第13話

雨が降っているのに日曜日は丸一日アレルギーでクラクラでした(泣)

なんとか間に合ったので定時投稿いたします。

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「実はね――」


 始業式のあった日の午後、俺を除く拓哉、雫ちゃんカップルとジンと北山さんでカラオケに行ったそうだ。


 俺も誘われて断った日のやつだな。あの萌々花に出会った日。


 帰り際に北山さんはジンに告白された。


 北山さんもずっと親友として信頼していたジンとなら交際することにいなやは無かったのだけど、転校早々に友だちになったのにその四人が二つのカップルになり、君方くんだけひとりボッチはいくらなんでも可哀想過ぎるということになってしばらく様子をみることになったらしい。


 なんだかジンに申し訳無さ過ぎる。非常に申し訳ない……


「それでね。日曜日に仁志くん、あ、向波くんのことね。が、連絡をくれて、どうも仁志くんのアルバイトしているホームセンターに君方くんが同年代の女の子と買い物をしに来ていたって」


 ジンのバイト先はあのホムセンだったのだな。


「髪型が違っていたけど、絶対にレンだって仁志くんは言うし、ペアのマグカップなんて買うのに姉妹あねいもうととかそういうのでは絶対にないって主張するものでしょ。だから、君方くんが駅を通るって聞いていたからちょっと駅で待ってみたの」


 会うことがなければそれでもいいやって思って数分待ってみたら、偶々聞いていた通りの髪型の俺が目の前を歩いているので思わず声をかけたそうだ。要するに探りを入れに来ていたと言う事ね?!




「何日しても全然女の子の陰も話も一つとしてないから、仁志くんの見間違えなのではって思い始めたところでの急転直下! まさかの鈴原さんがお相手とは参りました」


 拓也たちにも北山さんはこっそり連絡していたようで、それであのいちゃついているだのなんなのと言う話を俺に振ってきたのだな。やりすぎて北山さんに誤爆かましていたけど。


 それにしても買い物の時一緒だった女の子は確かに萌々花だったけれど、俺のとかなんとか違うから……萌々花も何か言えよ! 何で顔を赤らめてもじもじしているの?


「あ、いや。北山さん……」


「ああ、待って! 分かっているわよ。みなまで言わなくてもこの沙織ちゃん口は固いので言いふらすようなことは無いわ。公表できるようになるまで黙っている。でも友人三人には伝えるよ!」


 おい、ちょっと。勘違い!


「じゃあ、ごゆっくり。私は仁志くんにこのことを伝えて正式に彼の告白を受け入れます! うわっ、私にも春が来た!」


 まくし立てるようにそれだけ言うと北山さんは学校の方に走っていってしまった。

 俺のすがるように持ち上げた腕だけが空を彷徨さまよっていた……



「萌々花……」

「……」


「も、も、か」

「は………ぃ」


 蚊の鳴くような声でお返事。


「えっと、どういうことか後で説明な。もう学校に着くから放課後、うちに帰ったら説明してもらうよ」

「……は、い……」


 校門を目の前にここからあからさまな別行動っていうのもおかしいので結局教室まで俺と萌々花は一緒に行動した。但しとっくに手は繋いでいない。


 ついさっき俺に叱られてシュンとした上にいつもと違うメイクなので、萌々花は俺に寄り添ってしおらしく歩く女の子として妙に注目を浴びてしまった。

 それは教室に入っても続き、それぞれの席に俺たちが着いても俺と萌々花双方をチラチラ見てくる視線が五月蝿い。


 俺が自分の席で突っ伏していると拓哉とジンがやってくる。

 やってくると行っても拓哉は俺の前の席だし、ジンは右隣なので自分の席に座っただけだが……


「にやにや」

「ニヤニヤ」

「おい、おまえら声に出してにやにや言うな!」

 二人の顔も勿論ニヤニヤだった。ちくしょう……


「だってよ~」

「転校生くんがぁ~」

「一週間で~」

「〇〇✕✕をぉ~」

「「ものにするとはなぁ~ まさかなぁ〜 クスクス」」

 めちゃめちゃ揶揄う気満々じゃないか!


