第37話 悪徳勇者再び
~ライギスside
オッさんの話だと、あのユウガ達は新人で女性冒険者に目星をつけては声を掛け、パーティに入れてはクエスト活動をそっちのけで性行為を目的としている連中であるらしい。
大抵の女性冒険者は何も言えず、ギルドをやめるか他の国に移ってしまうようだ。
ちなみにヤリパーとは、『ヤリ』は性行為、『パー』はパーティの略とのこと。
「手口は簡単だよ。未成年にエール酒を飲ませて、ぐでんぐでんにして奴らで頂いちまうって話だ。冒険者の間じゃ連中を『ハイエナのユウガ』と呼ぶ奴もいる」
「けど、どうして誰も何も咎めねぇんだ!? ロトブル……さんとスレーフさんは知ってんのか!?」
「ギルドマスターは知らねぇ……噂くらいは耳にしているかもな。けど、ユウガを含むパーティの連中は、このナルポカ共和国を代表する商人や有力者達の息子で特権階級……証拠がないのに大っぴらにできないのも確かさ」
何だよ……それ?
ロトブルとスレーフも、勇者ライギスや『勇者育成委員会』には強く言える癖に、富裕層共には何も言えねぇってか!?
何が共和国だ!? 市民中心の平等の国だ!?
これじゃ、君主制の王国と形が違うだけで何も変わらないじゃねぇか!?
――私……ずっとペコパンとパーティ組みたいと思ってたから
俺の脳裏にカリアの言葉が蘇ってくる。
カリア……。
「――俺が守る!」
「おい、ペコパン?」
「カリアは俺が守る! たとえどんな手を使ってでもな!」
「ひ、ひぃっ!」
オッさんが俺の顔を覗き込んだ途端、声を引きつかせ、椅子から転げ落ちた。
熟練冒険者がビビッてしまうほど、その表情は恐ろしく歪んでしまっていたのかわからない。
ただ生まれ変わって真っ白だった心に黒い染みがつき、それが次第に広がっていくような気分だ。
でも懐かしい……いや、これが本来の俺なのだ。
――悪徳の勇者ライギス。
カリアを守るためなら、俺はライギスに戻る!
当日の夜、俺は行動に移した。
とある酒場の個室で、ユウガ達パーティは冒険者風の少女達三人組を連れ込んでいる。
ギルドで見かけたことのある三人組だ。
確か、彼女らも冒険者成りたてのEランクの筈。
なるほど……噂通り、初級冒険者達ばかりを狙う、『処女キラー』ってか?
少女達はユウガ達に無理矢理エール酒を飲まされたのか、三人とも顔を真っ赤にして意識が朦朧としている。
それをいい事に、男達はやりたい放題に楽しんでやがる。
俺は
片手に握る
後で複製して国中にバラまいてやるためだ。
だが、俺が陥れたいのはユウガ達じゃない。
奴らはこの場で全員殺す――!
俺の中で、とっくの前に決定していることだ。
「――ふぅ、すっきりした。これだから、素人冒険者はちょろいなぁ」
「なあ、ユウガ~、この女達どうするよ~?」
「その辺で捨てて置けばぁ? あっ、でも服だけはちゃんと着せてくれよ。足が着いたら困るんでね」
「足じゃなくて、無責任なもん植え付けちまったけどな~!」
「ギャーハハハッ、堪んねぇ! これだから、ヤリパーはやめらえねぇぜ!」
ふん、本性剥き出しのクズ共が……。
いくら外見が良く見せても、内面がこうも醜いと、もう笑っちまうぜ。
会話も全部、
男達は用を済ませた少女達に服を着させ、外へと運び出した。
数分後、直ぐに戻ってくる。
「ユウガ~、今度はあのカリアちゃんを狙うつもりのか?」
「まぁね。みんなだって食べてみたいって言ってたろ?」
「けどいいのか? 仮にもギルドマスターの娘だぜ?」
「証拠がなければどうともでなるさ。それに、ロトブルとスレーフは僕のパパには頭上がらない。何せ僕のパパはこの国の大商人で有力者だ。あのギルドにも多額の援助をしているからね」
「そうだったな……だから、この国のギルドは『勇者育成委員会』に強気でいられるってわけだ」
「その通りさ。君主制の国じゃ、こうは行かないけどね。共和国万歳って感じだなぁ、ハハハハッ!」
「ウケる~! 早く、カリアちゃん来ないかなぁ! 今から
男の頭頂部に
「「「「――!?」」」」
驚愕するユウガ達。
ドサッと男が前のめりで倒れる。
そのすぐ後ろで、俺はしゃがみ込んでいた。
「何だ、お前!? 何モンだ!?」
「こ、こいつ……確か、カリアといた冒険者……名前はえっと……」
ユウガは現実を逃避するかのように、必死で俺の名前を思い出そうとしている。
こいつが知るわけねーよ。
だってテメェ、ずっと俺を無視してたじゃねぇか?
「――ライギス。そう名乗っておくぜ」
「ライギスだと……ナルポカ共和国の嘗て勇者と同じ名前?」
「そんなところだ」
戸惑うユウガに尋ねられ、俺は平然と答える。
「ギャーハハハッ! 『悪徳のライギス』って、最悪でとんでもねぇ糞野郎じゃねぇか!? んな奴と同じ名前で何イキって――んゴォッ!」
男の片眼に
俺が倒れた奴の頭頂部から抜き投げつけたのだ。
ドサッと、その男も倒れ、床に多量の血が溢れ広がり流れていく。
「ひぃいっ!? 何なんだ、お前!? 本当に初級クラスの冒険者なのか!? それにどうして僕の仲間を殺したんだ!?」
俺は立ち上がり、叫んでいるユウガに向けてニヤリと口角を吊り上げる。
「テメェらが、俺が最も大切で守りたい領域に土足で踏み込もうとしているからだ」
「守りたい領域だと……カ、カリアか?」
「薄汚ねぇ口で、その名を呼ぶなよ」
俺は長剣を抜き、切っ先をユウガに向ける。
「クソガキがぁ! 俺達を舐めんなよ!」
「所詮、
男達二人が武器を取り、威勢よく身構える。
俺はフンと鼻を鳴らした。
「バカが。俺のLv値はもうカンストしてんだよ――《
片手から魔力弾を二発放つ。
男達の胸を貫き、闇の炎が全身を包む。
「闇の魔法だとぉぉぉぉ!? 何で
「ギャアァァァァァァァ! 熱ちぃぃいぃぃぃ!! いでぇぇえぇよぉぉぉぉぉ!!!」
二人の男は苦しみ、断末魔の悲鳴を上げる。
全てが灰になって消滅した。
――前世で俺が魔王ザフトに始末された闇属性の魔法である。
ギルドに登録した後、管理している書物庫に潜入して封印されている『魔導書』を読み漁って見つけたんだ。
魔王もエロく強かったが、一番驚いたのは『魔王都』の魔法文明が地上よりも大幅に発展していたこと。
きっと禁忌魔法ですら出し惜しみなく広めることで、圧倒的に自国を強化していたに違いない。
勿論、短命で入れ替わりの激しい人間達では不可能だ。
絶対的で永劫の君臨者、それに仕える強固な側近達が厳粛に管理することで暴走を抑えながら運営していたに違いない。
俺もそこだけは魔王ザフトを尊敬し感銘を受けた。
そして属性関係なく、強さを追い求めるようにもなっていたのだ。
冒険者として成功し、カリアと結ばれるために――。
「さぁ、ユウガ……残るはテメェだけだ――死ぬ覚悟はいいか?」
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