最終話 〜僕達は幸せにキスをする〜


「いや、僕は彼氏違います」


「いやちょっと!? 話し合わせて!? いまピンチなのわかるでしょ!?」彼女はテンパる。


「でもここで認めちゃったら後で家に上がり込んで襲ってくるでしょ。ちゃんとはっきりさせておかないと」僕はけじめをつけるように言う。


「いやそれはしたいけれども、じゃなくて! ここで嘘ついて貰わんとヤンキーのお茶誘い断れんでしょうが!」


「……嘘で、いいのかい?」僕は静かに告げる。


「えっ」


「……一時しのぎに彼氏ですと言われて、好きだよと嘘つかれて、それで君は幸せなのかい?」僕は諭す。


「う………それはやだ……じゃなくて! 私達同士の関係に嘘つくんじゃなくてこいつらに嘘ついてほしいんだってば!」


「結局二人はカップルなんですか? そうじゃなかったら邪魔しないでほしいんすけど」茶髪が割って入ってくる。なんで敬語なんだろう?


「いやいや、本当に彼氏じゃないよ、でも親友がホテルに連れ込まれてレイプされてるのを黙ってみてるのも」僕は大きく手を振り否定する。


「いや、生々しすぎない!? 流れ的にはそうなる可能性あるかもだけど!? あと親友って思ってくれてたんだ! すき!」


「それで望まない妊娠をされて泣きつかれて彼氏のふりして産婦人科行くのも嫌なんで」


「だから生々しいんだって、もっとオブラートに包んでよ! てかそこで彼氏代わりになってくれるなら今やってくれない!?」


「医者に『私達がナマで作りました』って顔して嘘つくのも気まずいし」


「農家によくある生産者の顔風に言うな!! 農家に謝れ! 生産しかけてるから間違ってないけど!!」


「静かに君の横で『大丈夫、君には僕がついてる、ずっと』と優しく本音をささやくのも辛い」


「え、そこ本音なの……しゅき……じゃなくていま言えってんだよぉ! すべてが終わってから言うんじゃなくてさぁ!!」真絶美少女プペ子ははあはあと肩で息を切らす。


「大丈夫? お水飲む?」僕はペットボトルをさしだす。


「あんたのせいなんだけど……でもありがと……」


「あ、俺もコーヒーありますよ。ブラックですけど」金髪も缶コーヒーを差し出す。


「いやそれはいらない……なんで喉乾く飲み物のまそうとするねん……」


 彼女はペットボトルを一気に飲み干す。あ、間接キス……既成事実できちゃった。まあいっか気づいてなさそうだし黙っとこ。


「そうかわかった……カイトが彼氏って嘘がつけないなら、今この場で彼氏になってもらえばいいんだ! 好き! 結婚を前提に付き合ってください!!」僕に向かって頭を下げながらプペ子は告白する。


「ほらこいつすぐ告白してくるんすよ。一度関係を許したら家に上がり込んで料理洗濯掃除して一生居着きますよ」ぼくはヤンキーたちにやれやれという感じで告げる。


「あーそれはいいっすね……でもそれなら無理やりじゃなくて両想いになって月明かりの下でキスしてからかん」と金髪は言う。うんうん、と横で茶髪もうなずく。「わかる」と僕も頷く。


「なんでそこロマンチストなんだよ! レイプ好きって言えよこの金髪茶髪ヤンキーが! あとカイトはどっちの味方!? せめて告白の回答してよ!」プペ子は頭を上げながら涙目になる。