「殴るぞ?」

「漣、止めてくれよ。おれの顔は瓦じゃないぜ!」

「レン。諦めろ。僕は一部始終を見ていたんだからな? 今話そうか? 話そうか?」


「……スミマセン」

 俺の負けです。萌々花め……今夜の夕飯は梅干し一つにしてやる‼


 萌々花をちらりと見ると俺と同じ様に机に突っ伏して動いていなかった。

 茶髪陽キャと射殺しギャル女その他が話しかけているようだが、微動だにしていない。

 反省しているのかな? これは梅干し一つでは可哀想なので味付け海苔も一緒に出してやろう。


 この時茶髪陽キャくんが俺のことをものすごく睨みまくっていたらしいけど全然気づかなかった。

 そもそも眼中にない人間の視線なんて気づかないし。



 ★+。。。+★+。。。+★+。。。+★+。。。+★



 今日は丸一日LHRとなっている。

 二年生で実施される各種イベントの内容などを決めていく作業をほぼ今日一日でやってしまおうという強引な会学級会だ。


 司会進行はおなじみ、俺と萌々花の学級委員。佐藤先生は隅っこでまた書類いじりをしている。


「はい、では始めます。まず今日の議題はさっき配ったプリントに書いてある通りです」

 大した議題にならないものはサクサクと多数決で決めてしまう。


「どちらが良いか、手を上げて。……どちらにも手を挙げなくても文句はなし、よ」

 萌々花にも学級委員の仕事を与えておく。存在意義って大事。



「では細かい議題は全て決まったので、次は体育祭実行委員さんたちにバトンタッチでよろしく」

 俺はそう言うと教室の前方に用意されている委員長席に萌々花と並んで座る。


 何でこんなものが用意してあるんだよ! 自分の席に戻りたい……リラックスできないじゃん。


 書記役を買って出てくれた北山さんも隣にいるから御雛様御内裏様状態でなくて本当に良かったと、それだけは感謝。


 萌々花は緊張しているのか、俺の制服の裾をと摘んでいる。

 自分の席に座っている他の奴らにはバレていないけど、隣にいる北山さんにはしっかり見られていますよ?


 揶揄われる未来しか見えない俺の未来視が発動します。

 体育祭ではよくわからない委員長対決というリレーに俺と萌々花は強制出場されるようなので改めて話し合いに参加する必要もない。


 それなので約束通り、予定通り萌々花と学校で会話することにする。

「今朝のことは一旦置いておいて、明日って振り返り試験っていうの? 一年のときの復習テストがあるんでしょ? も……す、ずはらさんは勉強ってどうなの?」

「え、あ。うん、あまり得意ではないし。どうしても、家のこととかが忙しくて、ってか感じだし」

「そっか。じゃあ明日も戦々恐々って感じかな?」

「そうだね、し……れ、き、君方くんてば前は進学校にいたんだっけ? やっぱし、勉強は出来る……感じぃ?」


「ねぇねぇお二人さん。どうしてそんなに辿々たどたどしい話し方しているの? 朝のアレを見せられてからの今の会話はおかしすぎじゃないかしら?」

 小声で北山さんに指摘された。


 いや、うん。特に萌々花が酷いし、ご指摘の通りなのですが、どうしても、ね。普段うちで話すようには出来ないじゃない? ってことさえも北山さんには言えない。言えるわけがない。


「ま、まあ。察してください……」

「良いけどね。あとで……話せるようになったら教えてよね」

「ごめんなさい、北山さん。今朝からおかしなことばかりして」

 萌々花も今朝のことを含めて北山さんに謝る。


「ううん。いいって、いいって。いろいろあるもんね! JKってさ。ね、鈴原さんっ」

「ありがとう! 北山さん」

「生徒会と学級委員ってこれからもたくさん関わり合いがあるからよろしくね。私のことは沙織って呼んでねっ」


「うん、沙織ちゃん。そうしたらわたしのことも萌々花って呼んでね」

「うん、萌々花ちゃん!」

「えへへ」

 良かった、良かった。




「オウ! ウェイ! ももっち、随分と楽しそうじゃねぇか?」

 ニコニコしていた萌々花の表情が一瞬で曇る。


「今は会議中なのですから着席していてください」

 北山さんが萌々花に声をかけてきた生徒を注意する。


「うっせーな‼ メガネブスがっ」

 何だこいつ?


「とりあえず座っとけよ。今は北山さんが言った通り体育祭の件で会議中だ。あと、北山さんはメガネをかけてはいるがブスではないぞ。つーか、かなり美少女だぞ⁉」


 俺の言葉に北山さんがもじもじ顔を赤らめているけれど本当なのだから謙遜などせず胸を張っていい。ちなみにそのお胸の方もいいもの持っていらっしゃるご様子。


 萌々花が射殺すギャル女もかくやという鋭い視線を俺に向けているが何故だ?


「ああン? 調子に乗ってじゃねぇぞ‼ 陰キャ風情がよっ」

 ありゃりゃ。でかい声に教室がシーンと静かになってしまったぞ。


「それは、茶髪陽キャ風情ならば、それこそ調子に乗ってオウ! ウェイ! 言っちゃうのも致し方ないとかいうことの裏返しか?」

 俺がそう言うと、クスクス笑いで教室が沸いた。

 いや、俺は第一声にオウ! ウェイ! はさすがに無いなと思っただけで、別にウケを狙ったとかそんなつもりじゃなかったのだけど……


 いたたまれなかったのか、茶髪陽キャは顔を真っ赤にしてドアを乱暴に開けて教室を出ていってしまった。


 彼の後を追うように射殺すギャル女とその他数人も一緒に教室を出ていってしまった。


「あれ、なに?」

 俺は奴らが出ていった先を指差し萌々花に尋ねてみた。


 彼奴等が出ていった扉を見ながら悲痛な表情を隠さない萌々花は暫く無言のまま何も答えてくれなかった。



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鼻水ずるずる隠しようのない作者に愛の★を3つほど宜しくお願いします🤲

花粉症には★が効くようです⁇

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