第39話 大切な約束と思わぬ疑惑
~ライギスside
クズ共を始末してから数日が経過した。
巷では、ユウガとそのパーティの男達は不祥事を起こしたことで失踪した扱いとなり、ギルドの登録を抹消されている。
あの件から翌日、俺は予定通りヤリパー場面を記録した
一応、被害者の少女達に配慮して彼女達の顔や体の一部に修正を加えて上でな。
連中もクズだったが、甘言に乗っかった女達にも多少の非はあると思うぜ。
俺らしくない配慮だが、まぁ協力してくれた特別サービスってやつだ。
この件で、ユウガ達の親である有力者達は失踪したバカ息子達の悪行に対する責任を問われ、その地位から失脚した。
民間の衛兵団から、他の余罪がないか徹底的に調べられるきっかけとなる。
バカ息子だけでなく、親の素行も問われ何かしらの不正がバレたら、もう一巻の終わりだな。
――ざまぁってやつだ。
たが問題もあった。
裁きの対象はユウガやバカ親達だけでなく、冒険者ギルドにまで向けられることになってしまう。
ギルド中にはユウガ達がヤリパーしている噂は広まっていたからな。
そのギルドマスターである、ロトブルとスレーフも耳にしていると聞く。
知っていながら放置していたって点で管理責任を問われるらしいのだ。
前世ではムカついた連中だが、今はカリアの両親に違いない。
正直、気も引けるが、こればっかりは仕方ないだろう。
それにロトブル。お前、確か言ってたよな?
――この国は市民が連合して成り立っている国だってよぉ。
だったら、テメェらの責任は市民の間で問われ判断をもらうべきだぜ。
『悪徳の勇者ライギス』にしたようになぁ……。
それで、前世で俺の悪行をチクって負の名誉を与え、テメェらだけ成り上がった件は水に流してやる。
ガチで、カリアに感謝してくれよ。
にしても、一つ謎が残ってしまった。
どうして、ロトブルとスレーフはあのダンジョンから生き残ったんだ?
そう考えながら、俺はギルドの食堂で一人昼飯を食べていた。
ギルドマスターは衛兵団に尋問を受けて連行されているが、ギルド自体は通常の運営をしている。
「――ペコパン、一緒にいい?」
カリアが声を掛けてきた。
俯いて、どこか暗い表情だ。
「もちろん……」
俺は胸の奥がぎゅっと絞られるも平静さを装う。
彼女は向かい側の席に座る。
「……大変だね、ギルドマスターに姐さんの件」
「……うん、でも仕方ないと思う。そういう立場だから……でも責任を問われるのは、『あいつら』の管理不足についてだけだから……多分、始末書を書かされるだけで済みそうだって……でも、これまでの『あいつら』の余罪もあるだろうから、しばらく時間は掛かるみたい」
あいつらとは、ユウガ達のことだ。
すっかりカリアからの信頼も失い、ざまぁだな。
もうこの世にはいねーけど。
「そう、大変だね……」
「でもね。ギルドマスターを解任されるわけじゃないから……そこはギルドのみんなも支持してくれているし、これまでの功績もあるから問題ないって」
なるほどね。日頃の行いってやつか……ライギスだった頃の俺にはなかった言葉だ。
もう、ロトブルとスレーフに関して嫉妬や復讐心は消えちまったけどな。
「良かったじゃないか。後は時間が解決して……」
「でもね」
カリアが言葉を遮ってきた。
「でも?」
「私……『あいつら』が許せない! 若い女の子の初心者冒険者をたぶらかして……あんんな酷いことを……誰かが記録した
憤りと悔しさで言葉を詰まらせるカリアに、俺は自然と彼女の手を取り握りしめた。
「ペコパン?」
「――大丈夫。キミは俺が守るよ。どんなことをしてもね」
「……うん、ありがとう」
カリアはニコッと微笑んでくれる。
俺が一番大好きな素敵な笑顔だ。
「ねぇ、ペコパン。明後日、私の家で行う予定だった誕生会なんだけど……」
「ああ、まだカリアの家も落ち着いてないからな……どうする?」
「うん、二人っきりでやらない?」
「二人っきり? 俺とカリアの?」
俺の問いに、カリアはこくりと頷く。
「……うん、駄目かな?」
「いや、いいよ! うん、やろう! やったぁ!」
思わぬ誘いに有頂天に興奮して舞い上がる。
うほっ! カリアと二人っきりの誕生会! 思わぬラッキー展開になったぞ!
ムード満点で進めば……案外、彼女との……イチャラブな展開も……。
――いいや駄目だ!
俺はライギスじゃねぇ! 純潔童貞のペコパンだ!
純情に……そう純粋に二人の時間を大切に楽しもう!
カリアの前だと、すっかり可笑しくなっちまった。
けど――今の俺は嫌いじゃない。
心が温かく優しい気持ちになれる。
俺を変えてくれたカリアに感謝しなきゃな。
大好きだよ、カリア……ずっと愛している。
次の日、夕方。
俺はソロ狩りをして、ギルドに戻って来た。
二人の若い女子が受付嬢と話し込んでいる。
赤っぽい茶系の長髪をした少女達。俺より年上っぽい感じに見えた。
美人顔であり、どことなくスレーフに似ている。
けど、この二人、冒険者風には見えない。
格好からして普通の町娘って感じだ。
そう考察している中、受付嬢と目が合う。
「――ペコパン君、お帰りなさい」
「あ、ああ……彼女達は? 依頼者人?」
「違うわ、ギルドマスターの娘さんよ」
え? ロトブルとスレーフの!?
つーことはカリアの姉ちゃんか!?
「そう、貴方がペコパンくん……話は父と母から聞いてるわ。わたしは長女のリーフよ」
「あたしは次女のミーフ、よろしくね」
「は、はい! 俺はペコパンです! どうかよろしくお願いします、お姉さん!」
背筋を伸ばし丁寧に挨拶をする。
「あれ? ペコパン君、ようやく目上に対しての口の利き方を覚えたようねぇ?」
受付嬢が嫌味たっぷりにツッコミを入れてくる。
うっせーっ! 俺にとって未来のお姉さんになるかもしれねぇ人達だから愛想よくしているだけだろーが!
受付嬢如きがその乳揉むぞ、コラァ!
けど今の俺は、カリアしか眼中にねぇから、テメェには何もしねぇけどな!
「ところでお二人は、どうしてこんなむさ苦しいところへ?」
「お父さんとお母さんが来週に戻って来れそうだから、その前に書類整理を頼まれたの」
「私達、冒険者じゃないけど、時折事務処理とか手伝っているのよ」
へ~え。んで三女のカリアが冒険者か……いいね。
あれ? でもこの二人……美人だけど、まるでカリアに似てねーぞ。
如何にもスレーフの娘って感じだ。
まぁ、ロトブルの遺伝子を受け継がなくて良かったけどな。
にしても、やっぱカリアって……。
スレーフが浮気して出来た子なのか?
けどまぁ、どうでもいいか。
カリアはカリアだ。俺の大好きな女の子に変わりない。
「そうなんですね……ところで、カリアどうしてます?」
「カリア?」
リーフは首を傾げる。
「ええ、三女の末っ子さん。ここで冒険者している妹さんですよ」
「ペコパンくん……あたし達、二人姉妹だよ」
「え?」
なんだって?
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