第12話 魔王の尋問と勇者の悪行
~アレクside
「言うってなんのことだ?」
「貴様が追放して殺した男のことだ」
「なっ――!?」
なんで魔王が知ってんだよぉ!?
「アレク?」
セイリアが大きな二重の碧い瞳を丸くして見据えてくる。
「違う! 違うぞ! 僕は何もしていない!」
「そのシユンという者を追放する際に『パーティの満場一致で追放が決まった』と言い、背後から襲い崖から斬り落としたのではないか?」
な、なんだこいつ……まるで現場を見ていたように詳しすぎるじゃないか!?
「アレク、やはりお前が……」
「シユンくんを殺したのね……私達まで追放する意志があると嘘をついて」
「酷いよぉ……どうしてそんなことを!?」
ヤバイぞ、これ……パーティ共の僕を見る目がすっかり変わっている。
こいつらぁ、疑惑どころか確信したかのように問い詰めてきやがって……!
「違うって言ってんだーが! 僕があんな雑用係を殺してなんのメリットがある!? よく考えたらわかるだろ!? そもそも証拠や動機がないじゃないか!?」
「――セイリアはもう俺の女。貴様は確かにそう言ったな」
「わたしが……アレクの……シユンにそんなこと言ったんですか!?」
「だから知らないって! そうだ、これは罠だ! 僕達の仲を引き裂く魔王の誘導だ! どうか信じてくれよぉ!」
なんなんだよ……これ?
どうして僕が追い詰められるんだ?
この魔王は一体何者なんだ?
「では勇者以外のパーティ達に聞く。貴様らは、そのシユンという男を追放に賛同はしてないし、勇者に殺されたことも知らぬのか?」
「当然です! シユンはわたしの大切な……今も愛している恋人なのです! まさか殺されていたなんて……しかも勇者であるアレクに!?」
セイリアは手に持つ杖を震わせる。
もう完全に魔王の言葉を信じきって、美少女とは思えない凄い形相で僕を睨んでいる。
「シユンはオレにとって無二の親友だった……守ってやれなかった」
「可哀想に、シユンくん……いい子だったのに」
「シユン……大好きって言えなかった……ごめんね、ううう」
レイドもルーファナもララノアも、みんながゴミカスであるシユンの死を悲しんでやがる。
どいつも僕の言葉は誰も信じない癖に、魔王の戯言ばかり鵜呑みにしやがって……。
プッツン――!
僕の中で何かが切れた。
「ふざけんぁぁぁっ、テメェら! どいつもあんな無能なゴミカスばかり、よいしょしやがってぇぇぇっ! 僕は勇者だぁ! 選ばれし英雄なんだぁ! なぜ僕を敬わない!? シユンみたいな奴ばかり持ち上げやがんだぁ!? クソッ! こんなことなら、あいつの目の前で、セイリアお前を奪ってやりゃよかったわ、ギャハハハハ!」
「ア、アレク……では、やはり貴方がシユンを?」
「ああ、そうさ! 満場一致の追放をでっち上げ、ブッ殺してやったのさぁ! テメェらが悪いんだ! 僕を、勇者の僕を持て
「アレクゥゥゥ!」
「ヒャーァハハハッ! どうせ僕達はここで死ぬんだぁ! 全部ブチまけてやるよぉ! お前らメス共もこの左目に埋め込んだ《
「それで、アタシが……アタシが可笑しくなったんだね!?」
「ああそうだ! ララノア、テメェのようなバカエルフが一番ちょろかったぜぇ! ルーファナさえ邪魔しなけりゃ、今頃は僕なしじゃ生きられない身体にしてやったのによぉ!」
「やっぱり、その義眼……あの廃墟神殿で手に入れたのね!?」
「ああ、そうだ! もう少し役に立つと思ったんだけどよぉ! マジ使えねーわ!」
「アレク……貴様は最低だ! この事は国王に報告するぞ! 貴様のようなゲスに二度と勇者は名乗らせん!」
「脳筋レイドがぁ! ここから生きて出られたらの話じゃねーか! 僕が死んでテメェらだけが生き残れるわけねーだろが、ああ!?」
「――いや、ここで死ぬのはお前だけだ、勇者アレク」
魔王は言い切り、すっと玉座から立ち上がった。
**********
追い詰められヤケを起こした、アレク。
その告白は実に聞くに堪えない内容だった。
この俺――シユンに対しての一方的な嫉妬。
ただそれだけの理由で追放され殺されたのだ。
唯一良かったのはパーティ達が俺を裏切ってなかったこと。
みんな今でも俺のことを仲間として大切に思ってくれている。
やっぱり最高の仲間達だ。
セイリアも変わらず、強い意志を持った大好きな聖女のままだった。
俺は彼女の幼馴染で良かった……好きになって良かった。
いつまでも変わらないでいてくれてありがとう。
これで思い残すことはない……。
――さぁてと。
尋問タイムは終わりだ。
ここからが復讐ターンだ。
「マリーベル。打ち合わせ通り頼むよ」
「わかりました我が愛しき君、ザフト様――《マインドヴァニッシュ》!」
マリーベルは片腕を翳し幻惑魔法を発動させる。
一瞬で勇者パーティ達の周りが黒い霧に覆われた。
そう、アレク以外の――。
「ああ、おいみんなぁ!?」
「勇者様、どうかご安心を。パーティ様達は一時的に五感を奪って動きを封じただけですわ」
「動きを封じただと? どうしてそんな真似を……?」
「お前と直接やり取りするためだよ、アレク」
俺は階段を降り、アレクに近づく。
「なんだって……魔王ザフト、あんたは一体?」
「この顔に見覚えがあるか?」
俺は髑髏の仮面を外し、素顔を見せた。
その瞬間、アレクの全身が小刻みに震える。
「う、嘘だろ……? ど、どうしてお前がここにいるんだ……シユン!?」
「シユンじゃない。ご覧の通り、魔王ザフトだ」
「嘘をつけ! そんなマヌケ顔はシユン、テメェしかいねーだろが――ぶほっ!?」
突如、アレクの体が吹き飛んだ。
大理石の床を滑って行き、そのまま壁に激突する。
奴の左頬が腫れ鼻血を流していた。
マリーベルがアレクの頬を引っ叩いたのだ。
「ザフト様への暴言、決して許しませんわ!」
「マリーさん、そいつ殺しちゃ駄目だからね」
俺は溜息を吐きながら、床に倒れているアレクに近づく。
「おーい、生きているか?」
「ち、ちくしょう……」
「よし、大丈夫そうだ。みんな、しばらく勇者と二人っきりで話したい。全員、部屋から出て行ってくれ」
俺が命じると、部下達は瞬きする間に姿を消した。
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