第9話




 放課後になっても雨は止まず――


 俺は、リアンと一緒に女子寮に行ってからバイトに行くことになった。

 もちろん、店長には先に遅れる理由を話してあるし鞄も置かせてもらって来た。


「なんか思ってたよりも、冷たいんだね」

「あぁ。こんな中ずぶ濡れのまま帰ってみろ! みんなからバカにされるぞ!」


 傘が役に立たないほど風は強くないが、それでも時おり横殴りの風が吹いては足元や、肩を濡らす。

 なるべくリアンが濡れないようにしてるので俺の右肩はずぶ濡れだ。

 はっきり言って、冷たい……

 靴の中までぐちゃぐちゃになるのも時間の問題だろう。

 敷地の中に在るとはいえリアンが住んでいる女子寮までの距離は1キロ近くあるからな。


「なんか、色々とありがとね修二」

「あぁ、せいぜい恩に着とけ。そしてしっかり働いて金を返してくれ」

「あ、うん、それなんだけどね。しばらくは学園の生活になれるようにって言われてて働けるとしても来月からなんだって」

「マジか!?」

「うん。だから、それまで迷惑かけちゃうと思うけど、きちんと返す予定だから……」


 はぁ~~~。ホント臨時収入はいってなかったらつんでる話だぞこれ……


「わかった。それまでは何とかしてやるから。きちんと返すんだぞ!」

「うんっ! ありがとぅ修二!」 


 約15分ほどで女子寮に着く。


「ねぇ、なんか修二だいぶ濡れちゃってるけど……」

「ふっ、ようやく気付いたか。俺の傘は一人用だ。お前さんを濡らさないようにするとこうなるんだよ」

「なんで? 別に私、濡れたって文句言わなかったのに!」

「今の俺の姿を自分と置き換えて見ろ……」

「え~~と、もしかして肌とか下着とか見えちゃったりしてたのかな?」

「まぁ、そうなるだろうな。少しでも悪いと思ったら今度からはきちんと傘持ってこいよな」

「あ、うん。わかったよ……」


 少なからず反省してるみたいだし今日の所は一歩前進と思っていいだろ。


「で、でっも、私。修二になら見られても平気だよ。だって買う時見られちゃってるし」

「あ~あれな。俺、値段しか見てなかったから、実際のところよく覚えてねぇんだわ」


 それに、こんなぺったんこ見ても面白みなんかあるとも思えん。

 南守先輩の濡れた姿ならお金払ってでも拝みたいけどな!


「そ、そうだったんだ……」

「じゃぁ、俺バイトだから! また明日な!」

「うんっ! ありがとう修二!」


 ――たった数メートル歩いただけでずぶ濡れになる日もある。


 だから、俺のロッカーにはバイトの制服以外にも最低限の着替えがや靴が入っていたりするのだ。

 速攻で着替えて、店に出ると店長からは、生暖かい目でもっとゆっくりしてきても良かったんだぞなんて言われてしまった。

 言われてみれば納得。この天気じゃ外の部活は出来ないし。

 帰りに軽く『コンビニ寄ってかない?』なんていう生徒も減る。

 となれば、当然売り上げは落ちるわけで店長も在庫の管理なんかをやっていた。

 はっきり言って、品出しとかがなければ一人でもじゅうぶん回せるレベルだ。

 だから、入り口付近の濡れたところを主にモップ掛けしながら接客対応して今日のバイトを終えたのだった。

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