第15話

萌々花回です。長いです……スミマセン本文だけで4100あります。頑張って読んでいただけますと有り難いです。


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 木曜日、朝。


 今日から学校でも会話してみよう、と漣から謝罪と提案をされた。


 どうもわたしが学校で不機嫌な顔をしていたらしくそんなことを言ってきたようだ。

 学校ではわたしは、ギャルっぽく笑っているか無表情かのどちらかだったはずだが何故気づく?


 まあ、漣らしく微妙な提案だったけれど学校でも漣と話せるのは嬉しくないわけないのでOKした。

「ああ、うん……まあ、とりあえず前進ってことで」

 そう言ったわたしの応えに少し漣は怪訝そうだったのはなぜなのか分からなかっったけど。



 その後漣に一緒に家を出ないかと提案される。


 少し考える。というか、躊躇ちゆうちょしてしまった。風見達にもし見られたらって。それで、もし漣が絡まれたりしたらどうしよう。


「いいんじゃないかな? 今日は木曜日だからバイトも休みでしょ? あ、でも萌々花が嫌だって言うなら無理強いはしないから」


 でも漣が気にしていないなら構わないと思った。思ってしまった。それに一緒に登校する姿を想像してみると……ちょっといいかも。誘惑には勝てなかったの……


 漣と並んで歩くことを考えるといつものギャルメイクはナシ。時間も無駄にかかるので軽くリップと日焼け止めだけで済まして一緒に玄関を出る。


「フンフンフン♪」

 思わず鼻歌も出ちゃうぐらいに楽しい! ただ一緒に漣と登校しているだけなのにね!




 駅までやって来た。

「んじゃ、このままここを抜けていくから……ってどうした、萌々花」


 わたしは足を止め、階段を見上げた。


 思い出した。一人呑気に漣と一緒の登校を喜んでいる場合ではない。この向こうに……

「やっぱり見られちゃまずいよな?」

「この向こうに北山さんがいるのですね」

 そう、あの娘がいるはず。


「え?」

「え?」


 どうも漣とは認識の違いがあるみたい。北山さんに見られるとまずい? どうして? 敵前で別行動する意味ないじゃない。むしろ一緒にいないと駄目よ。


「あ、いや。あの娘がいるかどうかはわかんないよ。今週たまたま一緒になっただけかもしれないし、今日は特にいつもより遅い時間だしさ」


「ううん。いるね、ゼッタイ」

 わたしの勘では間違いなくいると思う。


「萌々花は北山さんのことが苦手だったり嫌いだったりするのか?」

「ううん。そんなのじゃないよ。苦手意識もないし嫌いになるほど彼女のことは知らない」


 苦手? 漣は何の話をしているかしら?


「負けたくないの」

「へ? 何に?」


 ゴホゴホ……つい、本音がこぼれてしまった。わたしは慌てて誤魔化す。

「何にでも! 漣は気にしなくていいから!」


 そういってわたしは漣の手をぎゅっと掴んで駅の階段を登り始めた。

「え? え? どうしたんだ、萌々花? こんなところで手を繋いでいたら勘違いされるぞ」

「……いいもん」


「え?」

「勘違いでもなんでもいいもん」

 ああ! 何でそんな事言っちゃうの! わたし! でももう止められない!


 コンコースを抜け下りの階段を降りきったところに、わたしの思った通り北山さんがいた。


 北山さんはわたしと漣が手を繋いで階段を降りてきたことに驚いたのか目を見開き口元を両手で押さえていた。


「おはよう、北山さん。ちょっとこれには訳があってね……」

「漣、訳なんてないよ。見たまんまだよ」

 わたしはもう無我夢中でそう言い放つと、北山さんを放ってずんずん歩いていこうとした。


「びっくりした。君方くんと鈴原さんてお付き合いされてたの? でも、君方くんて編入してきたばかりだよね?」


「え? お付き合い?」

 漣が驚いている。わたしも驚いた!


「だって、朝から手を繋いで登校するなんてカップル以外じゃありえないじゃない? 雫ちゃんだって最近になって初めて手を繋いで学校に来ていたし」


「あ、そうなんだ……」

 漣はそう呟きながらわたしのことを見ているに違いない。

 わたしは顔を背けているけど、気づかれないかな? 顔が、耳が熱い……


「やっぱり学級委員が一緒なのがきっかけなの?」

「いやそういう訳じゃないけど……それより今日も北山さんは俺を待ってたのか?」


 わたしは漣の北山さんに対するその問いかけにピクリとして握る手に力が入ってしまった。


「うん。偶然とは言え三日も一緒に登校していて急に無視するように先に行ってしまうのも失礼かなって。でもお邪魔だったみたい――」


「いやいや、とんでもない。ご丁寧にどうも」

 北山さんはまだこの地に漣が慣れていないだろうからって気を使ってくれていたのかもしれない。


「――それに君方くんが鈴原さんとお付き合いしているなら私も向波くんの告白を受けても大丈夫だよね」


「「は?」」

 わたしと漣の声が見事にハモりました。



 その後北山さんが漣と一緒に登校していた理由を聞き、わたしの勘違いが炸裂していた事に気づきました。

 わたしは北山さんに漣が取られてしまうのではないかと危惧してあんな行動をとってしまったのです。


 そもそも何故わたしは漣が取られると思って取られちゃ嫌だと思ったのだろう。


 暴漢から助けてもらって、住処を提供してくれるから? 泣き虫のわたしを慰めてくれるから? わたしと同じで寂しい人だから?


