第3話 ゴーレムゲーム

 涼しい風が気持ちいい。


 ビニールシートを引き俺は2人で人形遊びをしている。


 夏も真っ只中の8月10日、普通ならかなりの熱波なんだけど、ウチの庭は綺麗に手入れされた木の影が沢山あるから涼しい風がソコソコ吹く。


 凄くいい天気に休みで遊戯なんて最高な気分だ!


 誕生日から2週間が経って、本当に能力の授業はデッサンだけだった。


 ソレに少し落胆していた俺だったんだが、今日は月に一度だけ用意された座学も能力の授業も休みの日だ。


 とゆうことで俺は弟のサドリナとゲームで遊んでいる。


 まあ遊ぶと言っても他の家とは違い機械類のゲームは小学校に入学するまで禁止されている俺たちだ、ボードゲームとかトランプしかやることがない。


 俺とサドリナはチェスが好きだったから何も苦じゃなかった。


 けど兄達は違うらしく月に一度の僅かな小遣いを地道に貯めては密かに買って、数日後には見つかり没収されていた。


 そんな姿を弟と笑っていた俺だったのだが、それまでは渋々付き合ってくれてた長男と次男が小学校に今年上がったことでゲームの魅力にサドリナが引き込まれるのを俺は必死になって食い止めていた。


 そりゃそうだ、流石に目の前で見せびらかされれば羨ましくもなるだろう。


 ただ、俺も7歳にならないとゲームなんかできないから2年後だ。


 サドリナに至ってはあと4年、とてもソレまで隠し通せるほど父さんも母さんも低脳じゃ無い。


 とゆうか、俺は生前からゲームなどに興味がない。


 ゲームなんて元々ボードゲームくらいしか戦場じゃできなかったしな。


 けどそんな人生を知らないサドリナには分からないだろう。


 ソコで俺が考案したゲームだ!


 それは俺たちの心を崩壊の最前線から救ってくれたゲーム。


 その名もゴーレムゲームだ!


 ルールは単純明快、互いに作成したゴーレムを戦わせて勝者を決める。


 ゲームの内容は色々あるけどチェスなんかさせると才能が如実に現れて楽しかった!


 ゴーレムの作り方は簡単で『形状記憶のルーン』と『運動開始のルーン』を刻んで行動のパターンを入力する。


 例えばトランプのババ抜きなら5と5が揃ったら捨てる、とか順番が決まると6番目にNo.5からカードを抜き引く、みたいな感じで。


 そうゆうのを細部まで作り込んだら最後に〇〇が終われば終了、ってルーンを刻めば完成だ。


 今回は簡単なところでババ抜きをやっている。


 と、ここで起こった異常事態なのだが、、、


 どうにも夢幻世界の住人は軍事世界の技術が使えないらしかった。


 現にサドリナは頑張ってルーンは刻んでも起動させることができなかった。


 まあ俺が力を送ったら普通に動いたんだけど。


 初めて知ったが別世界の技術は通常使えないんだな。


 俺は転成体だけど生前の魂を所持しているから使えるってことなんだろう。


 もしかするとランク100位上だけの特権とかかもな。


 まあそんな訳で俺とサドリナはゴーレムゲームに最近ハマっている。


 初めてやってから2ヶ月、中々どうして筋が良かったらしくサドリナは既にちゃんとルーン用の専門文字でかなり質の良いゴーレムを作れるようになっている。


 手加減してるとは言ってもこうまで早く負かされるとは思っていなかった。



「やったっっっ! 兄ちゃんに勝った!」


「はは、こんな早く負けると思ってなかったぞ! 中々才能があるなサドリナ!」


「そう⁉︎ そうでしょ‼︎ ふっふ〜ん!」


「凄い凄い、でもまだまだだ」


「? なんで? 僕勝てたよ?」


「ソレはトランプだろ? コレからチェスのさせ方を教えてやる!」


「チェスなんてさせれるの⁉︎」


「おう! 難易度は段違いだけどな!」



 俺はそう言うと左手に土塊を握って見せる。


 分かりやすいよう軽く念じるような仕草を混ぜて夢幻構築能力を使ってるのが分かりやすいように注意して。


 次の瞬間、俺が手を開くと親指二本分くらいのズングリムックリした泥人形にしては精巧な人形が握られている。


 その背中にルーンなんてない。


 デッサンしかさせてもらえないとは言っても元々あるものの形を整えてあげる程度は簡単にできる。



「コレを握ってろ」


「うん? 分かった!」



 サドリナは少し不思議そうにしながらも人形を握る。


 本当に正直で可愛い弟だと思う。


 そんなことを思いながら俺はもう一つの手で作った泥人形をスドリカに見せて、、、



「コレ位のルーンが刻めなきゃ勝負が成立もしないんだ」


「、、、スッゴイ‼︎」



 俺の見せた人形の背中、ソコには夢幻構築能力で刻んだ夥しい数のルーンが刻まれている。


 それを見たサドリナは尊敬の眼差しを向けて言うと、泥人形を凝視し出した。

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