだね~」


「それなら行くのは必至だな! この前みたいな台風がきたとしても這ってでも行くから大丈夫!」


 あの弁護士絡みじゃ、思うに萌々花の実母の問題だろうけど、萌々花自身がニコニコしているのが理由としてよくわかんなかったから真実が知れるのは楽しみしかない!


※※※★※※※


漣くんの腕は完治へ。

お祝いで★を一つでもいただきますと励みになりますのよろしくお願いいたします。

できれば……★★★で!!

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