第24話

 本話公開に当たり1話と8話の一部文言を変更してあります。主に言い回しの変更になりますので話の流れには変更はありません。

 先日土曜日に指を挟んでしまいキーをまともに打てません(汗)

 倍ぐらいに腫れているので暫く直るまで定期更新が怪しくなりますが、よろしくご容赦くださいませ~(たったこれだけ書くのに5分以上……)


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「おはよ~‼ 漣。朝だよ!」


 朝日がやっと顔を出したぐらいの時刻に目覚まし萌々花に突撃された。これは早朝寝起きドッキリでしょうか?


「今何時だよ……昨夜は寝るのが遅かったんだからもう少し寝たいよ……スヤ」


 昨夜は学校で起きている良いことも悪いことも含めた様々なことを父母に話した。一番父母に受けがよかったのが須藤とその恋人、佐藤先生の話だったが……


「ねえねえ、起きようよ~ 今日からが楽しみすぎてお目々ぱっちりなんだよぉ」

「まだいくらなんでも早すぎるって……バイト開始時刻は九時からだし……今は……まだ五時前? 後四時間以上もあるじゃん」


「じゃあじゃあ、散歩に行こうよ⁉ ほら帽子被ってさっ」

 俺は帽子を被らず布団を被って再度寝に入ることにする。


「もう! 散歩に行ってくれないなら……そうだ! えいっ、添い寝しちゃうぞ」

 萌々花がもぞもぞと俺の布団に潜り込んできた!


「うひょっ‼ やめい!」

 俺は慌てて布団から飛び出た。


「あはっ! 起きた! 漣が……おき……てる‼ ひゃっ、ばばばばか! えっち‼」

 パチンッ★***



 …………。

 ………。

 ……。



「ごめんなさい……」

「もういいって」

「でも……わたし……漣、まだ痛い?」


 萌々花が俺の布団に入ってきた時、俺はパンイチTシャツ。自宅ではリビングのソファーで未だに寝ているため、一応、萌々花を気にして短パンもしくはスウェットのパンツぐらいは穿いているけど昨夜は気を抜いてしまった。


 そんな服装な上、男の子の朝だよ。分かるだろ? 身体も頭も起きていないのに一箇所だけ元気に起きているところにキミも覚えはないか?


 布団から飛び起きたら、布団の中から見上げる萌々花と俺のがおはようのご挨拶をしちまったんだよ……


 それにびっくりした萌々花は態々立ち上がって俺の頬を平手打ちしたということ。

 お陰で目はぱっちり覚めたけど、は意気消沈。大人しくなった。


 父母には気づかれた様子がないので良かったけど、この散歩が終わるまでに頬の紅葉が消えてくれないと何かしら言われるよな……とほ。



「前から漣には聞いていたけど……見たのは初めてだから……あの……」

「萌々花? もういいって。それ以上言われると俺も恥ずかしからもうお終い、な?」


 一緒に暮す以上、なにかある度に騒いでいられたんではたまらないと思い、ある程度は遭遇してしまいそうなオトコノコのあれこれは話せる範囲では萌々花に教えておいた。


 ギャルな格好をしていたのだからある程度は知っているものと思っていたのにかなり萌々花は初心だったので俺がエロい言葉責めしている気分になってしまい、あのときはおかしくなりそうだった。


 その中の一つがオトコノコの朝の生理現象だった。普段俺のほうが先に起きていることが多いので初遭遇だったのだ。

 下着越しとは言えあんなモノ目の前に突如現れたらそれは驚いても仕方ない気はする。でも平手打ちは……ないよなぁ。



 何処にでもあるような街並みを眺めながら二人並んで散歩する。


「そういえば、学校行くとかはあったけど、二人で散歩したことは無かったよな」

「そうだね。誰かに見られたりしたらどうしようとか、最近では尾行だっけ? あんなのもあったから二人で並んで歩くことさえ無かったもんね」


「そうだな。じゃあ、萌々花に起こしてもらってこうやって散歩できたのも良かったんだな。初体験だもんな」

「えへへ。初体験だぁ~ ねえ、手。繋いでいい?」


 ん? どうした。いや……そんな上目遣いでおねだりするように言われちゃうと……ね?