 違う。そんな表面的なことだけではない……


 漣と一緒にいたい。ずっと一緒にいたい。たった数日なのに、漣に会ってまだほんの一週間後なのに?

 どうしちゃたんだろう、わたしは?



「萌々花……」

「……」

「も、も、か」

「………ぃ」

 漣がわたしを呼んでいる。なんとかやっと返事をする。


「えっと、どういうことか後で説明な。もう学校に着くから放課後、うちに帰ったら説明してもらうよ」

「……は、い……」

 どうしよう。説明って……私自身が分かっていないのにどう説明をすればいいの?



 そのままわたし達は教室まで一緒だった。さすがに手は離したけれど……

 チラチラと視線は感じたが今はそれどころではないの。

 自分の席に着き机に突っ伏して、自分の行動の理由を考えていた。もう、周りの音なんか全く聞こえていなかった。



 ★+。。。+★+。。。+★+。。。+★+。。。+★




 LHRが始まった。今日は学級委員のわたし達が司会進行役になっている。


 人見知りするとか言っていた漣はそんなことは微塵も感じさせずにどんどんと進行して議題を決めていく。漣のは人見知りではなくて、他人を拒否しすぎていたせいで話しづらかっただけだと思うのだけど違うのかな?


 それにしても今日の漣もかっこいい。


 進行役だからと言って一人で全部やるのではなく、ちゃんとわたしにも役割を与えてくれる。


「どちらが良いか、手を上げて。……どちらにも手を挙げなくても文句はなし、よ」


 これくらいのことしかわたしには出来ないけれど、わたしのいる意味も考えてくれる漣は素敵。



 学級委員は自分の席に戻らないで、教室の前方の司会者席にいないといけない。


 でも漣と離れ離れにならないでいいのでこの席は最高だと思う。それだけは感謝。


 どうせ周りからは机があって見えないだろうからと思い、わたしは漣の制服の裾を摘んでいました。

 教室で隣同士こんなに近くに座っていることにテンションが爆上げしていたせいです。


 体育祭では、わたし達は出場競技が強制的に決まっていたので、あとは体育祭実行委員さんに丸投げです。


 それなので朝お話した通り、漣と会話を楽しみました。

 漣の向こう側に座っている北山さんにも突っ込まれましたが会話が辿々しいのは仕方ないです。そこは察してください。


 丁度いいので今朝のわたしの蛮行を北山さんに謝りました。


 北山さん、いや沙織ちゃんは真面目でとっつきにくい人かと思っていましたけど、気さくで可愛らしい人でした。

 是非ともお友達になってもらいたいです。



「オウ! ウェイ! ももっち、随分と楽しそうじゃねぇか?」

 ああ、楽しかった気分が一瞬で冷える。


「今は会議中なのですから着席していてください」

 北山さんがわたしに声をかけてきたヤツに注意をする。


「うっせーな‼ メガネブスがっ」

 またいつものような感じ。こいつは威圧すれば相手が引くとしか思ってないの?


「とりあえず座っとけよ。今は北山さんが言った通り体育祭の会議中だ。あと、北山さんはメガネをかけてはいるがブスではないぞ。かなり美少女だぞ⁉」

 はぁ? 漣、今のは聞き捨てられないよ?


「ああン? 調子に乗ってじゃねぇぞ‼ 陰キャ風情がよっ」

 漣は陰キャじゃないし、そんな程度の威圧はなんとも思っていないよ。


「それは、茶髪陽キャ風情ならば、それこそ調子に乗ってオウ! ウェイ! 言っちゃうのも致し方ないとかいうことの裏返しか?」

 ほらね。漣はなんてない風でお返しをやつに放った。ややウケ。


 あの煩いだけの茶髪陽キャ男は風見という今までわたしが一緒にいたグループの男子。彼らは怒って教室を出ていってしまった。面倒事にならなければいいけど……




 放課後前の空き時間。

「……風見はあのグループのリーダー格でさ」

 騒ぎの元の彼奴等の話を漣にするがあまり興味なさそう。まあ漣だしね。


 直後。

「あのさ、俺が言っていいのかわかんないけど。萌々花はあのグループからは抜けろよ。何かあったら俺が守ってやるから、な?」


 ま、守って、くれる?


「……漣……が、守ってくれるんだよね?」

「ああ」

「絶対に?」

「絶対に」

「わかった。そうする……」


 努めて冷静に答えたつもりだけど、心のなかでは花火が上がっていた。どうしよう……漣、かっこよすぎるよ。



 帰宅途中のスーパーマーケットでわたしが余計なこと言ったらちゃんと叱ってくれた。


「わたしが漣のところに近づいたばかりに迷惑ばかりかけ……痛い」

 漣にデコパンチを食らう。


「痛くて当たり前だ。何が迷惑だ? 最初に近づいたのは俺だし、家に居ていいって言ったのも俺だ。学校で話そうと言ったのも俺。萌々花は俺に何も迷惑はかけてない」

 漣、素敵。



 夜の勉強のご褒美には高級なアイスクリームを幾つも買ってきてくれて全部わたしが食べてもいいって言ってくれる。

 漣にすごく甘やかされている気分。





 漣を思う気持ちが溢れかえってしまって、思わず漣の頬にキスしてしまった。

 びっくりした顔の漣も可愛かった。


















 眠れない……自分であんな事やっておいて、興奮して眠れないなんて。

 漣も起きているようだけど、今更戻れないよ。




 でも、今朝の漣を誰にも取られたくないって気持ち。



 気づいたよ。



 わたし、漣に恋してる。




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