「しかも今お電話いただくとなんと、毎日行ってらっしゃいのキス&夜這いがついてくる。残りわずかとなっております。」


「通販番組か?! 私一人だけだからそりゃ残りわずかだけども!」


「大丈夫、余り物には福があるっていうし、最後は僕がもらってあげるよ」


「え……最初悪口言われてる気がするけどそれってOKってこと……?」極絶美少女プペ子は顔を真っ赤にする。


「うん、キスしちゃったし。あ、そういや110番さっきしといたよ」


「ちーっす。 通報あったんで暇つぶしによってみました」


「お前警察かよ! 口調がヤンキーとかぶるからわかんねえ! しかも地の文ないから更にわかんねえ!」


「疑うんなら警察手帳見ます?」ぷんすか、とお巡りはおこになる。


「いや見た目はおさわりまんのかっこしてるから私達はわかるけども! 文で読んでる人がわかんないでしょ!? 作者さぼんな!!」


 ……文章越しに怒られたのでしぶしぶ書くことにする。慌てたように警官が走ってきた。手には拳銃を握っていつでも発砲できるようになっている。


「いや物騒だな!? 凶悪犯扱いやん私達! 口調と全然違うじゃん!」


「俺、撃ちたきゃ撃て、という座右の銘持ってるんすよ」プラプラと拳銃を振りながら警官はいう。


「そんなサイコパス的な座右の銘持ってる奴が警官すんなよ、そっちが凶悪犯じゃん!」


「かっこいい……」僕は呟く。「「憧れるっス!」」ヤンキー達も口を揃えて言う。


「おいお前らもサイコパスかよ! 誰か警察呼んで! おさわりまーん! 目の前にいる!」


「あ、弾倉空じゃん、リローディングしないと」


「こめんなこめんな! 死人が出る! しまえって!」慌ててプペ子は警官の両手を抑える。


「あっそれこうむしっ……なんちゃら妨害っすよ」警官は


「公務執行妨害な? 覚えておこ? えっこれ私捕まるの……?」少しうろたえて究絶美少女プペ子は手を離す。


「ま、事件性なさそうなんで発砲の必要はなさそうっスね。ところで結局何があったんです?」拳銃をしまいながら警官はたずねる。


「えっと……痴話喧嘩ッスね」ヤンキーの一人が告げる。


「おい! なに目撃者ぶってんだよ金髪!! お前は加害者だろ! 何茶髪も携帯耳に当てて俺が通報しました感だしてんだよ!!!」プペ子はまたまた叫ぶ。


「ふむふむ……とりあえず美人な君署まで来てもらおうか……?」


「ち、違います……カイトも何か言ってよ……! このままだと私が捕まっちゃう」涙目で僕の腕にすがりいてくる。うわ柔らか……。


「おさわりまんすみません、僕が彼女を怒らせちゃったみたいで」僕は軽く頭を下げる。


「違う違う、そうじゃ、そうじゃない! いや間違ってないけど! このタイミングで謝ったら勘違いされるからね!?」


「先程のなんちゃら妨害もあるし、いったん話を」と警官は


「公務執行妨害ね! わかった私が全部説明します!  まわりに任せた私が悪かった! でも逮捕はしないでください!」とプペ子は警官の前に自ら進みでる。


「あ、ポプ子の目を見ないほうが……」と僕は言ったが遅かった。


 警官は彼女の目と目が合う瞬間、好きだと気づいて……しまった。


「詳しくは署……いや、俺の家で事情聴取を結婚を前提にしても良いっスか?」


「完全に公私混同だよねそれ!? 半分告白してるし! 絶対行かない!」プペ子は僕の後ろに逃げるようにひっこむ。


「そうだこうすればいいんだ……!」彼女は僕を振り向かせ手を握る。その美しき瞳でまっすぐみつめてくる。自分の体がたちまち火照っていくのを感じる。


 ――彼女はそのままゆっくりと顔を近づけ、そっと口づけを交わす。思わず僕は蕩けそうになってしまう。キスってこんなに気持ち良いものだったのか。


 十秒ぐらいしてすっ、と口を離す。


「急にごめんね……でもこうするよりほかになかったの」彼女は真っ赤な顔のまま告げる。


 僕はゆっくり頷く。そして彼女を抱き寄せ、再度キスをする。


「んっ……」と彼女は驚きに目を見開き、僕の身体に抱きつく。唇に負けず劣らずの柔らかい胸の感触を感じ、股ぐらがいきり立ちそうになる。


「うれしい……カイトからキスしてくれるなんて……」極絶美少女プペ子は嬉し涙を流す。


「唇奪ったね……二度も奪った……親父にも奪われたことないのに……」僕はそう答える。


「雰囲気台無しなんだけど!? そもそも二度目は君からでしょ! めっちゃうれしいけども! あと親父から奪われてたら色々とまずいからね?!」

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えちきす!〜幼なじみの真絶美少女をナンパから救ったらいつの間にか唇を奪われた件について〜 金魚屋萌萌(紫音 萌) @tixyoroyamoe

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