 俺は萌々花の手をそっと取ると軽くキュッと握った。所謂恋人繋ぎじゃなくて普通のやつな。


「ん……ありがと」




 俺も手を繋いでかなりぼ~っとしていたようだ。舞い上がっていたっていうの? 恥ずかしながら……


「ここ何処だ?」

「え? 知らないの? スマホは?」


「忘れてきた」

「もう! じゃあわたしので地図出すから住所は?」


「住所? あれ? 何だっけ?」

「もうもう! 君方ジムで検索するからもういいよ! 漣ってホント方向音痴なんだから‼」


 俺の迷子イメージが更に補完されてしまったようだ。



 地図アプリのお陰で迷うこと無く七時ちょっと過ぎには家まで戻ってこられた。


 文明の利器と萌々花さんに感謝です。

「それ以外に言うことは? 漣」


「ごめんなさい。迷惑かけました」

 行きと帰りで立場が逆転してしまった。


「うむ。よろしい。それで、迷子になるほどぼ~っとしたのはわたしと手を繋いで舞い上がってしまったということでよろしいのかな?」

「ぐぬぬ……」


「よろしのかな? かなかな?」

「はい……そうです。たぶん」


 本当は多分ではなくてその通りなんですけど、見破られていたのを認めたくないので『たぶん』を付けます。


 何だどんどん駄目になっていく自分がいる。そうなっちゃ、それこそ駄目なのにな……


「もう、可愛いね。れん君」

 萌々花に頭を撫でられてから玄関ドアをくぐる。


「あら、おはよう。漣くんたちは何処かに行っていたの? 漣くんはやけに嬉しそうね?」

 萌々花に頭を撫でられて思わずニマニマしてしまったようだ。やばい!


