第16話

昨日の15話で4100で長くてスミマセンていった覚えがありますが……今回4300です(汗)。あれ? おかしいな? 本編中にでてくる店舗には本当にある店がモデルなものありますので探してみてください(誤魔化し)では、頑張って読んでください。


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 珍しく萌々花も俺も寝坊した。でも土曜日なので無問題。


 さて今日は買い物。


 本当は食料品だけ近所のスーパーマーケットで買い揃えて終わりでいいやと思っていたのだけれど、そうは問屋萌々花が卸さずに今電車に乗って都心に向かっている。


「服なんてなんでもいいじゃないか?」

「わたしもファッションなんてちんぷんかんぷんだけど、今着ているパーカーのセット以外に漣が持っている服はジャージばっかりっておかしいと思うんだよ」


「そうかな?」

「そうだよ」



 昨夜『いつも同じ服を着ているけど、気に入っているの?』と萌々花に問われて正直にこれしか持っていないと答えたのが運の尽きだった。


 正確にはもう数枚持っていることは持っているが、今の季節に着られるのはジャージのほかでは現在着ているものとあと一セットぐらいかもしれない。

 うず高く積まれた未だに開けてないダンボールに服が入っているかどうかも今や不明だ。


 これらのダンボール箱も早く開けろと萌々花に昨夜叱られた。

 解せぬ。



 そういうことで、日暮里まで来ている。

「なんで日暮里なんだ? 池袋駅の周りはファッションビルとかいっぱいあるんだろう? さすがの俺でも知っているぞ?」


 服を買い足すぐらいなら池袋などと言わず、近所のショッピングモールでも十二分に間に合うはず。

 でも俺と萌々花が一緒にいたらあらぬ疑いがかけられるかもしれない。


 拓也を始めとした北山さんたちに分かってもらうまで本当に大変だった。

 俺と萌々花は恋人同士でもないってことは最後まで本当に理解してもらえるのが大変だった。

「分かったよ。もうそういうことにするよ」

「大変だね。萌々花ちゃん」


 雫ちゃんも分かってくれたようだし、北山さんも萌々花の大変さを理解してくれた模様。良かった。




 電車一本で到着する池袋の各種ショッピング店を彷徨うろつくものだと思っていた俺はそのまま山手線に乗り換えると萌々花に聞いて驚いた。


「え? まさか渋谷とか原宿くんだりまで行ったりするのか?」

「行かないよ。それにわたし渋谷も原宿も過去二~三回ぐらいしか行ったことないから怖くて行けないよ」


「流石に怖くはないだろう……で。じゃあ、何処行くんだ?」

「日暮里。わたしもすごく久しぶりに行くの」

 日暮里? 馴染みがないな。萌々花が行きたがるほどのお気に入りの洋服屋があるのかな?






「洋服を買いに来たんじゃないのか?」

「最終的にはその予定だけど、先ずは腹ごしらえね。すごく久しぶりだから楽しみなんだぁ」


 ワクワクが止まらないのは見ていて分かるのだけどな。ここはどう見ても洋服屋ではない。

「ラーメン屋だよな」


「そうだよ。当たり前だよ、漣には他に何に見えるの?」

 いや、ラーメン屋一択だけどさ。


「さささ、席につこうよ‼ 漣も担々麺でいいよね。すみません! 担々麺を二つお願いします」





「はあ……美味しかったね」

「……」


「え? 駄目だった?」

 一瞬でシュンとしてしまう萌々花。


「いやいや違うよ。美味かった。それもかなり、な」

「ホント⁉ だったら良かった。そうしたら何でそんな変な顔するの?」


 だって服を買いに行こうって言われて、全然目的と違うところに来ている気がして不思議なのだよ。


「あ、ごめん……わたしも服が欲しかったから作ろうと思って。だから布屋さんがいっぱいあるここに来たかったんだよ……」

 またもやしょぼんとウサ耳が折れてしまった。


 それにしても。

「作る? 布屋? んんん? 萌々花の言っていることが見えないのだけど?」


 萌々花は服を以前から服を買うお金が無かったので、中古のミシンと生地を買ってきて自分で服を縫っていたそうだ。


 最近こそ洋服は縫っていなかったが、この前引っ越すときにそのミシンが出ていたことからまた服作りをやってみようと思い、今日俺をここに連れてきた次第だった。

 今日萌々花が着ているチュニックとかいうワンピースの短いようなやつも自分で縫ったそうだ。冗談抜きで萌々花が手作りしたものだとは思っていなかった!



「要するに荷物持ち要員ってことだな」

「えへへ、そういうことになります。安くってたくさん買うとすごく重いんだよね、生地って」

「だから、ショッピングカートを持ってくるって言い張ったんだな」

「あは! バレた!」



 ナスだかキュウリだかトマトだかよく分からない名前の生地屋さんを数件周り結構な量の生地を買う。


「漣、漣! こっちのメーター一〇〇円のとこっちの二〇〇円のとどっちがいいと思う?」


 なんだか女の子と服を買いに行ったときの『どっちがいいと思う?』と相当違うと思った。これはかなり違うよ。


 俺、ちょっとだけ夢だったんだよな。ラノベで読んだことあるこれって。


 まさか初めてが洋服にもなっていない生地の段階でのどっちがいい? で、しかもメーター当たり一〇〇円と二〇〇円。


 俺にはその二つの違いが全然わからないんだけど?

「ど、どっちもいいと思うから両方買ったほうがいいと思うな。後でやっぱりあっちもっていってもそれなりに日暮里って遠いからな」


「そうだよね~ じゃあ両方とも買ってくるね!」

 俺の答えは正解だった模様だ。


 他にも何点か購入してホクホク顔の萌々花。嬉しそうで何よりです。




 いちご大福のいちごがオバケの舌のように見える和菓子を買って道端でペットボトルのお茶片手に休憩する。


「上手いな、これ。甘さと酸味が丁度いい」

「美味しいね。歩き疲れたところにこの甘さと酸味は嬉しいよね!」


 ペットボトルのお茶は、まるまる一本は飲めないから一口だけ頂戴って萌々花が言うから一本しか買っていない。


「そ、それって間接キス! ドキドキ!」

 とは残念ながらならない。既に一緒に暮らして一週間。一つの大皿料理をそれぞれ直箸で取って食べているのだ。


 それにさえ気づいたのは三日ほど過ぎた後だったので今更なのだよ。俺と萌々花が一つのコップで麦茶を飲むのなんてザラだ。羨ましいか?

 実質一人暮らしだった俺達のっていう残念な習慣が理由なのだけどな。



「よし、じゃあ行こうか!」

「今度は何処に行くんだ?」

 休憩を挟むくらいなのだから駅前のビルってことはなさそう。


「アメ横だよ! レッツゴー!」

「はい?」


 何処だって?


「アメ横だよ。有名人がたくさん埋まっている墓地突き抜けて上野公園通ったら歩いて三〇分ちょっとだよ。さあさあ、行くよ~」

「お、おう。埋まっているって……言い方ぁ~」


 ちっこいショルダーバッグ一つの萌々花とパンパンに生地の詰まったショッピングカートをガラガラ引いている俺。

 なんともシュールな絵面だけど、俺もこんな買い物って生まれてはじめてだからすごく浮かれているのは否めない。


 いや……すごく楽しい。


 いつも必要なものを必要なときに直行で行って買って、直帰するだけの買い物だったので人の買い物に付き合うのもこんな風に振り回されるのも初めての経験だ。


 この前のホムセンでの買い物なんて目じゃないね。あれで買い物したって満足していては駄目だったな。


「おーい。待ってくれよ、あはは!」









 ……なんてさっきまで喜んでいた俺。今の俺に謝れ。


 上野公園まで歩いて来たのは、良い。いや、そこまではマジで楽しかった。


 今はどうだ?

