第12話
びっくりした! ラブコメ部門10位/日だって! 皆様ありがとうございます。
明日は投稿お休みです。よろしくおねがいします。
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俺が登校する時間はいつも一緒だ。特に理由はないが、同じ時刻に家を出て同じペースで歩いている。
だからなのか、毎朝北山さんに後ろから声をかけられる。
また、毎朝学校付近で自転車の萌々花に俺と北山さんは抜かされて、いつも同じように萌々花には不機嫌な顔をされる。
そのことを家で萌々花に聞いても絶対に理由を教えてくれない。そもそも不機嫌な理由は俺なのか北山さんなのかさえも教えてくれない。
口で言うのが嫌なだけなのかもと、一度re:inで聞いたのだけど既読スルーされただけだった。
家での萌々花はあれから一週間が経って少し落ち着いてきた様子で、感情の爆発はほぼ無くなってきている。
ただ、一度だけ寝室から嗚咽が聞こえてきたので覗いたら、嫌な夢でも見ていたのか萌々花は寝ながら泣いていた。
だから毎日繰り返しす不機嫌な表情にまた何か心配事でもあるのではないかと俺は萌々花に聞いてみたのだけれど、やはりそのことについては教えてくれなかった。
たまに教室でも不機嫌そうな表情を俺に見せるので、たぶん俺の行動の何かが萌々花に悪い影響を与えているのだろうとは思う。だけどそれが何なのか心当たりがない。
どういう時に萌々花は不機嫌になっているのかを思い返して見るが、朝はここ数日毎日だし、教室ではみんなと話をしている時にちらっと見ると不機嫌な時もあればそうでないときもある。
ジンと話しているときは別に不機嫌そうではないが、拓也のカップルと北山さんも加わって話をしだすと不機嫌そうになる。
共通点………?
俺がいつものメンバーみんなと話していると不機嫌になるのか? いや……女子の風紀委員の吉川さんと打ち合わせをしていても若干不機嫌入っていたもんな。でもあのときは茶髪陽キャが煩かったからだけかもしれないし?
まてよ……そうか! 俺と学校でも話したいのかもしれないな。学級委員のときニマニマ楽しそうだったのは俺と一緒に話ができるからか。先生とのやり取りが面白かったわけじゃないんだな。
そう言えば最初の頃、学校では話さないって俺が宣言した時も不機嫌だったはず。
はは、なんだ、そういうことか。一緒に暮らしている友だちなのに学校では知らぬふりでは楽しくはないな。一緒に暮らしていることは他の人には絶対に言えないけど、全く話さないというのは別だな。気づかなかった。萌々花に凄い悪いことをしてしまった。
陽キャと陰キャでは釣り合いが取れないから萌々花と話さないって言ってしまったけど、今は同じ学級委員なのだから話をしていても違和感ないはず。俺のこと敵視しているような茶髪陽キャと射殺す目をしたギャル女からも離れて話せるよな。
ここ数日で初日の俺の陰キャ疑惑も晴れていることだろうから今なら問題はなさそう。
ということで、今日から学校でも会話してみよう、と今朝萌々花に謝罪と提案をしてみた。
「ああ、うん……まあ、とりあえず前進ってことで」
もっと萌々花は喜んでくれるかと思ったのに今ひとつな反応だったのは解せないが、OKが貰えたのでいいってことにしておく。
「じゃあどうする。うちからもう一緒に行くか?」
「いや……それはいきなりすぎない?」
どうせ行くところは一緒なんだから構わないような気もするけど違うのかな? うちの近所には同じ高校の生徒は住んでいないような感じだし、一緒に家を出るところを見られる危険はないと思うんだよね。
「いいんじゃないかな? 今日は木曜日だからバイトも休みでしょ? あ、でも萌々花が嫌だって言うなら無理強いはしないから」
「そうだね。どうしよう………うん。一緒に出る」
急いで用意するから待っててね、といって大急ぎで萌々花は身支度を始めた。
ギャルメイクも大変だよなって思っていたら、今日は軽めでギャルらないって。なんだよギャルらないって?
