第2話
この世界に来て最初の寝床になる宿は“銀の夜明け”という宿だった。ここは宿を探してさまよっていたところにここの看板娘であるティーナちゃんが声を掛けてくれた。値段の方も一泊食事付きで銀貨一枚と銅貨二枚。約千二百円ぐらいだ。部屋も綺麗になっていて居心地がいい。さすがに風呂はなかったが体を拭けるようにお湯とタオルは使えるようだ。
などと部屋の感想を思っていると
「カズトさん!ご飯が出来ましたよ!」
とティーナちゃんに呼ばれた。
「分かった!今行くよ!」
お腹も空いていたところだしちょうど良かった。
「今日のメニューはオークのシチューとサラダ、パンです!」
と料理の乗った皿が出された。この世界で初めて食べる食事だ。美味しそうな見た目をしているから大丈夫だと思うがどうだろう。
美味い!
味もしっかりしていて、パンに合うような濃さでよくわからなかったオーク肉も豚肉のような味だ。
この世界の人達の料理がこれに近いのであれば、まぁ食べることに関しては苦労することもないだろう。
「カズトさん!ご飯どうですか?」
とティーナちゃんに聞かれた。
「うん、とっても美味しいよ」
と答えると
「良かったです。家の宿のご飯は全部お母さんが作っているので!」
と元気に教えてくれた。
「そうなのか。ところでここの宿はティーナちゃんとお母さんの二人で切り盛りしているの?」
「そうじゃないです。いつもならお父さんも一緒にやっています。今は食材とかを買いに行っているので」
「そうか。お父さんもいるのか」
そういえばいきなりクラスごと転移されてきて元の世界ではどういうふうに扱われているのだろう?さすがに一クラス丸ごといなくなってしまったのだから何かしらの問題にはなってるだろうな。
とはいえ今何か出来る訳でもないしそれこそ元の世界に帰るためにはそれ相応の力が必要になるはずだ。最終的には元の世界に帰ることを目標とするとはいえ、当面の目標は強くなってこの世界を一人で回れるくらいになることだな。
なんて考えてると料理の方ももう無くなっていた。よし、とりあえず部屋に戻ってスキルとかを確認してみよう。
「ティーナちゃん、美味しかったよ、ご馳走様。ここに置いておいていい?」
「はい!大丈夫です!しっかり休んでくださいね。おやすみなさい!」
「ああ、おやすみ」
部屋に戻って見て自分のステータスとスキルを確認する。こんなふうになっていた。
名前-乾 和人
Lv1
ステータス
体力---500/500
魔力---300/300
攻撃力---95
防御力---320
抵抗力---400
<スキル>
空間干渉Lv1(エクストラスキル)
算術Lv2
鑑定Lv1
<特殊スキル>
言語理解
<称号>
世界をまたいだ者
<職業>
空間師(進化あり)
---
と、とりあえずこんな感じだった。
この空間干渉の隣にあるエクストラスキルと言うやつを鑑定してみるとまだ分からないことが多いが、このスキルは他のスキルと違い俺しか持っていなく、さらに進化するらしい。
進化の条件なんかは使いまくってレベルをあげていくと進化するようだ。
そもそもそんなことが書いてあることが分かっているのであれば追放なんてされないだろう。と思ったが、あの時は勇者やら賢者やらが出てきてこんなスキルは調べなくてもいいだろうと思われてしまったのだろう。
そもそも鑑定自体がレアなスキルなようで、基本的にはあまり使い手がいないようであの時も詳細まで調べられるような鑑定師はいなかったようだ。まぁそれと算術の方は数学がそこそこできていたからだろう。
ここまででも結構当たりなような感じがするが、まだ空間干渉についてはほぼ読んでいない。
調べてみるか。
「鑑定、空間干渉」
別に声になんか出さなくてもいいらしいがそこについては気分の問題だ。
そして出てきた説明はこれだ。
<空間干渉>
空間に干渉する。
指定した空間の中にある物質を変化させたり、空気を取り除くことが出来る。
レベルが上がるにつれ、指定出来る空間の範囲や広さ、干渉できる内容が増えていく。また、別の世界を作り出したりして何かを収納することも可能。この範囲は自分を中心にすることも、それから外すことも可能。
(レベル1の範囲-半径30センチの球状)
(干渉できる内容-空気を取り除く、物質の重さを少し変化させる)
---
おー、、、ん?なんかやばくね?
