第9話

 ご覧頂きありがとうございます。先程ラブコメランクで過去に見たことない位置に本作がいました(汗)ありがとうございます。ワタクシ非常にアワアワしております。


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 九時前にあっちを出たので未だ時刻は昼前で、買い物のため俺達は二つほど最寄り駅より前の駅で下車する。

 この駅の目の前には大型ホームセンターがあり、今日から一緒に暮らすことになる萌々花の前自宅から持ってこなかった品々をそろえていく。


「つか、ほとんど捨ててきたんだな」

「だって、嫌な思い出が一緒についてくるのは嫌だし」


「あ~ 分かるわ。そうだな、そのとおりだ」

 俺も金目の物以外は全部以前住んでいた部屋に捨ててきたし、持ち出した金目の物は既に全部換金した。

 だから最後にあの家にあったものはクソな思い出とクソなガラクタだけだったはずだ。

 あんな家にあったものでもちょっとした車一台ぐらいは買える金額になったのは驚いたけれどな。勿論あのうちに有ったものの処分は実両親に了解させていたし、本当に必要なものはもうとっくに双方とも持ち出し済みだったようだ。つまりは奴らにとってもゴミってわけだ。

 あの家は奴らにとってってことだったんだよ。


「どうせなら一揃え全部買いたいけど、わたしはお金がそんなに無いから、絶対に必要なやつだけ買って後で買い足す感じでお願い」

「え? 買ってやるよ。それくらい」


「駄目だよ。そのお金は漣が勝ち取った生活していくための資金だもの。わたしなんかに使っては駄目だよ」

 萌々花にけっこうきつい口調でたしなめられた。萌々花がは間違ったことを一つも言っていないので俺は言い返せない。うむ、仕方ない。


「じゃあ、萌々花に貸す。あとでバイト代入ったら徐々に返してくれればいい。じゃないと何度も足運ぶようだし面倒じゃん。ここまでの往復の乗車賃も無駄だぞ?」

「ぐぬぬ……反論できないような正論を吐くやつは嫌いだよ。では、今回はよろしくお願いします」


「なんだ、結局借りるんじゃん」

 音の出ない口笛を吹きながら萌々花は先をどんどんと歩いて行ってしまう。


 これから同居するのに変な遠慮とかされる方がめんどくさい。互いに独り立ち出来るようにならないといけないのだから悪意なく利用できるものは利用しようぜ。

 金のことだろうとその他のことだろうとちゃんと話し合って、楽しく暮らしていけたほうが絶対にいい。あんなクソ親たちのような生活はまっぴらごめんだからな。



「ねぇねぇ。このマグカップかわいい。お揃いにしない?」

「何でそこでお揃いなんだ?」


「いいじゃない⁉ お揃いってテンション上がるでしょ?」

「いいや。そんなことは……うん、あるな。テンション爆上げだよ」


 何故にお店で泣き出しそうになっているのだよ。萌々花は本当に泣き虫だな。

 こんなことで、嘘泣きだろう? って思うだろう? マジ泣きなんだぜ。


 その後もなぜか茶碗や箸までお揃いで商品かごに入れていく萌々花。茶碗も箸も諸々も俺自身、自分の分は全部既に用意があるのだが、それを言ったらまた泣くかもしれないので萌々花の好きにさせてやる。


「えへへへ。すごーく楽しいよ、漣!」

「そ、そうか。それは良かったな」

 デートかよ? 同棲カップルみたいじゃないか? もういろいろと考えるのは諦めようかな……


「なあ、萌々花。寝床はどうするんだ? ベッドを買うか、布団にするか?」

「漣のベッドでいいよ。寝心地よかったし」


 は?


「だめだろ? あれは俺のベッドだよ」

「一緒に寝ればいいよ。実際、既に寝たわけだし」


 なるほど?


「いやいや。駄目だろ?」

「どうして? 漣がわたしを抱き枕にするから?」


 止めてあげて? ボクノタメニ。


「あ、あれは事故のようなものだから……」

「漣はわたしと一緒に寝るのは嫌なの?」


 何でこだわるの??


「嫌なわけ無いだろ? 寧ろ嬉しい……かも。だけどいつまでも俺の理性が保つかわからないしさ」

「だから、最初から言っているよ。わたしの身体は漣が自由にしていいって。それくらいわたしだって覚悟しているモン」


 ああ、なるほど。やはり俺の部屋に強引に転がり込むのだから、対価として自分の身体を差し出すっていうことか。

 俺もちゃんとそのことは話していなかったな。


「萌々花の身体をもてあそぶつもりなんて俺にはないから大丈夫。そりゃ、可愛い女の子が目の前にいたら俺だって健康な高校生男子なのでいろいろと見ちゃったり、なんかなっちゃたりするかもしれないけど、恋人でもない萌々花に手を出すなんて絶対しないから! 約束する」


 だから自分の身体を対価になんて絶対に考えないでほしいと伝える。


「……うん。ありがと……う。ぐずん」

 また泣かせてしまった。


 あのベッドがいいならばアレをもう一つシングルで買おう。ネットで買ったやつだから家に帰ったら注文しておこう。


「恋人になれば手を出してくれんだよね……」

 あのベッドは、前回注文したときは三週間以上納品までかかるん……


「萌々花、何か言ったか?」

「ううん。何も言ってないよ。じゃあ、これ買って帰ろう。今夜からこれでご飯食べようね」

 泣いたカラスがもう笑っている。


 夕飯の買い物までするとなると、手荷物多すぎ。どう見ても萌々花はひ弱そうなので大した量は持てないだろう。

 ふと右方向に顔を向けると、ショッピングカートなるものが目に入った。

 折りたたみ式で、広げるとかご状になって荷物が入れられるようになっている。

 ちょっと高校二年生が持つものではない気がするが背に腹は代えられないので、それも一緒に購入することにした。


「そう言えば、何でも買っていいって言っていたけど漣はお金を持ってきているの?」

「ん? 何でも買っていいって言った覚えはないんだけど、支払いはカードだぞ」


「高校生なのにカード持てるの?」

「普通のじゃなくて、VASAデビットカードってやつだから、使った瞬間口座から引き落とされるやつ」


 なので、口座に残高がないと使えない。俺の場合、三千万円弱あるから当面平気。ちなみに萌々花は、『何でも買っていい』についての発言は華麗にスルーしていた。


「ふへ~ よくわかんない世界だぁ。貧乏人には縁遠いよ」

「現金を持つより案外と便利だから萌々花も作ったほうがいいよ」

「うん。今度教えてね」


 今買ったショッピングカートは開封させてもらって、カゴの中に買ったものを詰め込んでいく。

 ガラガラと引く姿はちょっと変かもしれないがものすごく便利なものを発見した気分だった。




 最寄り駅から自宅までは歩き。

「萌々花は俺と一緒に歩いているのを見られたら大変なんじゃないか?」

「う~ん、どうだろう? ちょっと面倒くさいことにはなるかもしれないね。でも今はすっぴんだしキャップも被っているから誰も気づかないだろうけど」


 実際はともかく、陰キャっぽい俺と陽キャギャルの萌々花が一緒にいたら話題にはなりそうだな。


「最初はさ、様子見で萌々花は今まで通りの陽キャギャルやっていてよ。俺も本来陰キャじゃないから周りから普通に思われるようになれば、萌々花と話をしていても違和感ないだろう?」

「そうだよね。でも漣の何処が陰キャなのか……ありえないね。面白いし優しいしかっこいいもんね」


「え?」

「ねぇ~」


「それは褒めすぎ。褒めても何も出ないぞ」

 萌々花はてけてけとスーパーに走っていってしまう。こっちはショッピングカートを引きずっているっていうのになぁ~


「本気だよ」

 萌々花が振り返って何か言ったようだけど遠くて聞こえない。

「なに⁉ 聞こえないよ!」


「早くおいでって言ったんだよ~」

 へいへい。了解したしました、お嬢様。


 昼飯は駅ビルに入っていたファストフードのハンバーガーで済ましてしまったので夜はちゃんとしたもの食べたい。


 野菜を買い物かごに入れながら、献立を考えていると萌々花がおかずは何がいいか聞いてくる。

「ん? 萌々花が作ってくれるのか?」

「今朝、また食べたいって言っていたよね。嘘なの?」


 うん。言った。


「嘘のわけないじゃん。そんなに早く作ってもらえるって思ってなかったからさ」

「漣もご飯は作れるんだよね。かわりばんこに作ろうか? ご飯以外もちゃんと分担してさ」


 そうだな。一緒に暮らすのならそれは必要だな。


「それじゃ、今晩そういうのちょっとずつ決めていこうか」

「OK! じゃあ、夕飯は簡単に親子丼でいいかな?」


 え、マジ!


「俺、親子丼は好物のひとつなんだよね。お願いします!」

「お願いされた! 玉ねぎと鶏肉ゲット!」


 ちょっと同棲カップルぽいなって思ったのは内緒にしておこう。


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