第18話

週末です。この土日は非常に忙しいので、日曜日と月曜日の0時更新は出来ません。申し訳ございませんがご容赦くださいませ。


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 週明け月曜日。


 学校の授業も今日から平常運転に切り替わる。

 ほぼ空っぽだったバッグに教科書とノート類がたっぷり詰め込まれたので久しぶりの重さに肩が痛い。


「萌々花はどうするんだ?」

「何が?」


「格好」

 ギャルで行くのか、非ギャルで行くのか?


「う~ん。取り敢えずいきなり変わりすぎるとそれもおかしいと思うから、今日は今まで通りにして、徐々に大人しくなろうかなって思うんだけど。どうかな?」


「そうだな。いきなりコロッと変わるとそれもおかしく捉える奴らもいるかも知れないしな。うん、そうしておこう」


 先ずは風見鶏グループから離れて、俺達の方に来ればいい。


 もしもっと仲良くなるやつが他にいたならソッチを選んでも構わないさ。

 萌々花が安心して過ごせるのならなんであろうと俺は構わないと思っている。


「今日はバイトがあるから自転車で行くからね。北山さんと仲良く学校に行ってね……あとから直ぐ追いつくから」

「北山さんはジンのだし。行ってきます(バタン)、え? なに?」


 丁度玄関のドアが閉まったところだったので、最後に萌々花が何を言ったのかまでは聞こえなかった。


 再度ドアを開けて聞いたけど「忙しいから邪魔しないで!」と言われただけだった。

「ま、いっか」




 もう待っていてくれなくてもいいのに律儀に駅の階段下で北山さんが待っていてくれた。ただ……

「おはよう北山さん、とジン。なんで態々ジンまでこんなところで待っているんだよ?」

「沙織がレンのこと待つっていうからさ。どうせなら僕も待とうかなって思っただけだ」


「ふ~~~~ん。まっいいけどね」

 俺が胡乱げな目でジンを見たら如何にも嘘ついていました風に目を泳がしていた。耳赤いぜ?


「良かったね。北山さん」

「ん? なんのこと、君方くん」

「気にしないで。ささ、行こうか」


 ジンは乗ってきた自転車を押しながら北山さんと並んで歩いている。

 俺はその後ろで二人を眺めながら時折話に混じって一緒に歩いて行く。


「沙織ちゃーん!」

 後ろの方で声がする。


「あ、萌々花ちゃん! おはよー」

 え? 萌々花がもう来たのか。早くね⁉


 振り返るといつものギャルファッションの超ミニスカートですごい勢いで自転車を漕いてくる萌々花がいた。


 なんであんなに短いスカートなのに見たいところは見えないのだろう? ほぼデンジャラスゾーン直下までしかスカートの布切れがないっていうのに……


「ジン。北山さんに言いつけるぞ?」

「い、いや。なななな、何をだ?」


 動揺しすぎだろ。大丈夫、友だちの不和は俺の望むところではないから。ただ萌々花の脚をそんな目で見るなら許さないだけだ。


「北山さんもミニスカートにしてみたらどうだ? ジンは喜びそうだぞ? ほら」

 北山さんもジンの目線に気づいたようだ。眼鏡の端がキラリと光って、ジンに詰め寄っていった。


「おはよ。き、みがった、くん」

「おはよう。鈴原」


 萌々花は言葉を噛んだ自分に比べスムーズに言葉を綴った俺が気に食わなかったらしい。キッと睨んで足を踏んできた。

 だがな……俺、今日はワークシューズ履いているんだよね。ノーダメージ!




 自転車を転がしてもう少しで学校に着く。

 機嫌が悪くなった萌々花に自転車を押し付けられて俺が運搬係を申し遣ってしまう。


 萌々花と北山さんは手ぶらで俺とジンの後ろを楽しげに話をしながら歩いている。

「なあ、レン」

「ん?」

「レンと鈴原さんてやっぱ付き合ってるだろ? 僕と沙織よりもおまえら二人の方がいちゃついているように感じるんだけどさ」

 いちゃついてはいないが、まあ、一緒にいる時間は相当長いからな。たった一〇日間ほどとは言えずっと家では一緒にいるからな。濃いぞ?


「もう北山さんとの間が心配になったのか? 俺と鈴原の間柄のほうが上だなんて言っていて大丈夫なのか?」

「な、何を言っているんだ。僕と沙織の仲のほうが良いに決まっているだろ!」


「じゃあ、それでいいじゃん。俺と鈴原は天下の学級委員様だからな、仲違いしていられないよ」

「ン~ そういうんじゃないんだけどな。まあ良いや。そういうのは追々で」


 誤魔化せたかな? 確かに俺と萌々花の仲が良いのは間違いなさそうだけど、付き合ってはいないからな。

 嘘はついていないからセーフ。


 駐輪場に自転車を停めてそのまま四人で教室まで一緒に行く。


 拓哉と雫ちゃんは今朝から部活の朝練があったようで、既に教室でいちゃついていた。

「おはよ。朝からイチャつく余裕があるなんて練習が足りないんじゃないのか?」

「久しぶりの朝練だからクタクタだよ。漣こそ綺麗どころ連れて朝からお戯れが過ぎるのでは?」

「拓哉……流石に朝からおっさん臭いセリフは目に染みるぞ?」

 ジンも北山さんも呆れているぞ。萌々花だけ何を言われたのかわからないのかポケッとした顔しているが。


 一度各人荷物を自分の席に置いてから、また俺と拓哉の席に集まってくる。


 萌々花はどうしようか迷っているらしいので、北山さんにお願いして呼んできてもらった。

 俺がここで変に動くよりは北山さんのほうが違和感はないだろうと思い、俺から北山さんにお願いしていた。


 北山さんはそのまま真面目っ子な見た目だけれど、雫ちゃんは明るく人懐っこい人だし、制服の着崩し方も萌々花よりは大人しめだけど似たような感じだ。


 この二人が一緒にいても違和感はないだろうと思う。そもそも北山さんと雫ちゃんが一緒にいるのだから一々気にすることでもないとは思うのだけど、どうしても慎重になってしまう。




