第25話

 ヒノキ花粉がやばいです。目が痒くて仕方ない……指の腫れも200%から170%ぐらいまで落ち着いてきました。

 ただ、ストックがあっても未だ下書きのままで忙しさだけが追いかけてきます(汗)

 なんとか頑張っていますのでご一読お願いいたします。

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「漣……」


 トコトコとゆっくり歩いてくる足音が近づいてくる。


 慌てた風がないってことは父さんから俺のこの状態は聞いてきたんだろうな。

 ははは、情けねぇ~


 ぽすんっと俺の横たわる直ぐ側に萌々花は座ったようだ。


 未だ目を開ける気力さえないので気配だけだけどな。

 そっと俺の頭が持ち上げられ、柔らかい物の上に据えられた。


「どう? 現役JK美少女ギャルの膝枕は」

「要素が多すぎじゃないか⁉ 最高だけど」


 柔らかいし、いい匂いはするし、その上頭まで撫でられてしまっては最高以外の何ものでもないよ。


 目元をスッと濡れタオルで拭かれる。

 さっきまで自分の不甲斐なさにイジケて泣いていたのがバレたな。ものすごく恥ずかしい。


「ありがとうね、漣」

「ん? 何のこと?」


「わたしのこと守ってくれようとして無理したんでしょ?」

「……」


「わたしのことで漣が傷つくことはないんだよ……」

「ううん。萌々花のためじゃないんだ」

「それって?」


 俺は萌々花を守るって行為に満足していた。萌々花のことを隠れ蓑かくれみのに過去の嫌なことに対し見ないふりをしていた。


 俺は萌々花を自宅にかくまい、守ってやることで裏切りという行為自体が出来ないようにズルく酷いことをしていたに変わりない。


「ズルくて汚い男なんだよ、俺は」


 自分でも分かっているくせに大事なところに目を向けようともしないで先に進もうっていうのは虫が良すぎた。


 その甘っちょろく不甲斐ふがいない俺にカツをいれるために師匠である父に思い切りやってもらたら…………このざま。

 情けなく泣いているところに一番見てもらいたくない人に見られて、更には介抱までされる無様。


「なんか色々、気づけたんだね。偉いね」

 そう言いながら膝枕で頭を撫で続けてくれる萌々花。


「幻滅しただろ?」

「ううん。ぜんぜん。だって、しっかり話してくれて嬉しいし、守ってくれているのは本当のことだし、漣が頑張っているのを支えられるのはわたしにとっても喜びなんだよ」


 なんだ。俺が萌々花を守ってやるって言っておきながら、結果として守られて支えられているのは俺のほうじゃないか。

 自嘲しながら言った俺の言葉は全部萌々花に包まれて霧散した。敵わねえな。


「ははは。そっか、ありがとう。俺も落ちるとこまで一回落ちたから後は上がるだけだからもう大丈夫だよ」


「バカだね、漣は……」

「俺はバカで甘っちょろくて、エロい男子高校生の見本みたいなやつだからな」



 あ~少し話しただけでもしんどい。喉がカラカラだ。そう言えば何も飲んでなかった。


「萌々花……ドアの横のところにペットボトルのスポドリ置いてあるから取ってきてくんない?」

「ん、あれね。分かったよ。頭おろすね」


 至高の膝枕が無くなってしまったが、この喉の乾きはたまらないので我慢。




 トトトと小走りで戻ってくる足音。カチリとペットボトルの蓋が開く音。


 やっと生き返る。死んではいないけど、この乾きはそんな比喩にピッタリ。


「飲ましてあげるから、口を少し開けて……」

「あい」


 いくらのどが渇いていてもドバドバ流し込まれてはむせるのでちょっとだけ口を開ける。


「ん」


 柔らかいものが俺の唇に触れて、そのまま俺の口内に温まったスポドリが流し込まれた。


 えっえっえっ???? コクン。


 飲んじゃった! なになになにあにあにああいないあにあなないあにあないあいなあばばばば……


 ちゅっという音とともに柔らかいものは俺の唇から離れ、なぜか直ぐにもう一回同じことが起きた。


 目が開けたいけど、開かないし、開いちゃまずいような気もする。


 もう一度、ちゅっという音がして俺の唇は開放される。


「あ、あの。萌々花?」


「ペットボトルは横においておくから飲んでね。十分休んだらご飯ちゃんと食べるんだよ。じゃあ、わたしは上で待っているからね」

 今度はトトトでばダダダっと走って萌々花は道場を出ていってしまった。







「今のは……やっぱり……アレだよな」

 さっきまで動かなかった身体を床の上でゴロゴロさせながらのたうち回ってしまった。


 動かなかった身体は動くし、今はもう目もぱっちりだ。心臓バクバク、アドレナリンはドバドバだ。

 β-エンドルフィンもドーパミンも溢れ出して痛かった身体の鎮痛効果抜群だし気分もアゲアゲ幸福感もものすごい。

 今なら何でも出来る気がする。港まで走っていこうか!



