第29話 作戦会議室での戯れ




「マリーベル! いくら副司令官とはいえ、記憶を失くされたザフト様に虚偽を植え付けようとは何事ですか!?」


「もう、お姉ちゃん達が詐欺罪で捕まえちゃうぞ~!」


「いっそ永久に地下牢獄行きだね! この嘘つきクィーン!」


 ケル、ベロ、スゥのケルベロス三人娘も揃って非難している。


 ずっと、そっぽを向いていたマリーベルも苛立ち初め眉間に皺を寄せていた。


「あーっ! なんて、うるさくてしつこい雌犬どもでしょう! このわたくしが最もザフト様から寵愛を受けるに相応しい存在なのですわ! そこまでキャンキャン吠えられるなら、いいですわ! 全員、束になってかかってらっしゃい!!!」


 マリーベルは席から立ち上がると、翼を広げ戦闘態勢に入り女子達を挑発する。


「「「「「「ああっ!?」」」」」」


 女子達は一斉に立ち上がり、もの凄い形相でマリーベルを睨んだ。


 みんな普段、俺の前では絶対に見せない強面の表情だ。


 一触即発――つーか、どんな状況よ、これ?


 しかしマリーさんも、いくら魔王軍NO.2でLv.900でも、流石にこの面子を相手に勝てなくね?


「――皆、いい加減にしないか。ザフト様の前だぞ。それに我ら陛下に直属する側近は戦わぬと誓った身……禁を破るのであれば、この俺が相手になろう」


 ダークロードが腰元の剣の柄に手を添え、低く張のある声で制した。


 その瞬間、興奮がピークに達していた女子達が一気にクールダウンし、静かに頷き自分達が座っていた席に腰を下ろす。


 流石、魔王軍の黒一点の側近かつ、NO.3の親衛隊長だ。


 けど、格上であるマリーベルすら大人しく素直に応じている。


「まぁ、嘘をついたことに対しては、わたくしも些か調子に乗りすぎましたわ……申し訳ございません、陛下」


「い、いや、もういいよ……マリーさん」


 俺は許容しつつ、ダークロードに視点を置く。


 一体この黒騎士は、どういうポジションなんだ?

 毒舌の親衛隊長にしちゃ、随分と周囲から一目置かれていると思った。


「糞エロクズ骸骨……いえ、陛下。どうかお話の続きを」


 ん!? ダーさん、いつの間にか「クズ」ってワードが増えてるぞ!

 女子達を窘める前に、まず自分の言動から窘めろよな!


 まぁ、今はいいや……。


「じゃあ、話を戻すよ。これからは、俺とみんなが一致団結をしないと、このグダグダな状況から打破できないと思うんだ……俺も心機一転で頑張るから、みんなも俺に力を貸してしてほしい」


「もちろんですわ~! この魔王軍から奈落にかけて、全て陛下の所有物……皆、陛下の……いいえ、特にこのわたくしがザフト様のために、いつでもこの身を捧げましょう! 何なら今すぐ寝屋に――!」


 またまたこの暴走サキュバスクィーン、段々趣旨が変わっているじゃないか!?

 そんなこと言うから、またみんなの目つきが変わるんだろうが!


 もう副司令官なんだから、少しは自重しろよ!


 俺は不快そうに強く咳ばらいをすると、マリーさんはしゅんと大人しくなった。

 この従順さが、まだ幸いなのだろう。


 他の腹心達も気持ちよく頷いてくれて、俺の言葉に賛同してくれる。


 良かった……だけど、これだけ一騎当千の最強猛者が揃っていても、この世界を相手に戦えるだろうか?


 やはり何をするにしても数は必要だ。


 即ち兵力、そして維持する軍資金――。


 最も手っ取り早いのは手頃な国を攻めて支配地を増やすこと。


 ――その為には地上への調査が必要だ。


 シユンだった頃の知識も祖国フォーリアと過去に調べた他の冒険者程度で、他国の軍力や情勢までには至ってないからな。


「地上で調査しているカリシュアから、何か報告は来てないのかい?」


「はい、調査活動の報告は逐一来ておりますわ。それと陛下……例の『復活したあの者』を発見したという知らせですわ……」


「……ああ、ね。それで?」


「カリシュアが接触を図り、もしザフト様の予想通りのことであれば――」


「そうだ。俺にとって非常に危険な奴だと思う……これからのことを想定して後始末を頼むよ――目には目をってね」


「わかりましたわ、そのようにカリシュアに指示を送りましょう」


 マリーベルの返答で、俺は穏やかな口調ながらも心の奥底でほくそ笑んでいる。

 

 また自分、いや魔王ザフトとしての残忍な一面が出ていると思った……。

 どうも、シユンの頃で散々『そっち系』の連中で酷い目にあったからか、用心深く過敏になってしまう。


 特に『勇者』と呼ばれる連中に関してはな。

 

 しかも、20年前に前ザフトの暗殺に成功したが復活したとなれば尚更だろう。

 

 もし、また俺を狙ってくるようなら今のうちに始末するしかない。

 次に暗殺されたら、この身体が復活できても……シユンの魂が復活するとは限らないからだ。


 最後の四天王である『カリシュア』には、それを見定めるよう地上調査と共に特務任務として与えていた。


「それと、この『魔城シュバルツナハト』の地下宝物庫で軍資金を賄えられないの?」


「できなくはないですが、それは我が魔王軍にとって最後の要……消耗の激しい戦なので使い切ると世界征服する前に財政難で滅んでしまいますわ。どうしてもお使いになられたいのであれば、『魔城』と『魔王都』の防衛費に当てるべきでしょう」


 う~ん、マリーベルの言う事も一理ある。

 ここが潰れてしまえば元もこうもないってことだよな。


「但し今後、陛下がハーレム建造など、しょーもない理由で無駄遣いしない限り、半年後くらいで一戦くらい出陣できる軍資金は確保できますわ」


「本当、マリーさん!?」


「はい、ここ『深淵の地下都市』から更に地下に『無窮の鉱山資源』がございます。住民らに職務として命じれば、すぐさまに黄金や鉱石が採掘され資源となり得るでしょう」


「そんな資源があるの? だったらザフト……いや、俺の素行ばかり愚痴ってないで、ちゃっちゃと始めてくれよ~!」


「勿論ですわ。しかし実行するには、二つばかり条件が整いませんの」


「二つの条件?」


「一つは要員不足。採掘は妖魔族のゴブリンが得意とする作業です。地上にいるゴブリンも冒険者に駆られ年々数が減って参ります。『魔王都』に住むゴブリンだけではとても間に合いませんわ」


「陛下が人間の女性に対し、ゴブリンやオーク達の低級魔族達に対して『強姦交尾禁止令』を出したからですね……奴らは奴らなりに知恵を絞って種属を絶やさないよう努力しているようですが……こうも不況続きだと限界も来ているようです」


 ダークロードが嫌味っぽく付け加えてくる。


 あ~あ、んなの知ってますぅ!


 けど、その点に関してだけ、俺は前魔王ザフトを褒めたいね。

 やっぱ無理矢理はいかんよ。

 愛と同意があっての交配だと思うからな。


 そこは俺になっても絶対に譲らないよ。


「もう一つは、地下にある『無窮の鉱山資源』には、あの『深き迷宮』共の根城になっていると以前から巷で囁かされております」


「え!? あの反魔王派のテロ組織が!?」






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