 教室の後ろ側の付近が小うるさくなってきたと感じたら、風見鶏一派が教室に入ってきたところだった。


 風見鶏一派のメンバーはいつも変わらずの全六人だ。一年のときはどうだたんだろうという疑問もあるが、俺もそこまで彼奴等に興味はない。

 リーダー格は風見鶏本人。名前は我無為ガムイだそうだ。腹痛い……腹筋が鍛えられる。


 いつも隣にいて『アタシが風見鶏のオンナよ』的なのが射殺すギャル女こと吉見優。今も俺と萌々花のことを射殺す眼光で睨んでいる。怖い怖い。


 見た目で申し訳ないが頭の軽そうな色白ふくよか女が横網重光よこあみしげみで、やたらと背の高い昭和のスケバン風なのが三原純と言う女。

 男も二人。戸影克斗とかげかつととか言う如何にも損切りされそうなやつ。今から彼は損切くんと呼ぶことにしよう。

 後もうひとりが、金魚雲虎かねともこと言うらしいが、金魚のフンのように風見鶏の後ろを付いていっている卑屈そうなやつ。



「ったく。タリーな。おい、克斗。自販機行ってコーヒー買ってこいよ」


 HRまで後五分少々だっていうのに自販機のある食堂まで買いに行かせるのか?


 何の疑問も持たずに損切くんはコーヒーを買いに行ってしまった。すげーな……

 風見鶏は俺達と一緒にいる萌々花に目線を移し、ニヤリと如何にも奸物かんぶつっぽい小汚いニヤケ顔を晒していた。


「うわっ、何あいつ。キモチワル! 萌々花ちゃんあんな奴のことは無視していいからね。あたしと沙織ちゃんがついているからね!」

「そうだよ。君方くんもいるし、あんな親の七光り外したら何も残らないやつなんか気にしちゃ駄目だよ」


 雫ちゃんと北山さんの言葉は心強いはずだ。当然ながら俺も全力で萌々花をフォローする。

 ただ、奴らがどういった行動に出るかについては全く見当がつかないので用心だけで精神をすり減らしそうだ。



 丸一日普通に授業を受けてそのまま放課後となった。

 風見鶏グループも特に何かを仕掛けてくることもなく、HRが終了した直後には学校を出ていっていた。

 最後の最後に嫌がらせの一つでも残していくのではないかと警戒していたが、昇降口から彼奴等は出ると真っ直ぐ校門を出ていってしまった。



「昼休みもずっといつものように食堂で馬鹿話を大声でしていたな」


 ジンは北山さんと食堂で昼飯をとっていたようで、その時の様子を教えてくれた。

 昼飯はジンと北山さんはいつも食堂、拓哉は雫ちゃんの手作り弁当を中庭のベンチで食べるらしい。一緒にどうだと拓哉に誘われたが『学級委員の仕事を昼の間にやっておきたくてな』と誤魔化しておいた。あの二人のイチャつきに耐えられる自信がない。


 教室で嘘くさい偶然を装い萌々花と昼食を共にする。


 俺の昼飯はマンション前のコンビニで買った惣菜パンなど。萌々花は俺の手作り弁当だ。

「ねえ、漣」

 萌々花が小声で話しかけてくる。教室に残っている人数は少ないが小声で話さなければ丸聞こえだろう。


「なに?」

「なんで私が漣の手作り弁当で漣がコンビニで惣菜パンなのよ? おかしくない?」

 そんなにおかしくはないだろう。


「だってさ。教室で萌々花とお揃いの弁当を食べるにはどう見てもハードル高すぎだろう? それに反対に俺がその弁当を食うとしたら萌々花は昼飯を抜くだろう?」

「うっ」

「図星だろ?」

 節約なのか何なのか知らんが、飯を抜くなんて俺は許さない。ちゃんとお腹いっぱい食わせてやる。


 昼休みにはそんな会話をしていたので、教室でもこれといった動きは見受けられなかった。



「何もないならそれに越したことはないな」

「そうだね。取り越し苦労ならソッチのほうがいいや」


「だな。萌々花はこのままバイトだよな。帰りは迎えに行くから勝手に帰るなよ」

「過保護だなぁ……でも、ありがとう」


「ん」

 駐輪場までは一緒に歩く。意外と俺が誰かと一緒にいても周りは気にしないものなのだな。


 学級委員同士っていうのがいい隠れ蓑になっているのかもしれない。

 カリカリして気にしているのは風見鶏と射殺す眼光ギャル女ぐらいだな。



「……ねえ、漣」

「どうした?」

 萌々花の指差す先にあったのは、ぼろぼろになった萌々花の自転車の残骸だった。



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最後までお読みいただきありがとう御座います。

大変です。事件です。この先どうなってしまうのでしょうか???

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