第11話 勇者パーティとの邂逅
~アレクside
「ぐっ……悔しいがレイドが人質に取られている以上は従うしかないか」
「いや、アレク。別にオレは人質に取られてないぞ」
「やむを得ない……こうなれば魔王に従うしかない。みんな行こう! その代わり僕の大切な仲間に手を出すなよ!」
「だから傍にいるだけで、拘束も何もされてないじゃないか?」
「……可笑しな勇者だ。まぁいい、ついて来るがいい」
ダークロードっという黒騎士の案内で、僕は「クソッ、魔王めぇ! 僕は屈しないぞ!」と力強く叫びながら足取り軽くついて行く。
他の女子達も渋々ついて来る。
「セイリア……これ、ヤバいんじゃない?」
「ルーファナさん、何がです?」
「今、こっそり鑑定魔法で、あの魔族達をサーチしたけど……黒騎士はLv.850で
「ええ!? それ、もう中ボス級じゃないよ! 最上級の側近クラスじゃないの!?」
「ララノアの言う通りです……とても私達が手に負える相手ではありません。今からでもアレクに知らせないと――」
「待って、アレクに言っても無駄よ。何か別なこと考えているみたいだから……」
「別なこと?」
何か女達がごちゃごちゃうるせぇ。
フン、僕が世界の半分を手に入れた暁には、当面の間だけ愛玩ペットとして傍に置いてやるから今のうちに受け入れる準備しとけっての。
さぁ、魔王ザフト様~、僕は貴方様に忠誠誓いますよ~♪
全員が入り口をくぐると、モエトゥルが扉を閉める。
鉄の扉はフッと消えた。
どうやら魔法で簡易的に生成された
洞窟から一変し、綺麗な大理石の廊下を歩かされた。
このエリアから魔王城なのだろう。
にしてもなんて広さだ。
ここに比べりゃ祖国のフォーリア王城なんて犬小屋だな。
僕達は『玉座の間』へと通された。
より広々とした空間で負の魔力に満ち溢れている。
左右壁の奥側にメイドの姿をした女子達がずらりと並んでいる。
みんな魔族だが綺麗どころばかりだ。
赤絨毯の上を歩き、奥側へと進む。
数段の段差があり、中央に豪華な玉座に腰を下ろす者がいる。
漆黒の装束に髑髏の仮面を被る男。
こいつが魔王ザフトか?
その隣に艶めかしく美しい姿をしたサキュバスクィーンの少女が傍で立っている。
魔族でなければドストライクの絶世の美少女。
清純派のセイリアとは真逆のタイプが尚更いい。
フフフ……魔王め。いい趣味しているじゃないか。
僕となんか気が合いそうだぞ。
しかしプレッシャーなのか?
かなりヤバイ……見ているだけで失禁しそうだ。
「ひぃっ!」
ルーファナが声を引き付けている。初めて聞く声だ。
「どうしました!?」
「あ、あのサキュバスクィーンLv.900……魔王はLv.999……信じられないわ!」
ほら見ろ。やっぱカンストしてんじゃねぇか。
人間がいくら頑張って鍛えた所で高が知れている。
伝説の勇者と呼ばれる奴でも、Lv.150くらいがやっとなんだ。
だから伝説の武器や宝具を装備して、パーティを組み数でモノを言わすしか戦う術はない。
それが人間の限界って奴さ。
こんな連中、まともに戦って勝てるわけねーじゃん。
――僕は寝返る!
闇堕ちでもなんでもして魔王様に仕えるんだ。
だがもう少し勇敢な勇者を演じなければならない。
仕方なく屈服して見せた方が、パーティの女共も見習って闇堕ちしやすいだろう。
その後で俺のペットにしてやんよ!
ああ~っ、早く魔王ザフト様に跪きて~っ!
「――貴様らがダンジョンに潜入した勇者共か?」
魔王ザフトは重々しく口を開く。思ったより若い声だ。
「はい……いや、そうだ! 僕は勇者アレク! 人類の平和を脅かす魔王ザフト! 貴様を斃しに来たぞ!」
危ねぇ! 敬語で答えるところだったわ~!
もう僕、忠誠誓ってんじゃん! 心酔してんじゃん、魔王様に!?
「……随分と威勢だけはいいようだな。しかし、どいつもレベルが低すぎる。その程度で、この『
そんな、貴方様に勝てるなんて思ってませんよ~!
早く、世界の半分の話を切り出してくださいっすよ~!
したら、このパーティ共を僕が上手く説得しますから~ん♡
「うぐっ……これが魔王の放つ闇の魔力か……この勇者である僕でさえ見つめているだけで心が乱されそうだ……なぁ、みんな!?」
「――魔王ッ! わたくしは貴方なんかに屈服いたしません!」
ええ~っ!? セイリア、おまっ……何言ってんの!?
ここは「確かに!」って苦しい表情で同調する場面だろーが!?
「ほう……神官、随分と気が強いな。気に入ったぞ、俺に仕えないか? さすれば闇司祭の地位を貴様に与えてやろう」
うほっ! ラッキー!
やっぱ魔王様、俺達を勧誘する気満々じゃん!
いいぞ、セイリア! このままYESって答えるか、困惑して僕に判断を委ねてこい!
そうすりゃ、上手くやってやるからよぉ!
「お断りです! わたしには祖国で待つ大切な者がいるのです! 決して闇堕ちなど恥じるべき行いはいたしません!」
この堅物バカ女ァ! 何、即答で拒否ってんだよぉ! せっかくの美味しい話をぉぉぉっ!
「……そうか。では他の者達はどうだ?」
うひょっ! 魔王様、俺達にも振ってくれたやん! よぉし、俺は当然YESだ!
少しばかり演技を入れた上でなぁ!
「くっ、くそ……悔しいが、これほどの力……ぼ、僕は――」
「断る」
「嫌よ」
「嫌ッ!」
テメーらぁ! 勇者の僕を差し置いて勝手に言ってんじゃねーよ! こいつらアホかぁ!?
「ほう……意図を聞かせてみろ」
「オレはフォーリア国に仕える
カッコつけんじゃねーよ、レイド! この
「私もよ。たとえこの場で殺され魔族の慰み者にされても、心までは奪えはしないわ!」
じゃあ、ルーファナ、僕が慰み者にしてやんよ! お前の両乳を揉みしだいてなぁ!
「アタシは心まで汚れたくない! シユンに嫌われるようなことはしない!」
なんだ、ララノア? 汚れるって、まさか僕との関係を言っているのか!? テメェ、まだ全て奪ってねぇじゃねーか!? ふざけんなよ、この糞ビッチエルフがぁ!
「……そうか。それが貴様らの答えか。よくわかった」
「い、いえ、魔王さ……」
ヤバイッ。 この状況、僕だけ寝返るのはマズイ……。
逆に魔王の心象を悪くしてしまうかもしれない……魔族は闇属性だが仲間意識が高いと聞く。
ここで僕が仲間を裏切るような行動を取れば、その程度の奴としか見られない。
そんな奴に世界の半分どころか、兵士にも入れてもらえないじゃないか。
「勇者よ。何か言いたそうだな?」
「い、いえ……ぼ、僕は――」
まずいぞ……どうする? どう切り出せば、僕だけでも魔王軍に入れてくれるんだ?
「何か言いたいことがあるのではないか?」
「うっ、そ、それは……」
「たとえば、さっきそこの白エルフが話した人物……」
「はい?」
「シユンだったか? その者について何か言うことはないのか?」
「え?」
どうして魔王の口から、あんなカスの名前が出てくるんだ?
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