 …………。

 ………。

 ……。



 はい。少しだけ冷静になりました。


「どうしよう。動けるようにはなったけど、今萌々花と顔を合わせるのはものすごく恥ずかしい」


 でも動けるようになった途端お腹は空いたし、いつまでもここに居るわけにも行かない。


 未だに顔が熱い。この状態で父母に顔を合わすのは無理。

 広い道場の隅っこの方で正座して気持ちを落ち着けるのに集中する。



 萌々花の俺に対する気持ちには結構前から気づいていた。下手すると同居を始めたその日から好意は感じていたし。


 それに対する俺は、最初こそ本当に何も萌々花に対し思うところは無かったはずなのだが、それも自ら見えないように蓋を閉じていただけなのかもしれない。


 俺は過去に恐怖し萌々花の思いに真正面から見ようとしていないのに、一方では萌々花のことを守ってやるなどと言うとなんとも矛盾した行動をしていた。


 要するに俺は過去と対峙するのが怖くってなんだかんだと理由を見つけては避けて逃げていたんだ。


「自分の子を憎らしく思い、あまつさえ放り捨てて新しい男の元に行ってしまった母親。萌々花だって同じようなのにな……俺はダメ男だな」




 先に進もうとしていような萌々花は強い。


 ならば俺は命を賭すほどの思いで萌々花を守りきってやる。ダメ男の俺を支えてくれる萌々花の思いに応えよう。

 ただ命を賭けるほどというのが、一体どういったものなのかが今ひとつイメージできないところに俺の足りていないところが現れているのかもしれない。




「うしっ、それを変えるのがこの稽古であり修行なんだ! 父さんの指導――今日のはお仕置きに近かったが――と萌々花の励ましで俺は変わる! やってやる」


 それには萌々花にしっかりと俺の気持ちを告白して、変わっていく俺をしっかりと見極めてもらわないといけないな。


「言うなら今日しかないな……先ずは――」


 ――先ずは上に行かなくちゃだな。顔の赤みは引いたようだし、そのまま風呂に入ってしまおう。



 俺は立ち上がり、一礼して道場を後にした。道場の四隅に設置された管理用のカメラの赤いLEDランプが点灯中であることなんて気づきもしなかった。



 ★+。。。+★+。。。+★+。。。+★+。。。+★



 君方誠治:::


「やってしまった……確かに漣は情けないことを言っていたに違いないが、彼は未だ子供なのだし兄貴の件が済んでから数ヶ月しか経っていないというのに」


 私は彼の親であるといった立場を忘れて、彼の師匠として、漣のツメの甘さについつい追い込んでしまった。


 ただ、やはり漣は漣だった。追い込んで追い込んでとする内に疲れているはずなのにどんどんと動きは良くなり、もう少しで私も一撃入れられそうになった。


 卑怯なことに最後には思わず『止め』の言葉を発してしまった。


 彼には追い込めば追い込むほどその先に見えるものがあるものだと昔指導したことがあった。

 まさか実践でもあそこまで追い込んだ後に伸びてくるとは思ってもいなかった。師匠として親として嬉しい限りだ。


 それにしてもやりすぎた。どうやってフォローをしたらいいのだろう?


 しかも、ももちゃんとの恋愛がらみではないか⁉

 自慢ではないが私もまともな恋愛経験は佳子が初めてであり、経験値は初めの村の村人状態と言われても過言ではない。



 どうしようかと悩んでいると、キッチンの方からももちゃんがやってきた。夕飯の用意をしていてくれたのだろう。



 そうだ。



「ももちゃん、お願いがあるのだけど。聞いてもらえるだろうか?」

「はい。何でしょうか? お父さん」


「あのね、下の道場に漣が伸びているので励ましてやってくれないかな? ももちゃんが行ってあげれば元気になると思うし、ね」


 大人としてものすごくずるい手だけれど、漣にとっては一番のクスリになるはずなのでももちゃんに全部お願いして私は風呂に逃げ込むことにする。


「この休みの間に過去を越えるだけのきっかけでも見つかるといいのだが。私もしっかりしないと佳子に叱られてしまう」


 それは避けたい。

 希望ではなく、マスト。避けなくてはいけない。


「ももちゃんが上手いこと漣に景気付けしてくれたら最高なんだけどな……」

 私は最低に狡いことを思いながら湯船に浸かる。



 ★+。。。+★+。。。+★+。。。+★+。。。+★



 君方佳子:::


 萌々花ちゃんが誠ちゃんに呼ばれてゴニョゴニョ何か言われたあとに血相を変えて階段を降りていった。


 キッチンで萌々花ちゃんと夕飯を作り終えた後、そのままつまみ食いをしていたので覗き見みたいになったけど面白そうなもの見られた気がする。


 誠ちゃんも若干憔悴した感じもあるけどホッとしている様子に見える。


 ただ、私がいることは分かっているはずなのに声もかけずに風呂に行ったということは何か私に知られたくないやましいことがある証拠。

 誠ちゃんは自分では気づいていないだろうけど、疚しいことがあるとすすっと私の見えないところに逃げ込む癖が昔からあるのよね。


 漣くんも見当たらないし、萌々花ちゃんが慌てたように階下に向かったのだから、それ関係で誠ちゃんが何かやらかしたのかしら?


 風呂上がりに追求するのは決定事項ね。


 そんな事考えていたら、萌々花ちゃんがあっという間に戻ってきた。未だ三〇分も経ってなくない?


「あの、わたし、ちょっと上の部屋にいます!」

 萌々花ちゃんはそれだけ私に伝えるとあっという間に階段を駆け登って行ってしまった。

「顔が真っ赤だったわね……これは? ふふふ」




 ジムの各所には安全と防犯のためにカメラが複数設置してある。


 そのカメラの管理室は三階の事務所内の一室で三井マネージャーと私達夫婦しか入れない。


「さてと……誠ちゃんが何をやったのかと、漣くんと萌々花ちゃんが何をしたのかをしましょうね。うふっ」










 はあ、あとで誠ちゃんはお仕置きね。


 あの二人は……もう一回見ましょう。うふふふ。





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