第3話 幸せ度ランキングは何を決める
「本当にいいのか、料金は?」
運転手はコクリと頷いて僕を下すと、そのまま静かに走り去った。僕は市役所に入る。
すると、すぐに女性が近づいてきた。
「九丈新聞の荒垣と言いますが……」
「昨日アポイントメントを取られた方ですね」
僕が頷くと、女性は一枚の地図を差し出した。どうやらこの市の地図らしい。
「うちの市を取材されたいそうですね。何もない所ですが、一応、ご希望に添えそうな場所を地図に記入しておきました」
「全国の市町村アンケートでダントツ一位のこの市に、なにもないわけないと思いますがね。それともアンケートの情報に問題でもあるのかな?」
幸せ度ランキングは日本だけでなく、世界中で行われているが、その信頼度には疑問があると、僕は常々思っていた。
「データの調節とかされているのですかね?」
僕はきつめの口調で話したが、女性の穏やかな笑顔は変わらなかった。
「アンケートは第三者が行っております」
「あと、社会奉仕者でしたっけ? さっきタクシーの運転手がそう書いたリストバンドをしていましたけど、無料で働くだとか、僕には信じられない」
「この市を維持する為に働いてくれる人々をそう呼んでいます。生活に必要な物は市から給付しています。やりがいのある仕事ですよ」
女性の右手にもリストバンドがあった。
「市役所の人間もそれをつけているって事は公務員じゃなく……」
「ええ、全員社会奉仕者です。取材に来られたのなら。急がないと入れなくなる施設もありますから、早く出かけられた方がいいと思いますよ」
穏やかな笑顔のまま、女性は地図を手渡してきた。市長も今は不在との事だったので、僕はまず病院に向かう事にした。
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