 苦痛だろ?


 ショッピングカートがものすごく邪魔だよな。


 何で上野駅のロッカーに預けてこなかったんだ?

 確かに駅構内は通らなかったけれど、見えていたよな?


 この混雑ぶり。久しぶりのアメ横だけど、これは甘く見ていた……


「ねえ、漣。これなんか似合うんじゃないかな? あ、こっちも良さそう!」

 俺の服を選んでくれている萌々花に『萌々花の生地が重くて邪魔で辛い』とは言えない。


 さすがの俺でもそれは無理。


「あ! 帽子もあるよっ、漣ってキャップもよく被っているよね」

 うん、寝癖隠しだけどね。よく見ているね。


 ふと見た路地の先に貸しロッカーの文字。

「ねえ、萌々花。もう少しちゃんと見たいからこのカートは預けてくるね。ほら、あそこのロッカー屋でさ」


「うん、そうだね。それ持っていると奥まで入っていけないもんね。ごめんね、もっと早く気付けば良かった」

「いいや、構わないさ。言わなかった俺も俺だしな。じゃ、ちょっと行って預けてくるから一人でどっか行くんじゃないぞ?」


「子どもじゃないんだからうろちょろと何処かにいなくなったりしないもん」




 コインロッカーだと思って入ったら、荷物預かり所みたいなもので人がいたので驚いた。クロークみたいなものだな。

 先払いで幾らか払ったら、交換チケットを受け取って直ぐに萌々花のところに戻る。


 さっきの『何処かにいなくなったりしないもん』を俺はフラグと見た。


 それなので、この前インストールしておいたGPS追跡アプリを起動する。当然ながら萌々花の同意の上でだぞ?

 元はと言えば、俺があまりにも萌々花の前で迷子になるので最初は俺のスマホにだけインストールされたのだったが結局二人でインストールした。相互監視だね。やらないけど。




 さて案の定、何処にも居ない。

「冗談のつもりだったんだけど、こんなモノをまさか使うとは思わなかったぞ? 本当に萌々花、いないじゃん」


 ついさっきまでいた洋服屋に萌々花の影も形も無く、慌ててアプリを確認すると今俺がいるところから一〇〇メートル位先を移動している。


「電話もかけられずに移動ってことはトラブルですか?」

 俺は混雑した商店街で足早に追跡行動を開始した。









 大した手間もなく五分弱で萌々花と合流した。


 予想していた通り、しつこいナンパから逃げていた模様。

 客観的に見て、今日も萌々花は可愛らしいですからね。


「よう、兄ちゃんたち。俺の彼女に何してくれるの? こんなに怯えさせてよ⁉」


 取り敢えず誠治父さんの教え通りに凄んでみた。彼女でなくても彼女というのが肝だそうだ。俺の見た目じゃあまり意味なさそうだけどさ。


「ああん? 何だ、このヒョロガリがよ! てめぇが彼氏だと? ぜんぜん釣り合わねえのに嘘つくんじゃねえぞ!」


 やっぱりそう思いますよね⁉ 分かっているけど他人に言われると凹むよな。



 片方の男が俺の胸ぐらを掴むが、彼ってば俺より頭半分ほど背が低いし、その掴み方もなっちゃない。

 胸ぐらを掴ませたまま、そいつの手と腕を取り、くるりと回してあっという間に地べたに転がしてやる。


 一瞬キョトンとした顔をして、男二人は顔を見合わせたと思ったら脱兎のごとく雑踏に消えていった。

「えっと……よわっ」



 その後萌々花は余程怖かったのか俺の腕にしがみついて、俺の腕に自分のおでこをグリグリしながらブツブツと何かつぶやいていた。


「えへへ……かのじょ……えへへ……」


 暫く買い物どころではなかったのは言うまでもない。


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最後までお読みいただきありがとう御座います。

長かったですね。次回もやや長そうです。

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