萌々花のバイトもないってことから歩いていくことにした。バイトのある日はバイト先の喫茶店まで自転車がないと距離もあるし時間も間に合わない。
「フンフンフン♪」
隣を歩く萌々花の機嫌がここ最近で一番良い。
やっぱり萌々花は自然に笑っている顔が可愛いし、変なギャルメイクも要らないと思うんだよね。
だけど萌々花にも過去のいろいろなことがあるから俺なんかが軽々しくあーしろこーしろは言えないんだよな。自分に置き換えてみると過去からの何かを変えろと他人に言われて素直に変えられるか即答はできない。
でも楽しそうに俺横を歩く萌々花はやっぱり可愛らしいと思う。だから、変わってもらいたいし変わらせてあげたいと思ってしまうのも仕方ないと思う。
たとえそれが俺のエゴだとしても。
駅まで来た。一人で歩くよりも少し時間はかかったけど、二人で歩くほうがやっぱり楽しい。
「んじゃ、このままここを抜けていくから……ってどうした、萌々花」
萌々花は足をピタッと止めて駅の階段を見上げている。
ああ、この先はうちの学校の生徒もたくさんいるだろうし、やはり俺と一緒のところを見られてしまっては嫌なのだろうな。
「やっぱり見られちゃまずいよな?」
「この向こうに北山さんがいるのですね」
「え?」
「え?」
北山……さん? いま北山さんがいるって萌々花は言ったよな。
何がどうして北山さんがいることが問題になるのだ? 足が止まった理由が北山さん?
意味がわかんない。
「あ、いや。あの娘がいるかどうかはわかんないよ。今週たまたま一緒になっただけかもしれないし、今日は特にいつもより遅い時間だしさ」
「ううん。いるね、ゼッタイ」
どしたのももかちゃん?
「萌々花は北山さんのことが苦手だったり嫌いだったりするのか?」
「ううん。そんなのじゃないよ。苦手意識もないし嫌いになるほど彼女のことは知らない」
じゃあなによ?
「負けたくないの」
「へ? 何に?」
きょうそうでもしているの?
「何にでも! 漣は気にしなくていいから!」
そういうやいなや俺の手をぎゅっと掴んで駅の階段を登り始める。
「え? え? どうしたんだ、萌々花? こんなところで手を繋いでいたら勘違いされるぞ」
「……いいもん」
「え?」
「勘違いでもなんでもいいもん」
もんもん言ったあとはもう何も言わないでとにかく駅のコンコースをどんどん進んでいく。
一八〇近い細っこい男が一六〇も無い可愛らしい女の子に引っ張られていく姿はさぞや目立って滑稽だと思う。
果たしてコンコースを抜け下りの階段を降りきったところに、萌々花が言った通り北山さんがいた。
北山さんは俺と萌々花が手を繋いで階段を降りてきたことに驚いたのか目が真ん丸になって口元を両手で押さえていた。
「おはよう、北山さん。ちょっとこれには訳があってね……」
「漣、訳なんてないよ。見たまんまだよ」
萌々花はよくわからない対抗意識を北山さんに持っているようだ。
ずんずん歩いていこうとする萌々花を押さえながら北山さんとも一緒に学校に向かう。
「びっくりした。君方くんと鈴原さんてお付き合いされてたの? でも、君方くんてついこの間、編入してきたばかりだよね?」
「え? お付き合い?」
どうしてそんな話に??
「だって、朝から手を繋いで登校するなんてLOVEなカップル以外じゃありえないじゃない? 雫ちゃんたちだって最近になって初めて手を繋いで学校に来ていたし」
「あ、そうなんだ……」
萌々花は無言でやや赤くなった耳をチラチラ見せている。聞こえていないふりをしているようだけど、絶対に聞いているよな。
「やっぱり学級委員が一緒なのがきっかけなの?」
「いやそういう訳じゃないけど……それより今日も北山さんは俺を待ってたのか?」
萌々花がピクリとして俺の手を握る手に力が入った。
「うん。偶然とは言え三日も一緒に登校していて急に無視するように先に行ってしまうのも失礼かなって。でもお邪魔だったみたい――」
「いやいや、とんでもない。ご丁寧にどうも」
北山さんはまだこの地に俺が慣れていないだろうからって気を使ってくれていたのかな? そうだったら有り難い。
「――それに君方くんが鈴原さんとお付き合いしているなら私も向波くんの告白を受けても大丈夫だよね」
「「は?」」
俺と萌々花が見事にハモりました。
どゆこと……?
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