第2話 目を開けると
あの日、俺が転生した日から5年が経った。
俺が転生したのは一般家庭、と言うにはソコソコ稼ぎの良い家だった。
なんでも夢幻世界でソコソコ名の知れた国の軍部で最も重要な役割を担う陸軍にもかなり大きな影響力を持つ立場にいるらしい。
俺が転生したのは俺も2回か3回戦った経験がある、つまり別世界に喧嘩を売れる程度には大きいクレズキ帝国って国の首都に巨大な屋敷を一つ持つ軍人の父と元公爵家三女であった母の家、その四男。
馴れ初めは、コレは幾度となく聞かされて乳幼児の時は子守唄みたいに聞かされた話なんだが、、、
父さんが軍人になったのは元々母さんと結婚できる地位を得るため、一般人が成り上がる最短距離だと思ったからだったらしい。
まあ2人は母さん側の決めた縁談で結婚したらしいし嘘じゃ無いだろう。
こんな話を聞かされていたから爺ちゃんと婆ちゃんは怖い人だって思い込んでいた俺だったんだけど、別に怖がる必要なんかなくて初めて会った時から凄く優しい人たちだった。
でもメリハリは凄いっていうのかな?
仕事モードに入った爺ちゃんはかなり厳しい。
そんな爺ちゃんだから一才の時からソコソコ厳しい教育を受けてきた。
範囲は色々だけど、食事のマナーとか日常の所作に関するマナーみたいなのを重点に教えられたかな?
そして5歳になった俺は今日からついに語学や数学みたいな座学を学ぶ。
とは言っても俺は学術の最先端とまで言われる軍事世界でも随一の力を持つバルザード大高帝国で元ではあっても空軍最高の権力とソコらの学者より高い学力を持っていた。
夢幻世界のレベルで言えば少なくとも首都中央の大図書館の蔵書より大量の知識を持っていると自負してる。
そんな俺なのだから正直言って座学にはなんの興味もない。
ソレでも俺は今日からのアレを心待ちにしていた。
そう、夢幻世界だけの力、、、
夢を現実に再現する能力、『夢幻構築能力』だ。
「ソレじゃ始めるか。 先ずは、図形の描き方からだな」
父さんが家の地下一階に態々作ったらしい授業用のソコソコ大きい無機質な部屋で開口一番に言う。
そう、俺は今日初めて知った。
夢幻構築能力ってのは願ったことが全て叶うような能力じゃなかった。
最初に読まされた『小学生用の能力講座』って本に記されていたのだ。
『夢幻構築能力とは全ての工程を思考上で終結させ結果のみを現実世界に再現する能力で有り、例えば道端に咲く一輪の花を構築する場合にはその花が成長する全ての工程を念頭に置いた上で種の大きさと時間毎の摂取する水分量を想像、その上で完成形の寸分も違わない寸法を脳内でイメージします。 この工程を経てやっと一つの花が構築されます。 勿論ですが寸法や水分量を、種の大きさや成長過程の寸法や成分、光合成の頻度などと言った情報と完成形の情報との齟齬が大きければ大きいほどエネルギーの消費効率が悪くなり逆に情報の齟齬が少なければ少ないほど、また誤りがあったとしても情報が多ければ多いほど生産効率は上昇し燃費は良好になっていきます』と、長いけど要約してこんな感じ。
要するに結果だけを作るのは非効率的、ソレが存在する場合の状況を詳細に描かなきゃって事だ。
こんなにレベルの高い知識が必要な割には夢幻世界の奴等は頭が悪い印象なんだけど、、、
まあ燃費が悪くて良いなら結果だけの想像でいいんだしな。
ソレに少し考えてみれば戦場でそんな難しいこと考えれるような余裕はない。
そう考えてみたら連中がエネルギー切れ起こすの確かにメッチャ早かった気がする。
と、そんなことを考えながら俺は目の前に置かれたコップのデッサンをする。
形の特徴を掴んでよりリアリティーに、とか言われたから滅茶苦茶立体的に描いてみた。
コレでも学者としてだって一流だったし俺がデザインした武器とかも何個かある。
それに俺が使ってた武器は一つを除き全て俺がデザインして俺が加工し、俺がルーンを刻んだ特別性だった。
それにデッサンとか風景画は俺の趣味だ、気が滅入るような戦場に魅力を見つけてデッサンしていた。
ソレがなければ俺は本格的に壊れていただろうな。
そうゆう意味で言うと俺は画力にソコソコ自信がある。
そして書き上げたコップ、専門技術はないけど中々に良い出来だと思う。
「ふむ、初めてにしては悪くないな。 23点ってところか」
「え、23点ですか?」
「ああ、まあセンスはあるけど技術を教えてないからか全体的に荒削りだな。 このレベルなら半月もデッサンすれば悪くない所まで成長しそうだ」
「半月ですか⁉︎ 早く能力使いたいですよっ!」
「我慢しなさい、このレベルでは基礎の基礎である木葉を一枚構築しただけで限界を迎えるだろうからな」
「そ、ソコまでですか、、、?」
「ああ、100点満点でやっとスタートラインなのだ。 お前は才能があるのだ、今は堪えて精進しなさい」
「はい、、、」
俺は渋々言うと「だったら早めにデッサンだけでも教えてくれれば良いのに、、、」と小声で言って紙を捲り新しい紙に、次は父さんに助言されながら書き始めた。
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