「漣。ちゃんとみたからね?」

 しっかり萌々花には見られていたようだ。


「お母さん、漣たら酷いんですよ――」

 萌々花と母さんの二人は連れ立って朝食の用意に台所に向かったようだ。


「漣、おはよう」

「おはよう、父さん」


「一七時半から道場で稽古をつける。試合のための鍛錬ではないから、多少の怪我は覚悟しておけよ」

「はい」



 今回俺の一番の目的は父さんに稽古をつけてもらうこと。カッコよく勝つためではなくズルくても汚くても確実に相手よりも有利に立ち萌々花を守るために。


 力づくで物事を決めるのは良くないことだってぐらい俺も分かっている。


 だけどな。


 今、萌々花に危害を加えそうな風見鶏って野郎は何をしてくるか分かったもんではない。既に自転車を破壊するといった物理的実害が出ているんだ。

 絶対に萌々花には指一本触れさせない……



 ★+。。。+★+。。。+★+。。。+★+。。。+★



 俺と萌々花のバイトの内容は本当に雑用係といった感じだった。

 掃除に片付け、連絡業務。

 お客様の入館受付などを除きほとんど一日中動きっぱなしだった。


「うへぇ~ 結構動いたねぇ~ 時間が空いたら自分でもトレーニングとか思ったけどわたしには無理かも~」


「まあ、初日だからね。二~三日すれば慣れるよ。お疲れさま」

 三井マネージャーにコメントを頂き本日のバイトは終了。


「漣はこれから稽古をでしょ? 無理しないでね」

「ありがとう。萌々花は上に行ってゆっくり休むといいよ。明日もお客さんいっぱい来るらしいからね」


「うへぇ~ わかったぁ~」

 萌々花はそう言うと住居用の階段を上がっていった。


「さてと……行きますか」

 ジムの事務所を出て奥に向かっていくと道場がある。


 平日などは子供向けの空手や柔道、剣道など多種多様な格闘技や武術などを講師を招いて行っている。


「失礼します‼」

 挨拶をして道場に入る。父さんは既に道場で待っていてくれたようだった。


 父さんの目の前に正座し、一礼をする。


「漣。私が以前彼女が初めて我が家に着たときの帰り際にお前に伝えたことを覚えているか?」

「はい。覚えています」


 あの時父は『私達は漣がおかしなことはしないだろうことは信じている。ただ、彼女の生い立ちや出会いも一緒に暮らすことも全てイレギュラー尽くめだ。今後も大変なこともあるだろう。それでも漣は自分の意志で決めたのだ。ももちゃんをしっかりと守ってやるんだぞ』と檄を飛ばしてくてた。


「それに対して漣はどう答えた?」

「……俺の第一の目標は過去を越え断ち切ることだからな、みたいなことをいった覚えがあります」


 過去を乗り越え断ち切る………ああ……。


「気づいたか。今の漣はどうだ? 確かに何年間も苦しみ続けてことだから簡単に断ち切れるものではないことぐらいは私にも分かる。だがな――」


 父が立ち上がる。


「――何時迄も目をそらし続ける甘っちょろさで、お前は彼女を守れるのか? 自分自身のことでさえ未だどうにも出来ていないにも関わらずに。腕力だけでは解決しないぞ」


 何も答えられなかった。


 イチから全てをやり直す覚悟などと豪語して強引に一人暮らしを始めて、成り行きとは言え萌々花を自宅に住まわすなどしているくせに、結局初志しょしには目をそらし向き合おうともしていなかった。


 まったく……父さんの言った通り。


 実両親は愛し合って一緒になったはずなのに最後は憎しみ合って、愛していた印だったはずの子供、この俺さえも要らないものとしていた。

 俺も彼らと同じ様になってしまうのではないか、また誰かに裏切られるのではないかという不安。


 怖かった。いや、今でも怖い。


 それならば、愛や恋などに目を向けず、ただ萌々花と一緒に暮らすだけのほうが幸せなのではないかとずっと心のうちに隠して気づかないふりをしていた。


 それは、いわば俺自身だけでなく、萌々花が心変わりするって疑っているってこと、萌々花を信用していないのと同義。


 ずっと俺は誰に対しても信用できないわけでも信用したくないわけでもなかったが、また裏切られるかもという思いがよぎり、どうしても信頼を寄せることが出来ないでいでいた。


 それを俺は萌々化に対しても行っている。たかが一月、されど一月。存外に濃密な時間を一緒に過ごしてきたはずだったのに。


 その自分自身の気付きに愕然とする。

 壁に向かって独り相撲。

 その場しのぎの空回り。

 信用できないって何を言っているんだ? 最初から俺はダメ人間から一つも抜け出していないくせに……


「俺はいったい今まで何をやっていたんだ……」

 萌々花のことを思い、萌々花を助けたい、萌々花を守りたい。それに嘘もまやかしもないことは断言できる。


 ならばどうする。俺は何を成すべきか?


「師匠。稽古、よろしくおねがいします」

「ふむ。この稽古の意味は見いだせたのか? 手加減はしないぞ?」










「…………痛え……」

 久しぶりにボコボコにされた。


 明日もバイトがあるので顔には当てられなかったけど、ボロボロのクタクタで瞼さえも開けられない。


 最後まで師匠には一発も当てることは出来なかった。

「もう少しぐらい出来るようになっていると思ったのにな……身も心も成長がないや」


 過去が足かせとなり、迷いとして現れている。父にはそう言われた。

 全くもってその通りなのだが、俺はどうすりゃいいんだろう? この稽古の意味……迷いを断つ……か。


 稽古前の意気込みから何から何まで崩れてしまった。余りにも情けなくて泣けてくる。



 カチャリ

 道場に誰か来たようだが、どうにも動けないので大の字に寝転がったまま様子だけ窺う。




「漣……」

 萌々花だった。





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最後までお読みいただきありがとう御座います。

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