第42話

結局食うんかい! から始まりますww


※※※★※※※


 帰宅後、結局夜九時過ぎには全員腹が減ったので、持ち帰った焼きそばと佳子母さんの作ってくれたおかずにご飯まで食って、またも腹がパンパンにくちくなるまで夕飯をとった俺たちアホな六人組セクステットです。


「今日はトランプでもする?」

「拓哉、今日は無理じゃね?」


「なんでよ、漣」

「……だって、ほら」


 ジンと北山さんは既に二人して夢の中にデートに出かけてしまったようだし、雫ちゃんも萌々花もドラゴンボートでも漕ぎ出しそうなぐらい頭をぐらつかせながら船を漕いでいる。


「……あ、ああ、今日は寝ようか?」

「そうだな。実は俺も海で疲れたみたいで、なんだかとっても眠いんだ」


「じゃ、寝よう。おやすみ漣」

「うん、おやすみ拓哉。ほら萌々花も寝るよ?」

「ふにゅぅ」


 今夜も道場で雑魚寝。女の子たちのために用意した部屋はただの荷物置き場の着替え部屋になっていたが、楽しさが上回っているのだから気にすることはないだろう。


 こうして二日目のお泊まり会の夜も更けていくのだった。




 翌日は昼ごろまで惰眠を貪り、のそのそと起きてきては昨日の日焼けの痛さにギャーギャーとうるさい俺たち。自分のことながらホント騒がしいったらありゃしない!

 今日は昼食を食べ終えて少ししたら、拓也たちは帰宅の途につくことになっている。


「今回のお泊まり会は、おれ的になんか最高の夏休みって感じだったな」

「ただ友達の家に泊まるっていうんじゃなくて、なんだかいろいろと体験できて僕の中でも過去一番の夏休みだったよ! 沙織ともずっと一緒だったしね!」

 拓哉とジンが礼を述べ、雫ちゃんと北山さんもウンウンと頻りに頷いていた。


「帰路も気をつけて帰ってくれよ。途中下車で遊ぶのもいいけど荷物を置き忘れるなよ⁉」

「わたしもすごく楽しかったよ。初めてのこともいっぱいできたしね! 休み明けは漣と登校するから今度は学校でもいっぱい遊ぼうね!」


「うん! そういえば、ももちゃんはまだ帰らないの?」

 雫ちゃん、尤もな疑問を呈してきてくれる。


「え~いいなぁ、萌々花ちゃんまだ君方くんちにお泊まりなんだぁ。あ、そうだ! 仁志くん今日はうちに泊まらない? お父さんもまた連れてこいって言ってたんだよ」

 ジンは北山さんの両親に甚く気に入られた様子で拓哉たちも目を丸くしながらも微笑ましくやり取りを見ていた。


「いいなぁふたりとも。あたしんちなんて拓哉を泊めるのも泊まりに行くのもぜったいにだめだよ。……だから今回はホント楽しみだったし、泊まってみたらすごく良かった! ありがとうね!」


 俺は話がどんどん萌々花の話から離れていくことに実際のところホッとしていた。


 自分の、自分たちのおかれている立場が大っぴらに言えるような状況だと思えてなかったためだ。とは言ってもいつまでも秘密にはできないし、この友人たちには全部話してしまっても構わないとも思っていた。


「ねぁ、漣……。だめかな?」

「ん~いいんじゃないかな、話しちゃっても」


 萌々花も気にしていたようで俺が多くを語らずとも言いたいことがわかっていたようだ。


「あ、あのね、みんな。わたしと漣が秘密にしてたこと話すね……」

「「「「ひみつ??」」」」


「うん。実はわたしと漣は一緒に住んでいるんだ。といってもわたしが漣のお家に転がり込んだんだけど――」


 萌々花は俺の家にいる理由や馴れ初め、実の母親にどういった仕打ちをされたのか、また逆にこの横浜の両親にどれだけ可愛がられたかなど事細かく洗いざらい説明した。もちろん、あの風見鶏連中とつるんでしまった過ちも含めて。


 萌々花の話しぶりは、もしこのことで友人たちとの関係がギクシャクしても仕方ないという覚悟を持っているようだった。そして俺も同様に思いながらも、そんなことにはならないだろうという希望を持って。


「……やっぱりそうだったんだ。ほら、拓哉、あたしの言ったとおりじゃん⁉」

「? やっぱりって?」


 雫ちゃんの感想に萌々花は首を傾げる。萌々花の一大告白に雫たちはやや驚いた表情を見せたものの、萌々花や俺の想像していたほどの過大な反応ではなかったからだ。


「え? だってももちゃん、リモート授業のときも漣くんちで朝早くから一緒だったし、どっか遊びにいってもあたしたちとは一緒に帰ることないんだし、それだけじゃなくて、どう考えても漣くんと一緒に暮らしているんじゃないかって素振りがそこかしこにあったんだよね」


「そうそう。でもさ、ふつう高校生が自宅を出て彼氏のところで同棲するなんて不可能じゃん? でもさっきの萌々花ちゃんの実家の事情話を聞いたら納得だよな。だけど、まさかスド先と佐藤先生までそのことを知っているとは思わなかったけどさ」


 雫ちゃんと拓哉の感想に『そのとおり!』と言った感じでジンと北山さんも激しく同意しているように頷いている。


「私なんて羨ましい通り越して妬ましいですよ! 私も仁志くんと一緒に暮らしたい!」

 北山さんは大人しそうに見えてなかなか情熱的らしい。まんざらでもなさそうなジンの表情にはため息しか出ない。


 なんていったって俺と萌々花にしては、気を張って、一世一代の告白のつもりで伝えたのにあまりにも反応が軽く肩透かしをくらったかのようだったから……。


「まあ、受け入れてもらえたんだから……いいのかな?」


 その後萌々花や俺の話よりも、北山さんの同棲への憧れ話や雫ちゃんのお泊り計画の話題に花が咲き大して俺たちの同棲についてはいじられることもなく、拓也たちの帰宅の時間になった。


「じゃあ気をつけて帰ってくれ」

「お邪魔しました。ご両親にもくれぐれもよろしく伝えておいてくれよ」

「もちろんっ」


「今度は、僕たちを漣と萌々花ちゃんの愛の巣に招待してくれよ⁉」

「あ、愛の巣……。ま、まぁ頃合いを見て招待するよ。でもなにもないぞ⁉」

 萌々花も雫や沙織にいろいろとからかわれているのか、傍から見ても耳まで顔を真っ赤にしている。


「また学校で!」

「バイバイ!」

「じゃあなぁ~」

「さよならぁ~」


 四人はそれぞれ挨拶の言葉を残して地下鉄の改札を抜けていった。


 二泊三日のお泊まり会が終了した。


 俺たち六人全員にとってかけがえのない思い出になったことは言うまでもないだろう。



※※※★※※※


お泊り会などやったことないわ! うらやまし!

それにしても北山さんは積極的だな!


暑い日が続いております、皆様、ご自愛ください……。

夏の暑さには下の☆を★にすると良いそうですよ⁉

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