これって空気を取り除くことが出来る。重さを変えることが出来る。ってことは真空を作れる訳だから無差別攻撃としては結構やばい。この世界に生きているものも酸素を必要としているのであればそれだけで勝てる。相手の顔付近の空気の中の酸素を取り除いてしまえばいいのだから。重さを変化させるってことは自分を中心に展開して、自分の武器を軽く、相手の武器を重くすることまでできてしまうから接近戦でも技術を手に入れればこっちも強い。まぁ、まだLv1で範囲が狭いことがネックだがレベルをあげていけばそれも解消されるだろう。それだけでなく進化もするしな。
とここまで見た感想は
すごい、、、って感じだ。間違っても悪用しようとしては行けない気がする。力を振るう相手はしっかり考えよう。
とは言っても殺しにくるような相手にはこっちも本気でいいだろう。やはり平和な暮らしをしてきた俺は大変だと思うし殺すことに慣れてはいけないが、だからと言って殺しにくるやつは最悪殺すことになってしまうだろうから、覚悟しておくに越したことはないだろう。
さて、スキルの確認も終わって自分のスキルが結構ヤバいことに気づけたのは良かった。この世界の平均は分からないがあまり使いこなせていない今の段階で明らかに目立ってしまうのはあまりいい判断だとは言えないだろう。まずは明日にでも簡単な依頼を受けて街の外で色々試してみよう。
とりあえず色々あったがこの世界に来ての一日目がやっと終わった。明日からまた頑張っていこう。
------
side王城
「俺たちは勇者らしい」
と天上院快斗がクラスの全員(和人を除く)とこれからどうするかを考えていた。
「あれ?そーいや色々あってわかんなかったが和人居なくね?」
と圭太が言った。すると
「圭太、和人はよく分かんないスキルだったからって城から追い出されるって話してただろ」
とクラスメイトの一人青戸優斗が言った。
「あれ?そうだったか?だとすると和人のやつ大丈夫か?」
「まぁとりあえず何日かもつぐらいのお金と働ける場所何個か教えて貰ってたし大丈夫だと思うぞ」
「んー。まぁそうだな。和人なら割と異世界だー!つって楽しんでそうだしなぁ。ま、大丈夫だろう。城に連れ帰ってそこから出さないておいてもそれはそれで怒られそうだし」
と、そこまで言うとほかのクラスメイトも少し安心したような感じだった。和人は別にクラスでハブられていたりいじめられていた訳でもない。割と誰とでも話すような奴だったので陰キャと呼ばれる人からも陽キャと呼ばれる側からもそこそこ心配されていた。というか和人がいたからこそあまりクラスメイトの中でカーストが固まりきらずに、いじめなどが起きなかったとまで言う人もいる。実際のところそうである。和人は上手いこと色々な人と話すことでクラスの平和を保っていた。
本人はまるで無自覚だが。
ひとつの心配がなくなったところで、快斗は次の問題へと話を移した。それはこれからの行動だ。
快斗たちは当たり前だがこの世界については何も知らない。さらにいきなり戦えと言われた。それを鵜呑みにして言いなりになるのは危険だと思っている者もいるが、それを全く気にかけずに騒いでいるバカもいる。
今のところ言い争いになっていないのは勇者である快斗と竜騎士である圭太が話を仕切っているからだろう。和人がいないことの弊害がはやくも顔を出そうとしている。
「とりあえず、今の僕たちに足りていないのは情報だ。まずはこのまま彼らにこの国について、この世界についての情報を教えてもらおう」
「ま、それぐらいしかできないよな」
圭太もそれに賛同する。ほかのクラスメイトもそれでいいようで次々と頷いていく。
「よし、じゃあそんな感じで行こう。とりあえず今日は色々あったから部屋に戻ってしっかり休もう。明日からまた色々あるだろうから」
「そうだな。さすがに疲れたわ」
「ああ、そろそろ寝たい」
と圭太と優斗が言った。
そしてクラスメイトは各々部屋に戻り一日目を終えた。
-----------
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます