第8話 勇者の捻じれた殺意




~アレクside



 さぁってと、どの女に《蠱惑の瞳フラストレーション・アイズ》を試してやろうか?


 本命はセイリアだが、より確実性を高めるために、あの女はメインディッシュでいいや。


 やっぱりルーファナだな。

 あの巨乳はもろ僕好みだし、いつも生意気に意見しやがるから、この際主従関係をはっきりさせてやるぜ!


 下半身を疼かせながら、僕はあの女を探すもどこにもいない。


 剣の練習をしていたレイドの話だと、シユンとセイリアを連れて薬草を取りに行っているらしい。

 こんな夜中にアホかあいつら?


 そういや、シユンも雑用係で索敵もするから夜目が効くんだっけな。

 どうでもいいや。


 テント近くに戻ると、ララノアが一人で武器の整備をしていた。

 何故か機嫌よくニヤついてやがる。

 大方、シユンに頭を撫でられて舞い上がっているんだろうぜ。


 今、僕が身体中を愛撫してやんよ。


 確かこいつは、エルフ族の中でも貴族階級のハイエルフだったよな?

 小便臭い小娘っぽいが、美人で可愛いし決して悪くはない女だ。


「ララノア」


「どうしたの、アレク? アタシに何か用?」


「僕の瞳を見てごらん……」


 言いながら、《蠱惑の瞳フラストレーション・アイズ》を発動させる。


 瞬間――ララノアの態度が豹変する。

 頬をピンク色に染め、ぽーっとした表情で俺を見つめてきた。


「アレク……アタシ……」


「テントに行こうか?」


 俺は誘うと、ララノアは頷き、手を繋いでテントに入った。


 唇を奪い、自分から服を脱がせ、すべすべの柔肌を堪能する。


 時折漏れる嬌声に僕の興奮は最高潮に達した。



 そしていよいよって時――。



「ララノア~! いるんでしょ~!?」


 突然、ルーファナがわざとらしい口調で入ってきた。


「――!? アタシ、何を……嫌ッ、アレク!? 嫌ァァァァァッ!!!」


 ララアは正気を取り戻し、泣き叫びながら服を持ってテントから出て行った。


「……あら、ごめんなさい。お邪魔だったわね?」


「い、いや……別に」


 クソッ! この魔道師女ァ! もうちょっとのところで余計な真似を!?


 だが、これはこれでいいんじゃね?

 何せギンギンの状態で本命の女がのこのこ来やがったんだからな!


 ララノアも出て行って、丁度僕とこの女の二人っきり――。


 やっちゃうよ~ん♪


「ルーファナ、僕の瞳を見てごらん……」


「え? どうしたの?」


「ほら、何か感じないかい?」


「……そうね。もう少し勇者らしくしてくれたら、いい男かもね……ごめんなさい。私、シユンくんとセイリアを待たせているから」


 ルーファナはわざとらしく片目をつぶって見せ、そそくさとテントを出る。


「おい、ルーファナ!」


 バ、バカな!? どうして蠱惑されない!?


 ララノアは上手く言ったのに……何なんだ、あの女!?


 まさか事前に魔法で自分の抵抗力レジストを上げたのか!?

 《蠱惑の瞳フラストレーション・アイズ》がバレているってのか!?


 クソッ、どうする!? 追いかけるか!?


 いや駄目だ……墓穴を掘るだけだ。


 深追いをするな……。


 僕は感情と衝動を抑え込む。


 今回は諦めるしかない。だが隙を見ていずれ奪ってやる!



 この一件について、ルーファナは他のパーティに喋ることはなかった。


 所詮は男女の間柄だし、別に僕が何か問題を起こしたわけじゃない。

 話を大きくして傷つくのはララノアだし、それが理由で勇者パーティが解散となっても叩かれるのはルーファナ自身でもある。


 魔道師ってのは賢者職であり、勇者の次にパーティを取りまとめる参謀であり副隊長でもあるからだ。


 それに僕とララノアのことは、その場のノリと勢い余ってと言ってしまえばそれまでだからな。


 しかし、ルーファナの奴、何かに勘づいているのは間違いない。


 レイドも時折、僕の様子を監視するような目で見て来るし、当面は自重しなければならないだろう。




 それから僕達の旅は順調だった。

 これも聖剣ファリサスを手に入れたおかげだ。


 多少高レベルの魔物や魔族に遭遇しても、この僕が簡単に蹴散らしていく。

 結果、周囲から名を上げていくようになった。


 村々に立ち寄ると庶民達から歓迎され、勇者様としてもてはやされる。

 んで、旅の疲れとストレス解消でパーティ達の目を盗んでは、好みの村人女を食いまくって楽しんだ。


 この場面では問題なく、《蠱惑の瞳フラストレーション・アイズ》は正しく発動している。

 ようやく、左目を犠牲にした甲斐があったと安堵した。


 だが気に入らないことがいくつか起きる。



「ララノア、どうした?」


「なんでもないよ……シユン、ごめんね」


 エルフの小娘が僕を避けるようになり、シユンの後ろに隠れるようになった。

 以前よりも、ゴミカスのシユンにすがる健気な姿に僕はイラッとする。


 それはまだいい。



 だが最もイラっとしたのは――



「シユン、愛しています……」


「俺も愛してるよ、セイリア……」


 誰も見ていない場所で二人っきり。

 星空を眺めながらムード満点に愛を語り合う二人。


 そして――


 ちゅっ。


 フレンチだが、唇を重ねて頬を染め合う仲睦まじい姿……。


 木の影に身を隠し、僕はそれを見据えて凝視する。


 同時に、これまで蓄積していた思いが沸点を越えて爆発した。



 ――糞がァァァァァァァッ!!!



 シユンの分際でセイリアとイチャつきやがってぇ!


 セイリアもなんであんなゴミクズの雑用男がいいんだ!?


 普通、勇者と神官のカップリングが定番じゃねーか!?


 この僕のどこが奴に劣っているっていうんだぁぁぁ!!!?


 ちきしょう! ちきしょう! ちきしょぉぉぉぉぉう!!!?



 ちぃぃぃきぃぃぃしょぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉう!!!!!?



 僕は興奮のあまり息を切らす。

 感情を抑えるため深呼吸を繰り返した。


 その甲斐もあり、湧き立った感情がすぅっと一気に冷めていく


 ――もう、いいわ。


 あんな奴、いらねーわ。


 シユン、テメェは追放だ。


 そうだ追放してやればいい……。


 奴がパーティからいなくなりゃよぉ、きっと女共も僕を頼らなければならないことに気づくだろう!


 二度とセイリアと会えなくしてやるよ。



 シユン、これは自業自得だ。

 テメェは調子に乗りすぎた。


 さらに、僕は……。



 ――シユンを殺す!



 ぶっ殺してやる!


 追放を叩きつけて、シユンが絶望しているところで殺す……もう最高じゃね?



「今のうち、せいぜい楽しんでおけ……シユン。セイリアは僕のモノだ――」



 そして、翌日の夜。


 僕は行動に移したんだ。



 シユンが腹部を斬られ崖から落ちていく有様……あの絶望した形相。



 実に爽快で、ざまぁな瞬間だった……うふ。






──────────────────

次話から主人公視点に戻ります。


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『二度目から本気出すトラウマ劣等生の成り上がり~過去に戻され変えていくうちに未来で勇者に媚ってた筈の美少女達が何故か俺に懐いてきました~』

https://kakuyomu.jp/works/16816452218452299928



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